誰の耳にも聞こえず、誰の目にも見えない、たった一人の宣言だった。
別に格好をつけた訳ではない。最後の瞬間まで人類と運命を共にするという、不動明王の意思表明だった。
「さあ、やるぞ」自分自身にそう呼び掛けると、不動明王は街の上空を飛び去った。
不夜城の雑踏の中。人間たちに紛れ込み、二柱の魔神が天を見上げ不動明王の宣言を聞いていたことを彼は知らない。
「なかなか言ってくれるじゃない、彼。一体どこまで頑張れるのか楽しみだわ」
艶っぽい妙齢の女性の声に、少年以上・青年未満の男性の声が応じる。
「ま~た、ろくでもないこと考えてるんでしょ、伯母様? 止めて下さいよね、俺の仕事を増やすの」
「ろくでもないか、どうかは、そのうち判るわ。黙って見てなさいなフフフ」
地獄の七大魔王(サタン)の一角である伯母がこういう笑い方をする時は、必ず「ろくでもないこと」が起きることを甥は知っていた。その尻拭いを自分がしなければならないことも……
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