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スペース
182
箱根
其の時、絶望的な沈黙を切り裂いたのは、荒々しい横浜の笑い声だった。「ハッ……『過去の重み』だと? 吐かすじゃねぇか」
横浜が、赤黒く光る影の檻を素手で掴み、力任せに引き剥がそうと力を込める。掌から火花が散り、肉が焦げる臭いが立ち込めても、その眼光は一切揺らぐことは無い。
「オイ、風船野郎。……お前は『横浜』を、ただの埋立地だと思ってんのか? 俺たちはな、泥水を啜り、震災も空襲も、全部ブチ壊して『今』を造り上げてきたんだよ!」
その咆哮に呼応するように、名古屋が黒鉄の双剣を交差させ力強く吼える。
「 俺たちゃそんな柔な生き方はしてねぇ!! 過去があるから今は輝くもんだ!!!」
二人の「武」が、矜持を燃料に牙を剥く。
「重力操作・紅炎流星!!!」
「炎雷斬り!!!」
物理法則を無視した純粋な「異能」の塊が、金剛石をも凌ぐの陰の杭を粉砕する。凄まじい衝撃波が結界内に吹き荒れ、粉砕された陰の破片が二人の上に黒い雨となって降り注いだ。
そして、その斬撃を遠くから見つめる構造色の瞳。
『……今だ!回路を繋ぎ変えろ!』
浜松が叫ぶ。浜松は横浜と名古屋が杭を壊した瞬間に放たれた「膨大な力」の行き先を読み解いていた。
『OK! ……この杭の配置、逆転させればそのまま「超高速通信網」として使える!』
さいたまが、壊れた杭の残穢に自分の呪力を最大限流し込む。本来、都市を縛るはずだった「過去の執着」という重い呪力が、さいたまの制御によって「現代の超高速情報量」へと書き換えられていく。
「名古屋さんと横浜さんが壊した杭の隙間から、僕の異能を流し込む……! これで影の硬度をゼロにするよ!」
浜松が指を振ると、街中に不可視の音波が駆け巡ります。先ほどまで鋼鉄のようだった影たちが、一瞬にして形を保てなくなり、水のように崩れ落ちました。
『!?……術式をその場で書き換えたのですね……』
初めて、赤い風船の声に動揺の色が見えた。
「当たり前だろ!俺たちは止まってねェんだよ!!」
横浜が鎖鎌を頭上で旋回させます。
「さいたまが道を作り浜松がバリアを引き剥がした。……大阪、行けるだろ!!」
『……待たせすぎや、アホタレ共ォ!!!』
渋谷の地下、陰の泥に埋もれていた大阪が、黄金の虎を纏って飛び出す。
「地下の迷宮はもう俺の庭や!陰の回路は丸ごといただくで!!異能力・天下山君!!!」
大阪の放った異能が、さいたまと浜松が構築した「新回路」を通り、都心三区を繋ぐ巨大な橋となって架かる。
その先にあるのは——影の鎖に縛られた「東京」が眠る、皇居の上空。
「静岡、名古屋! 俺の背中に乗れ! 全員で一気に本丸叩くぞ!!」
コメント
1件
Volvoxさん、第5話「終止符」読み終えました! 横浜と名古屋の「過去」を否定しない叫び、めちゃくちゃ熱かったです。「過去があるから今は輝く」――このセリフ、胸に刺さりました。そしてさいたまと浜松が術式を逆手に取って回路を書き換える連携プレー、大阪の「待たせすぎや!」からのド派手な参戦。チーム全体が一瞬で動く流れが気持ち良くて、ページを捲る手が止まらなかったです。本丸目前のところで終わったので、次が待ち遠しい…!