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「ただいま…」


「あーおかえりー」


鏡の前で化粧中の母親。生返事をしながら真っ赤に唇を染める姿に俺は少し苛立ちを覚える


「…母さんさ、いつまでそうやって遊んでんの?」


「はぁ…?遊びじゃないわよ!私は金を稼ぐために働いてんのよ?!」

「あんたこそいつまで遊んでんのよ!!」

「あんたには分かんないでしょうけど仕事って大変で_」


「母さん、俺のこと何も見てないよね」

「俺のこと何も…知らないよね」


「は?何急に。自分の子供の事ぐらい分かってるわよ。」


嘘つき。本当は何にも知らないくせに。勝手に分かった気になってるだけだろ?


俺が働いてることも、学校でのことも、俺が母さんに対して思ってる事も。

何も、何にも知らないくせに。


俺の何を知ってるっていうんだ。

ドロドロした感情が心の中で渦巻いていく


「…出掛けてくる。」


「まーた遊び?危ない事してんじゃないでしょうね?」


…バイトだっつーの。遊び遊びって…お前と違ってれっきとした仕事だし

俺は呆れたような顔をする母を無視して家を出た。




「先輩、お疲れ様です」


「おーお疲れー笑」

「いつもに増して顔死んでんなー」


「すみません…」


「あーごめんごめん。そういう事じゃ無くて」

「ちゃんと休んでるか?お前学生なんだから」

「友達と遊ぶとかしてもいいんだぞ〜?」

「ずっとシフト入ってるしさ〜」


「俺なんかと遊んでくれる人居ないんで(笑)」

少し、自嘲気味に笑ってみせる。


「そんなこたぁないだろ!w」

「ま、休みたかったらいつでも休んでいいからな!」


「…ありがとうございます」

俺はこれから先も休む事なんてないだろう。

なんせすることが無いのだから。

それに…家に居る方が地獄だ。

ここはいつしか俺の逃げ場になっていた_




夜遅く、仕事を終わらせて帰路につく。

家に近づくにつれ、段々と足取りが重くなる。

いつになったら、俺はこの重荷から解放されるのだろうか。

頭の中でぼんやり考える。

重たい足を引きずっているといつの間にか、家に着いてしまっていた。


ガチャ…(家のドアを開ける)


「あら〜!おかえり〜!♪」


帰宅早々、地獄絵図が待っていた。


酒に酔った母親、

テーブルには何缶もの酒があった。

どれも度数が高いもので、匂いだけでもキツイ。


「ど〜こ行ってたのよ〜!!」

「あのね〜あんたにいいお知らせがあるの〜!」

「私ね〜再婚するかもしれない!!」


「は…?」


「こんど〜家に連れてきてあげるわ!♪」

「と〜ってもいい人なのよ〜♪」


「あのな、母さん。俺は…俺は……ッ」

…母さん1人だけでも、もう手一杯なんだよ。


そう言いたかった。言葉に出なかった。

何回目だよ。それ。

どうせ仕事先で出会ったおっさんなんだろ?

どうせ酒が入ると性格が変わるんだろ?

俺のこと、どうせ見てくれないんだろ?

どうせまた騙されてるだけだろ?

どうせまたお金だけ取られて終わるんじゃん。

どうせ泣いて終わるんだよ。

どうせ、どうせ、どうせ、どうせ…

「なんでだよ……」


俺は母さんの方を見る。

自分の話したいことを話して満足したのか

母は寝てしまっていた。


「俺は、普通に…」


絞り出した言葉は母に届くことはない。

俺は、普通に高校に通って

友達を作って

放課後はバイトなんかじゃなくて遊んで

部活にも入って…

…そんな生活をしてみたかった。


俺は、脳内に渦巻く理想を振り払って酒の空き缶を片付けていく。

酒くさい部屋に、香水くさい母親。

こんな家、早く出て行ってやりたい。


そんな事を考えながらも片付けを済ませ、風呂に入り、俺は眠りについた

拝啓、世界で1番大切な君へ

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