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誰も知らない、高嶺の花の裏側2

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誰も知らない、高嶺の花の裏側2

20 - 第20話 〚計算外の感情〛(恒一)

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2026年02月10日

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誰も知らない、高嶺の花の裏側2


第20話 〚計算外の感情〛(恒一)


うまくいくはずだった。



姫野りあは、

思った通りに動いている。


軽くて。

分かりやすくて。

欲に正直。


(扱いやすい)



橘海翔を奪おうとする動機も、

澪を嫌う理由も、

全部、計算通り。



なのに。



教室の端で、

恒一は澪を見る。


澪は、

誰とも話していない。


それなのに、

一人じゃない。


(……囲われている)



友達。

橘海翔。

担任。


見えない線が、

澪の周囲に張られている。



(おかしい)



澪は、

守られるタイプじゃない。


静かで。

控えめで。

流されやすい。


――そう、思っていた。



でも。



倒れた日のことが、

頭から離れない。


心臓を押さえて、

苦しそうに崩れ落ちた姿。



あれは、

演技じゃない。


(……知っていた?)



恒一の視線が、

一瞬、鋭くなる。


(どこまで)



りあとのカフェ。


「協力しよう」


そう言った時の、

自分の声。


冷静で、

完璧だったはず。



なのに。



澪が、

自分を見なかった。


あの瞬間。



胸の奥に、

小さなノイズが走った。


(無視された)



それは、

想定外だった。



「俺のものになる存在」


そう定義していたはずの相手に、

意識を向けられなかった。



(……違う)



澪は、

逃げている。


守られているから、

強く見えるだけだ。



そう、

理屈では分かっている。



なのに。



澪の周りに立つ人間たちを見ると、

胸がざわつく。


(奪われる?)



その考えに、

恒一は眉をひそめた。


(馬鹿げてる)



奪う側なのは、

自分だ。



感情は、

不要。


計画に、

感情はいらない。



それなのに。



橘海翔が、

澪のそばにいるのを見ると。



胸の奥が、

不快に軋む。


(……邪魔だ)



ただの障害物。


そう、

処理すればいい。



なのに。



視線が、

自然と海翔に向く。


拳を、

無意識に握っている自分に気づく。



(これは)



恒一は、

ゆっくりと息を吐いた。



「……計算外だな」



感情は、

制御できる。


今までも、

そうしてきた。



でも。



この“ざわめき”は、

初めてだ。



澪を手に入れたい。


それだけのはずが。



奪われたくない、

という感情が、

混ざり始めている。



(……まだだ)



恒一は、

再び無表情に戻る。



りあは、駒。

海翔は、障害。

澪は、目的。



整理すれば、

問題ない。



――はずだった。



教室の窓に映る自分の目が、

いつもより、

暗く見えたことに。



恒一は、

まだ気づかないふりをした。


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