テラーノベル
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モニターの青白い光が、ふっかの集中しきった横顔を冷たく照らしている。
ふっかは大型モニターを凝視し、複雑な指捌きでコントローラーを操っている。画面の中では激しいバトルが繰り広げられ、キャラクターが放つエフェクトが彼の瞳にチカチカと反射している。
俺はその左後ろでソファに腰掛け、ゲームの音よりも、彼の微かな呼吸音や、集中した時に小さく動く肩に意識を向けていた──少しずつ進む、時計の針をたまに気にしながら。
「っしゃぁ、おらあぁ!」
最後の一撃が決まり、リザルト画面に勝利の文字が躍る。ふっかはコントローラーを胡座の上に置くと、子供のように両手を突き上げてガッツポーズを作った。その背中から溢れる達成感は、見ているこちらまで熱が伝わってきそうな程だ。
「ふっか、そろそろ風呂入ってきなよ?」
敢えて淡々と、日常のトーンで声をかける。
俺の方はもうシャワーを浴び、肌に馴染んだルームウェアを纏って、髪からは微かにふっか愛用のシャンプーの香りが漂っている。就寝までの準備はとっくに万端だった。
「あともう1回やったらね!今日すげー調子いいんだよ。」
彼は振り返りもせず、武器や防具の調整画面を開きながらまた画面にのめり込もうとする。
「でもそれ1回が長いじゃん。日付超えちゃうよ?」
「いいの!」
「、俺が良くないんだって…。」
思わず溜息が漏れた。日付が変われば、コイツの誕生日。
1番に《おめでとう》を言いたいのは勿論だけど、本当は、温まったコイツの体を抱き締めて、熱くなっていく体温を感じながら彼の新しい一年を始めたかった。
俺はソファから腰を上げると、無防備な背後からゆっくりと腕を回した。
「ねぇ、」
低い声を落としながら、覆い被さるように背後から肩を抱き締める。突然の重みに、ふっかの動きがピタリと止まった。
「…『辰哉』、早く入っておいでよ。俺、一緒にまた入ってもいいんだけど?」
耳に触れるか触れないかの距離で、熱を含んだ吐息を耳元へ吹きかける。煽るように囁けば、腕の中の肩がびくっと大きく跳ねた。
モニターの光に照らされていた真っ白な耳が、根元からじわじわと、鮮やかな赤に染まっていく。さっきまで勢いよくボタンを叩いていた指先が、今は所在なげに震えているのが伝わってきた。
「…照っ、一緒は、いい…1人で入るから。」
「そう?残念。」
消え入りそうな掠れた声で、彼は真っ赤になった顔を背けるようにして小さく頷いた。その反応に、俺の理性が限界を迎えそうになるのを必死に堪えながら、俺は幸せな誕生日まであと数十分の時間を噛み締めた。
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