テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「佐伯さん、どうかした?」
「なんでもございません………」
いつもの屋上、私、このみちゃん、ミキちゃんの三人でお昼ご飯。
私は今、マヤちゃんの件で頭を抱えている。
だから、なんでもない訳が無く、めちゃくちゃありますという気持ちを押し隠しながらも、なんでもないと答えた。
マヤちゃんが、攻略対象から外れちゃったそもそもの原因は、後藤ケンジロウとのバトルイベントに、さやかちゃんを介入させた、私のせいだ。
そのイベントで、凶悪なヤンキーを格好良く成敗したさやかちゃんの姿に、マヤちゃんは惚れちゃったんだから。
それが無ければ、百合デートイベントは起こらなかったし、ロリィタショップに入る事は無く、指輪を贈られる事も無かった。
幸い、さやかちゃんの好感度数値は消えず、相変わらずの100%だけども、マヤちゃんと完全にくっつく事になったら、さやかちゃんの好感度表示も消えちゃうかもしれない。
さくハイはハーレム物じゃないにせよ、選択肢が減るのは良くない。
まだ朝倉くんと出会ってないヒロインはたくさん居るけど、2年生の9月から攻略を始めるのは、結構しんどい。というか、しんどかった、少なくとも、私がプレイした、さくハイガールズサイドでは。
そういう状況だから、私もヒロインと仲良くしていいのか、いや、多分交流しないほうが良い気がしてくる。
特にミキちゃん。私の事を尊敬するあまり、朝倉くんへの好感度が上がりにくいというのは、さやかちゃんが好きすぎて、攻略対象から外れちゃったマヤちゃんと似てる。
そんなミキちゃんと仲良くして、攻略対象から外れた日には、私はもうどんな顔をしたらいいのか、分かったもんじゃない。
「佐伯先輩、大丈夫ですか? もしかして、具合悪いんですか?」
ミキちゃんが、こっちに身を乗り出して心配そうな目を向けている。
「いえ、なんともございません。少々思案せねばならない事が詰まってはおりますが、こちらの事でございますから、どうぞご心配なさらず」
でも、こんなに慕ってくれる後輩を、これからは邪険に扱うのは、ミキちゃんが可哀想だし、私もつらい。
だからと言って、攻略対象を減らして良いのかと言われると、それは絶対ダメ。ギャルゲー世界でやっていいことではない。
結局私は、どうしようもないジレンマの中で、悶々とする事しかできない。
********
「ね、小鳥遊さん」
「橘さん? どうしたの」
部活を終わらせて、部室から出ようとしたら、橘さんがやってきた。
橘さんが、文芸部の部室に来るなんて、これが初めてだよね? なにか、悪い事が起こったとか、無いよね?
「最近さ、佐伯さんの様子、変だと思わない?」
橘さんも気づいてたんだ。
確かに、佐伯さんは最近ちょっと変。なんか、避けられてる感じがするし、ミキちゃんが遊びに誘っても、乗り気じゃない態度を取られるって言ってた。「どうしよう……、もしかして、私たち、佐伯さんに迷惑かけてたのかな」
「いや、そんな事はないと思うよ。だって、あの佐伯さんだよ? 迷惑なら迷惑ってハッキリ言うよ」
「いいえ! 佐伯先輩は、あの兄を改心させた御方です! バランス感覚は人一倍、きっと、何かを隠しているんです!」
わたし達が話していると、文芸部の後輩で、佐伯さんとも仲が良いミキちゃんも話に入ってきた。
先輩を尊敬するのは良い事だけど、最近ちょっと行き過ぎてる気がする。でも、佐伯さんは喜んでるみたいだったし、それが原因じゃなさそうだよね。
「確かに、それもそうだね。佐伯さんが隠してる事……か………」
橘さんが、急に暗い顔をし始めた。
橘さんが思い当たった事、もしかしたら、わたしと同じ事かも。
佐伯さんは、わたし達の事は応援してくれるけど、自分の事は後回し。自分は幸せにならなくていいとか、そこまで思ってそうな振る舞いまでする。
そんな佐伯さんが、わたし達を避ける理由ってなんだろう。
もう、自分の助けは必要無いから、一緒に居る必要は無いって思ってる?
そういえば、わたし、佐伯さんの事何も知らない。好き嫌いも、佐伯さんの事は、人の恋愛を手助けするのが好きって事以外、何も知らない。
唯一知ってるそんな趣味も、本当の話なのかも知らない。
みんな、同じ考えに行き着いたみたいで、部室の中の空気が重くなる。
佐伯さんの隠し事。情報屋としての秘密じゃない、佐伯さんの個人的な秘密。
その秘密を、無闇に聞いたり、勝手に踏み込んだりしたら、ますます避けられそう。
なら、どうしたらいいんだろう。せっかく出来た友達を、失いたくないのに。
嫌な沈黙の中、二人と目があった。
佐伯さんを元気付けるための方法、みんな同じことを考えたみたいで、無言で頷きあった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#雑談!
ゲスト
455
63
#独り言
QuartoMew
1,311