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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第19話 〚揺れる役割〛(りあ視点)
最初は、
ただの“チャンス”だと思ってた。
◇
放課後。
鏡の前で、りあは前髪を整える。
(うん、今日も可愛い)
それだけで、
少し気分が良くなる。
◇
恒一と話した、あの日。
「協力しない?」
そう言われたとき、
胸が高鳴った。
(だって)
◇
橘海翔。
優等生で、人気者で、
しかもイケメン。
あの人と付き合えたら。
(絶対、一軍じゃん)
◇
澪?
正直、
最初から好きじゃなかった。
静かで。
目立たないくせに。
なのに、なぜか守られてる。
(ずるい)
◇
だから。
「いいよ」
そう答えたとき、
迷いはなかった。
◇
でも――。
◇
最近、
空気が違う。
澪の周りに、
見えない壁ができてる。
先生。
友達。
橘海翔。
(……守りすぎじゃない?)
◇
りあは、教室の端から澪を見る。
澪は、
いつもより静か。
でも、
前よりも強い。
(……なんなの、それ)
◇
恒一の言葉が、ふと蘇る。
「君なら、自然に近づける」
「君が動けば、流れは変わる」
◇
(私、動かされてない?)
一瞬、
そんな考えがよぎる。
◇
でも、すぐに打ち消す。
(違う違う)
◇
私は、
“選ぶ側”。
利用されるんじゃなくて、
利用する側。
◇
恒一は、
賢い。
無口で、
目立たなくて。
でも――
どこか、冷たい。
(……ま、いっか)
◇
だって、
最終的に得するのは私。
海翔と付き合って。
注目されて。
可愛いって言われて。
(人生、勝ち組)
◇
なのに。
◇
澪を見ると、
胸の奥が、少しざわつく。
(なんで、あんな顔してるの)
◇
倒れたって聞いたとき。
「大丈夫?」
って聞かれたとき。
澪の目は、
怯えてた。
(……弱いじゃん)
◇
なのに。
あの目は、
私を見てなかった。
(無視されたみたい)
◇
りあは、唇を噛む。
(……ムカつく)
◇
「私が、主役なんだから」
小さく、そう呟く。
◇
でも。
心のどこかで、
分かっていた。
◇
この“協力”は、
対等じゃない。
◇
恒一は、
自分より先を見ている。
そして――
自分が思っているより、
ずっと深いところに、
踏み込もうとしている。
◇
(……でも、今さら引けない)
◇
りあは、笑顔を作る。
可愛い笑顔。
一軍の笑顔。
◇
揺れていることを、
誰にも気づかせないまま。
歯車の一部として、
今日も動き続ける。