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【短歌】
盛り付けを競う二人の食卓に料理以上の笑顔が並ぶ
【短歌をテーマにした物語】
休日の夕方。
台所に、包丁の音と笑い声が響いていた。
「ねえ、そっちはもうできた?」
「もう少し。そっちは?」
「こっちは完璧」
そう言って、彼は得意そうな顔をした。
「まだ味見してないのに?」
「味は君に任せたから」
「ずるい」
私は笑いながら、鍋の蓋を開けた。
今日は二人で夕飯を作る約束をしていた。
特別な料理を作るわけではない。
冷蔵庫にあった野菜や肉を使って、二人で相談しながら作るだけ。
それでも、一人で作るよりずっと楽しかった。
「よし、あとは盛り付けだね」
料理が完成すると、二人は並んで皿を用意した。
「今日は私のほうが上手に盛るから」
「いや、俺のほうが上手い」
「じゃあ勝負ね」
「望むところ」
なぜか、盛り付けだけは本気の勝負になった。
私は皿の中央に料理を置き、彩りを考えて野菜を添える。
彼は料理を少し高く盛りつけ、空いたところに小さな葉を飾った。
「どう?」
「……意外と上手」
「意外とって何」
「じゃあ、私のは?」
「こっちも……かなりいい」
「なんでちょっと悔しそうなの?」
二人で顔を見合わせて笑う。
やがて、テーブルの上に二つの皿が並んだ。
「じゃあ、判定しよう」
「公平にね」
二人でそれぞれの料理を見比べる。
「うーん……」
「どう?」
「……引き分け」
「えー」
「だって、どっちもおいしそうだから」
「それ、勝負になってないじゃん」
彼が笑う。
私も笑う。
そして二人で箸を取った。
「いただきます」
「いただきます」
一口食べる。
「……おいしい」
「ほんと?」
「うん。かなり」
「よかった」
彼は安心したように笑った。
私はその顔を見て、また嬉しくなる。
料理は、少しだけ味が濃かった。
野菜も切り方が揃っていない。
盛り付けだって、レストランのように綺麗なわけではない。
それでも。
今日の食卓は、今までで一番楽しい気がした。
「また一緒に作ろうよ」
彼が言った。
「次は何作る?」
「何がいい?」
「考えるところから一緒にやろう」
「いいね」
二人で次の料理について話し始める。
まだ何を作るかも決まっていないのに、もう次の休日が楽しみになっていた。
ふと、テーブルを見る。
二つの皿。
二人分の料理。
そして、その向かい側には笑っている彼がいる。
料理の味も、盛り付けも大切だけれど。
今日、一番嬉しかったのは。
こうして君と同じ食卓を囲んで、くだらないことで笑えたことだった。
私は箸を置いて、彼に言う。
「ねえ」
「ん?」
「今日の勝負、やっぱり私の勝ちね」
「え? なんで?」
「だって、私のほうがたくさん笑ったから」
「それなら俺も負けてないよ」
そう言って、彼も笑った。
また二人で笑う。
夕暮れの光が、食卓を柔らかく照らしていた。
盛り付けを競う二人の食卓に。
料理以上の笑顔が、並んでいた。
コメント
1件
このエピソード、本当に優しくて温かい気持ちになりました。短歌と本文の構成も素敵ですし、盛り付け勝負をしながらも最後は「たくさん笑ったほうが勝ち」って、もうその発想が最高ですよね。料理の味や見た目よりも、一緒にいる時間そのものがごちそうなんだなって感じられて、ほっこりしました。水曜さんの描く日常の空気感、とても好きです。
羊と亀のお遊戯会
23
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
10
映え無し

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