テラーノベル
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あれは確か、夏、だったような。連続的な雨が降り続いていた、夏。
確信が無いわけじゃない。ただ、あまりにも雨が降り続いていて、あれを夏だと言っていいのか分からないだけだ。
ぼんやりした頭の中で、遠くも近い記憶を思い出す。僕、千尋は草原に寝転がり、頭の後ろで手を組んでいた。隣には、僕の友人であり、親友であり、恋人の流花が幸せそうに寝ている。
可愛らしいその寝顔に、僕は思わず見とれてしまう。
僕たちは旅をしている。どこか、遠い所に行く為の旅。タヒぬ為の旅。旅が始まった日は、そう、夏だ。雨が降り続いていた、夏。確か雨の中君は僕の部屋に いや違う。確かその日、雨はやんでいた。じゃあ、なんで雨が降っていたと…。自分で自分に問う。
そうだ、流花だ。流花が濡れていたんだ。汗をすごくかいて、泥だらけで。下着が見えそうなほどに。
けれどそんなこともお構い無しに、君は僕に言ったんだ。
「昨日人を殺したんだ」
と、一言。僕の手を振り払い、静かに、蚊の鳴くような声で。いや、蚊が息をするように、ひっそりと。
僕は、幼い頃に親に捨てられた。遊園地に行く、と聞かされ車に乗りそのまま児童養護施設の前に。流花は、そんな僕と仲良くしてくれた。友達に、親友に、恋人になってくれた。
そんな流花が人を殺した、なんて。その時はそう思った。驚いたんだ。
「殺したのは、隣の席のあいつ。もうさ、嫌になってさ、肩をバーン、って」
肩を突き放す動きをする。その顔は、少し小悪魔っぽい微笑みを浮かべていて。
「それでさ」
少し躊躇いがちに言った。
「打ちどころ悪くて、タヒんじゃった」
流花は、何も悪くない。だって、本当の悪人なのはあいつだ。流花をいじめた、あいつ。
「もうさ、ここにはいられないと思うから、どっか遠い所でタヒんでくるね」
「じゃあ」
ほぼ無意識に出した声だった。
「それじゃあ、僕も連れてって」
君は驚いた顔をして、すぐに笑って。
「じゃあ、行こっか。千尋」
千尋、初めて呼び捨てで言った。いつもの無邪気な、幼い子供のような笑い方。僕はそんな流花が大好きだ。
そんな流花と旅をしてる。
コメント
1件
すぅ〜…最高だけど…指…大丈夫…?