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彩っさん
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「俺と、付き合ってるフリしてくんない?」
あの時のリョウガの顔、ちょっと固まってた。
そりゃそうだよな、って思う。
でも——
(リョウガじゃないとダメだったんだよ)
他の誰でもよかったわけじゃない。
むしろ、他じゃ無理だった。
きっかけは、確かに嘘。
面倒なやつを避けるための、ただの口実。
……のはずだった。
「ありがと、リョウガ」
そう言ったとき、少しだけ安心した自分がいた。
“これで一緒にいられる理由ができた”って。
最初は、ちゃんと線引きしてた。
触れるのも、距離も、全部“演技”。
でも——
「リョウガ、もうちょっと寄って」
腕を絡めた瞬間。
一瞬だけ、リョウガの体が強張ったのが分かった。
(……あ、意識してる)
そう思ったら、なんか嬉しくて。
わざと距離を詰めた。
最低だと思う。
嘘を理由にして、相手の反応を楽しんでるんだから。
でもやめられなかった。
リョウガに距離が近すぎと言われても、
「恋人なんだから当たり前だろ」
そう言いながら。
本当は“当たり前にしたかった”。
あの日。
「リョウガ、好き」
あれは——
半分、演技。
半分、本音。
(ほとんど本音だった)
リョウガが「俺も」って返してくれた時、
一瞬だけ、時間が止まった気がした。
(……今の、どっち?)
演技?
それとも——
怖くて、それ以上考えるのやめた。
終わらせるしかなかった。
「もう大丈夫そう。ありがとね、リョウガ」
あのまま続けたら、絶対どっかで壊れる。
嘘って分かってる関係のまま、
本気になってるの、自分だけだったら——
耐えられる自信がなかった。
「じゃあ、元に戻るね」
そう言った瞬間、
胸の奥がぎゅっと締まった。
(戻りたくない)
でも、それ言ったら全てが壊れる気がした。
「……あれ、全部演技だった?」
リョウガにそう聞かれて、
一瞬だけ、言葉が出なかった。
本当のことなんて、言えるわけないじゃん。
「当たり前だろ」
反射みたいに出た言葉。
でもそれは——
自分を守るための嘘だった。
リョウガの「あっそ」が、やけに冷たく感じて。
逆に刺さった。
(あぁ、そっちこそ演技だったんだ)
って、思ってしまった。
一人になったあと、
やっと息ができた。
「……バカじゃん」
好きにならなきゃよかった。
最初から嘘なんだから、
ちゃんと最後まで嘘でいればよかったのに。
でも無理だった。
あの距離も、
あの温度も、
全部覚えてる。
(リョウガじゃなきゃ、意味なかったんだよ)
最初からずっと。
「……好きだよ、バカ」
もう届かない場所で、そう呟いた。
𝐹𝑖𝑛.
コメント
1件
あ〜😭泣いちゃいますて〜続きありがとうこざいます〜😭サイコー姉兄貴