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三人は奥の院のお堂の中を掃除した。山富士門跡が慣れない経を詠み、一服したところで下山の支度をした。
「誰が来たのかしら…金隠氏かもねえ。」「特に何も無いけど、静かだし、瞑想には良いかもね。」
またとりとめの無い会話をし、幻覚寺が見えてきた。間も無く下り坂も終わる。この坂道は始めは階段状になっているので、帰りは気をつけないと転がってしまう。亜漕はここで焦って足を踏み外したのだ。
寺に戻ったのは夕方だった。「別に何も起こら無かったし、事故だったのよ。」と黒木夫人は言った。
「そうだ、あたし達もお堂は掃除したけど、御供物を忘れたわ!」山富士が言った。一瞬沈黙が起り、(どうして忘れるんだろう?)と各自が思った。御供物とは、仏像や死者に捧げる乾いた菓子で有る。最中の様であるが、白やピンク、ブルーで皮が薄く着色されている。御賽銭の代わりでも有るので大切な事だった。
お参りに行って賽銭を置かないのは、この寺の未来を暗示して居るようなものだ。「幸運は入りません」と。
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saza
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水羽
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コメント
1件
第66話、読みました。お堂の掃除から日常の会話、そして帰路で御供物を忘れたことに気づく流れ、すごく静かで奥行きのあるエピソードでしたね。「幸運は入りません」という締めの一文、何気ないようでいて、ここまでの佇まいや亜漕の事故の伏線も含めて、とても味わい深かったです。何が起こるわけでもない日常の中に、どこかほころびや不吉な空気が滲む感じが、このお話らしくて惹かれました。次が気になります。