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「お前、調子乗ってんなよ」
気づいた時には、囲まれていた。
逃げ場はない。
視界の端で、誰かが笑っている。
「なあ」
一人が近づいてくる。
「グループ入りたいんだろ?」
ニヤニヤとした顔。
「じゃあさ——」
少しだけ間を置いて、
「土下座しろよ」
周囲が一斉に笑った。
スマホを構えるやつもいる。
「動画撮っとくわ」
「あとで回そーぜ」
——最悪だ。
誰も、止めない。
教室の空気は冷えきっていた。
「……やめろよ」
やっと出た声は、小さかった。
「は?」
次の瞬間、胸を突き飛ばされる。
バランスを崩して、床に手をついた。
笑い声が響く。
「マジでダセぇな」
——終わってる。
そう思った、その時だった。
ポケットの中で、スマホに触れる。
指先で、そっと画面をなぞる。
……ちゃんと、残ってる。
でも、まだ言わない。
顔を上げると——
彼女と目が合った。
彼女は、ほんの一瞬だけ小さく頷いた。
「……っ」
心臓が強く鳴る。
「おい、早くしろよ」
また声が飛ぶ。
でも、さっきまでとは少し違った。
(もう、いい)
そう思った瞬間——
彼女が一歩前に出た。
「もう、いいよね」
教室の空気が、変わった。