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「ありがとうございます。まさかこんなに早く来るなんて思いませんでした……」
ルミナさんに刺客が来たことを知らせると彼女は深くお辞儀をしてお礼を言ってくる。彼女達の寝泊まりする家は空き家になっていた家。うちと同じくらいの家だからそんなに狭くはないな。
彼女は前日の訓練で筋肉痛に苦しんでいる様子、シディーさんの光魔法でマッサージをしてもらってる。妖精によるマッサージ、異世界ならではだね。
「そろそろ命を狙われる理由を聞いてもいいかしら?」
オリビアの問いかけにルミナさんはカデナさんへと視線を移す。
「私がご説明します。クレイトン家当主、オベリスク様は今。病床に伏しています。今にも命を落としかねない病気によって」
重苦しく話すカデナさん。それを聞いてシディーさんは首を傾げる。
「病気なら治せばいいじゃない? 貴族ならお抱えの光魔法使いがいるでしょ? 回復魔法で治せるはずよ」
「確かに治せるはずなのですが……。教会から送られてきた光魔法の使い手は『治せない』と言ってきたのです」
シディーさんの疑問にカデナさんは握りこぶしを握ってこたえる。悔しそうな彼女を見て、ルミナさんも俯く。
「なるほど、【ユミナス教会】ね。納得だわ」
「はは、変わらねえな。ユミナス教会も」
シディーさんとルードが笑いながら声を上げる。そんなに悪名高いのか。
「ってことはそのオベリスクってやつを操ろうとしてるんじゃないか?」
「ユミナスならやりかねないわね」
ルードの推測にオリビアが頷いて答える。操るって、そんなこともできちゃうのか。
「そんな!? まさか。【隷属の首輪】?」
「そうそう、犯罪奴隷につけるやつだよ。言うことを聞かせるためのもの。指示に全力で従うようになるんだよな」
ルミナさんが驚いて聞いてくる。ルードが頷いて答えると、彼女は涙をこぼす。
「お父様はそれを知っていて私をここに……」
泣き出す彼女を前に僕らも悲しくなってくる。どうにかして助けることはできないのかな?
「バブ!」
「あら、奇遇ね。私も助けようと思ったの。久しぶりに汚職貴族をぶちのめしましょうかね」
僕が声を上げるとシディーさんも賛同して声を上げてくれる。
「お~、街なんて久しぶりだな~」
「何言ってるの。オリビアとルードはお留守番よ。ここは私とアルスの師弟コンビで行くわ。あなたはルミナとカデナを育ててなさい」
「えぇ!? アルスも連れていくのかよ。危なくないか?」
「何言ってるの。彼はもう一流の魔法使いよ。既にオリビアよりも強いわ」
ルードが楽しそうに話すとシディーさんが彼の額を叩いて𠮟りつける。
僕の頭に乗って説明するとオリビアとルードが嬉しそうに僕を抱きしめてくる。
「流石は俺とオリビアの子だ」
「もう超えられちゃったなんて少し悔しいけど、アルスは凄いわ。天才」
二人はとびきりの笑顔で褒めてくれる。微塵も悔しそうじゃないオリビア。ホントに僕を愛してくれてるんだな。
「フリルもお留守番よ。自分の身を守れるようにならないと町は危ないからね」
「クウ~ン」
「ダ~メ。町は危険なんだから」
お留守番と言われると悲しい声を上げるフリル。
フェンリルだから町に行けないのかな? 狙われるんだろうな~。
「フェンリルの子供なんて高値になるだろうからな。冒険者の一部や奴隷商なんかに狙われたら高ランクの刺客がやってくるだろう。そうなると色々面倒だしな」
思っていた通りのことをルードが教えてくれる。自分の身を守れる強さを持つまでは町は禁止ってわけだ。仕方ないね。
「ま、また走るんですか?」
「そうですよお嬢様。どんな戦いも体力がないとダメですからね。走って走って走り倒して食べて休息。それでやっと体が出来てくる。カデナは基礎訓練はできているから俺と手合わせをしていく」
クレイトンの町へと向かおうと準備をしていると外からそんな声が聞こえてくる。
ルミナさんは基礎ができていないから村の周りを走りまくるみたい。オリビアにマッサージをしてもらうんだろうな。強くなるのは大変だ。
僕は赤ん坊だから簡単に上がっているけどね。
「準備完了っと。じゃあ行くわよアルス」
「アイ!」
旅の準備を終えて声を上げるシディーさん。僕も元気よく答えると彼女と一緒に外へと出る。
「アルスがやってみる?」
「バブ!」
シディーさんの声に答えて魔法球を作り出す。
僕らを包むほどの大きさの球。結構簡単に作れる。まあ、この三倍以上の雷の球も作ったことあるしね。
「じゃあ行ってくるわよ。刺客が来ると思うから気を付けてね」
「おう、任せとけ。ルサンダさんにも言ってあるから大丈夫だ」
宙に浮き始めるとルードに声をかけて飛び立つ。
「お、お父様をお願いします!」
「行ってらっしゃ~い」
ルミナさんとオリビアが手を振って見送ってくれる。ルミナさんはすでにヘロヘロだな。すぐにマッサージで回復させられるんだろうな。大変だな~。