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「だったら何で付き合いたいって言わなかったんだよ」
「私が好きって言っても全然関心なさそうだったし、圭ちゃんは学年でもトップに入るような優等生だし、カッコいいし、運動神経抜群だし――そんな人が学年で最下位の落ちこぼれの問題児の私とじゃ不釣り合いだし、私なんかが付き合えるような立場じゃなかったんだよ」
「関心がないも何も、冗談で言ってると思ってたし、マナの方こそ俺に関心などないと思ってた。それに、俺がどんなに優等生だろうが不釣り合いとか、そんなのねえだろ! もしマナが真剣に告白してくれたら俺はきっと、全てを受け止めてたと思うぞ」
「言えばよかったなぁ。そうすれば飯塚先輩や山崎先生のような人たちと問題を起こさずに済んだかもしれない。穢れてしまった私じゃなくて、純粋な私を圭ちゃんに捧げられたのに――」
「マナ――お前は穢れてなんかいない。俺にとってマナは、穢れを知らない純粋な女性だよ。だから、どんなことをしてでも守ってあげたいと思える。一生守っていけるなら傍で守ってあげたい」
「わかった、仕方ないなぁ。それじゃあ結婚してあげる」
「結婚? 結婚て何のことだよ?」
「今のってプロポーズでしょ?」
「――――」
そんなつもりなどなかったけど、俺にもしマナを幸せにしてあげられる資格と覚悟があるならもちろんしたかった。
「プロポーズでいいんでしょ?」
「――――」
「ねぇ! プロポーズって言ってよ」
「あぁ――そうだよ。プロポーズだ」
「うん」
マナは頷き、俺に抱きついてきた。そして俺を見つめると静かに目を閉じた。俺はマナの唇にキスをした。マナの唇は柔らかくとても温かく初恋の味がした。俺にとっては本当に初恋の相手だったわけだが――。
結婚の約束をした俺とマナは、次の日もまた次の日もまたまた次の日も一緒に朝を迎え、一緒に朝食を食べて、仕事から帰って来たら一緒に夕食を食べて、風呂に入って、一緒にテレビを観て、一緒に寝た。これって結婚の約束をする前と何も変わってないと思われるかもしれないけど、前とは全然違う。俺はマナが好きで、マナは俺を好きでいてくれている。このことに俺らは長い年月をかけながら、果てしなく続く回り道をして気付かされた。