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それから勇人は無遠慮に上のパジャマも脱がせ、おでこ、頬、あご、首筋、肩、目に付く箇所全てにキスを降らせた。
まるで優しく慈しむようなその触れ方に、仁人は今しかないと言葉を紡ぐ。
「はやとっ…ねえ、まって、話そう、理由があんだろ…?」
胸元まで来たところで勇人は仁人を見やった。
その表情は読めず、怒ってなく冗談だということもなく。
どこか皮肉な顔に嫌な予感がした。
「話す?何を?」
「だから、こうなってる理由だよ!…心当たり無くて申し訳ないけど、怒らせたとか傷つけたとかだったら教えてほしい」
はっ、と勇人は馬鹿にしたような乾いた笑いをこぼした。
心当たりなんてないだろうね。
メンバーとしてしか意識してなくって、仲間としか接してないんだから。
ただ俺がその一線を越えただけ。
だからバランスがおかしくなっただけ。
「仁人のせいじゃねーよ。何も考えないで。ただ身を任せてくれたらいいから」
両足の間に自分の体をぐっと押し当て、男の彼からすると屈辱とも言える体勢をとらせると、そのまま今まで触れてなかった部分に触れる。
きっと同性から触られるなんて初めてだろう。
じゃあ、女性は…?
今まで何人と付き合った?
何人抱いた?この身体で。
この心を誰に許した?
「っぁ、まっ、まって、…っ!」
ダイレクトに響く快感に抗うように息を詰めるのが分かる。
片腕はまだ拘束され、かろうじて動くのは両足ぐらいだか、自分の身体が挟まっているためそれすらも叶わない。
一方的に与えられる刺激に仁人のものも徐々に反応を示す。
「っぅあ…、ぁ、」
拘束されてない方の腕で口元を覆う。
きっと声が漏れるのは恥ずかしいのだろう。
全てを聞きたい勇人は拘束している腕を解いて、その手で尻尾の付け根をぐりぐりと刺激した。
途端に足に力が入り、腰が左右からぐっと押される形となった。
「あ、いや、やだって!それっ…!」
カタカタと小さく震える身体に、腰が少し浮いてくる。
それすらも愛おしく、もっと暴いてやりたくなる。
尻尾の付け根から前へ滑らせ、先走りで湿っている後孔へ指を進めた。
その瞬間、ぐっと緊張感が高まったのを感じた。
仁人と目線が絡む。
それ以上進むと戻れない。
今までと同じでいられない。だからお願い。
そんな哀願が伝わってきた。
分かってるよ。
安心させるように笑ってみせてから指を奥に入れた。
「っ!!はやと、…ぅ…」
その涙はなに?
痛みか、悲しみか。
仕方ねーじゃん。こうでもしなきゃ分かんないだろ。
お前に薬を盛った時点で狂ってる。
いや、自分の気持に気づいた時点でやっぱりおかしくなってたんだ。
優しく中をほぐすように動かす。
少しずつ広げながら。
「痛くない?」
その言葉に返事はなかった。両腕で顔を隠し、顔も見れない。
ごめんな、と心の中で謝りながらもう一本入れる。
「いっ…ぃた、」
流石にまだまだ固いそこに安堵しつつ、気をそらすために改めて前へも刺激を加える。
少し反応してきたのを確認してから、できるだけゆっくり動かして良い処を探した。
「…すぐに良くしてやるから」
前側を執拗に擦り続けていると、苦痛に喘いでいた仁人の声が変わるのを感じた。
「っぁ、…は、ぁっ!」
腰が揺れる。
痛みから逃れるためではなく、感じたことのない刺激から逃れるように。
そして腕で塞いでいた口からは止めどなく色声が漏れる。
仁人は苦しくなり声が漏れることを気にせず勇人の腕をつかむが、どちらの愛撫も苦しいほどに続けられた。
入っている指の本数が増えたことも気にならない程に。
強すぎる快楽に、大きな瞳からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
「も、やだ…」
勇人は動きを止めて仁人の顔を覗き込み、流れ落ちる涙を口に含んだ。
仁人はようやく止んだ愛撫に安心し一気に身体が弛緩するのを感じる。
しか、紡がれた勇人の言葉に血の気が引いた。
「…そろそろ、入れるぞ」
その言葉に反応した仁人が体を上へ引こうとするが、無慈悲にも自分の方へ戻し、すでに固くなった自身を当てがった。
入れる前、勇人は仁人を見た。
「はやと…もう、戻れなくなる…ダメだろ、」
最後のチャンスと思い必死に訴えたつもりだったが、仁人にとってその言葉は諸刃の剣だった。
「戻りたいのか?…俺は戻る気なんかねーよ」
もう何を言っても意味がないと、ここにきてようやく悟った。
本当に最後まで突き通す気だ。
自分がどれだけ嫌がっても。
こんな形で、こんな冷たい空気の中で、望んでいた結末を迎えるなんて。
仁人はやるせなさの中、これまで抱えてきた想いを葬ってしまいたくなった。
長年一緒に戦ってきた戦友。グループをけん引してくれた年長者。
何かあれば相談し、少なくとも一番自分の事を理解してくれていると思っていた。
そして、一番混乱している時に、一番傍にいてほしかった相手。
「…ぅ…ふ…」
ぐす、と情けなくも勢いよく出てくる涙を抑えられなかった。
勇人は目の前で泣きじゃくる仁人を前に、先へ進みたい衝動がみるみる萎んでいくのを感じていた。
愛しい人が、自分のせいで泣いている。
当てがった瞬間目が合った時、相手の表情は痛みでも恐怖でもなかった。
“絶望感”のような、どうしようもない気持ちがにじみ出ていた。
そんなに嫌か。
俺に触れられるのが。いつもの冷たさは、本気だったのか。
もう戻れないことは分かっている。
仁人は最後の一歩を進まなければ何とかなると思っているかもしれないが、すでに引き返せない所まで来てしまっているのは間違いない。
もうだめか。
勇人は再度泣きじゃくる仁人を見て、ぺたんと伏せられた耳を見た。
ただただ悲しいと訴えるような元気のない耳。
ごめんね。
俺のせいで。
全部壊しちゃって。
こんなに好きなんだけど。
ずっと見てたんだけど。
混乱に乗じて既成事実をつくったら…なんて、そんなうまく行くわけねーよな。
勇人は隅に追いやられたシーツを乱暴につかみ、仁人の身体を覆うようにばさりと被せた。
「…仁人、ごめん」
弱々しくなった泣き声の中にぽつりと落とされた言葉は、二人の空間に静かに波紋を広げた。
memi(めみ)
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コメント
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うわあ…第6話、読み終わりました。タイトル通り、涙が止まらなかったです。 勇人の「戻る気なんかねーよ」の覚悟と、仁人の「ダメだろ」の必死の抵抗。その間で揺れ動く二人の心情が切なくて。特に最後の「ごめん」に込められた勇人の後悔と愛しさが刺さりました。身体的接触の描写が生々しいのに、感情の機微が丁寧で、単なる行為描写に終わらせない筆力に引き込まれました。伏線の回収がどうなるのか、続きが気になります…!