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分岐END②「君を捨てる」
あの日から、数日が経った。
俺はずっと考えていた。
翠と、これからどうするべきなのか。
昔みたいに笑い合うことなんて、もうできないかもしれない。
翠の笑顔を見るたびに、何かを隠しているんじゃないかと思ってしまう。
優しくされても、素直に喜べない。
一緒に帰ろうと言われても、断る理由を探してしまう。
――もう、限界だった。
桃「……翠。話がある」
翠「ん? どうしたの、桃ゞ」
いつもの笑顔。
その笑顔を見るだけで、胸が苦しくなった。
桃「俺たち、もう一緒にいないほうがいいと思う」
翠「……え?」
桃「もう、前みたいには戻れないよ」
翠「……なんで?」
桃「俺、ずっと怖かったんだよ」
翠「……」
桃「俺が誰と話すか、どこに行くか。俺の周りにいる人まで、すちが決めようとする」
桃「俺のこと好きなのは分かった。でも、それって俺のためなの?」
翠「……桃ゞ」
桃「俺は、翠のためだけに生きてるわけじゃない」
言い終えた瞬間、翠の表情が消えた。
初めて見る顔だった。
桃「……だから、もう終わりにしよう」
長い沈黙。
やがて翠は、俯いた。
翠「……そっか」
それだけだった。
怒鳴られると思っていた。
引き止められると思っていた。
なのに、翠は何も言わなかった。
翠「……桃ゞが決めたことなら、仕方ないね」
桃「……うん」
翠「俺、桃ゞのこと好きだったよ」
桃「……」
翠「ずっと、ずっと好きだった」
その声があまりにも静かで、俺は何も返せなかった。
翠「……じゃあね、らんらん」
翠は笑った。
いつもと同じ、優しい笑顔だった。
俺はその笑顔を最後に、背を向けた。
桃「……さよなら、すち」
もう、振り返らなかった。
振り返ったら、きっとまた迷ってしまうから。
俺は歩き続けた。
一緒に過ごした日々を、全部忘れることはできない。
それでも。
俺は自分の人生を、自分で選びたかった。
ひとり残された翠は、しばらくその場から動かなかった。
翠「……そっか」
小さく呟く。
翠「らんらんが、俺を捨てたんだ」
寂しそうに笑う。
翠「……俺、ちゃんと待ってたのにな」
誰もいない帰り道。
いつも隣にいた人は、もういない。
翠はゆっくりと顔を上げた。
翠「……でもさ」
その声には、もう悲しさだけではない何かが混じっていた。
翠「俺、まだ桃ゞのこと好きだよ」
小さく息を吐く。
翠「……ずっと好き」
そして、いつものように笑った。
翠「だから――」
翠「俺のこと、忘れないでね」
その言葉は、もうらんには届かない。
それでも翠は、誰もいない道に向かって呟いた。
翠「……またね、桃ゞ」
まるで、明日も会えることが当たり前であるかのように。
まるで、何も終わっていないかのように。
――その日、ふたりの関係は終わった。
少なくとも、桃にとっては。
②END
コメント
1件
うわあ…これ、めちゃくちゃ切なかったです。桃が「もう終わりにしよう」って言う場面、一字一句が重かった。翠の「…そっか」って静かな返しが逆に苦しくて、あのあと一人で「俺、ちゃんと待ってたのにな」って呟くところでぐっときました。最後の「またね」も、まるでまだ終わってないみたいな言い方で…ふたりの温度差がはっきり出た別れ話、すごく心に残りました。