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.:・.。. .。.:・
「それでね!もうすっごく素敵な出会いだったの!」
ジェニは藤子がいたテーブルで、みんなに囲まれて脚を組んで面白おかしく話していた、珍しく注目を浴びてジェニの頬は興奮してピンクに染まっている
あまり親族のいない新郎と新婦は、この結婚式に自分の職場仲間をほとんど招待していたため、神崎広告代理店の面々は、ほぼ全員、この披露宴に出席し、酒も入り、まるで忘年会のノリだ
その後ろを藤子と文也がぴったりと寄り添いながら傍を通って行ったので、ジェニは藤子に微笑んだ、行きのリムジンの中で藤子と真紀には、このとてもラッキーでロマンティックで運命的な出会いを、逐一全部話していた、しかしそれだけでは飽き足らず、とてもではないがジェニは黙っていられなかった
「それで?」
「彼とどうなったの?」
メビウス本社、ソプラノ歌手顔負けの声の、双子の受付嬢達も目をキラキラしてジェニの話の先を促した
双子の受付嬢のこの二人はサクランボやサンダルのごとく、必ずペアで行動する、今回も同じようなドレスを着て同じ髪型をしている
「早くもったいぶらないで教えろよ!」
少し酒癖が悪い三浦も、酔った赤い顔で本人は気にしていないが、大きな声でジェニを催促した
「そう・・・あの時まさに運命の女神が私に微笑んだの・・・」
コホンッと咳をして、ジェニが話し始めた、ジェニは今自分が履いているシルバーのハイヒールをうっとり眺めた、つい先日このシルバーの「MIU MIU」のハイヒールを買いに行った時、難波マルイデパートのエスカレーター前で
偶然出会った投資銀行家の「榊原君」とのロマンティックな出会いを思い出していた・・・
二人の出会いはまるでドラマになるような奇跡の出会いだった、ジェニは真紀の結婚式に履くハイヒールをお気に入りのブランド店「MIU MIU」で見つけた
一目惚れしたそのヒールをカードで購入して、箱に入れてもらい、大きなショッピングバッグを肩にかけ、下りのエスカレーターに鼻歌を歌いながら乗った
その時、ジェニのスマートフォンが振動した、今携わっているクライアントからの急ぎのメール通知だったために、ジェニはスマホに目を通した
するとエスカレータの降り口に差し掛かっているのも気付かずに、ジェニの靴の爪先がひっかかり、前につんのめってしまったのだ、その際に横切って来た男性にぶつかり、ジェニのバッグとハイヒールの入ったショップバックが宙を舞った
「すっ・・・すいません!」
ジェニはよろめきながら謝り、飛び散ったバッグの中身と、箱から飛び出した買ったばかりの「MIU MIU」のピンヒールをあわてて拾いにしゃがんだ
「よそ見してしまって・・・」
落ちている片方のピンヒールを拾って、目の前に立っている男性をチラリと見た、彼は明るい茶色のプードルのようなフワフワパーマで、優しそうな瞳・・・そして歯並びの良い白い歯を見せて、ジェニにニッコリ笑いかけた
ジェニの頭の中で鐘が鳴った、プードル君はジェニの片方のハイヒールを拾って、ジェニに渡してくれた、彼の笑顔はとても魅力的だった、ジェニはもうよそ見していなかった・・・はにかみながら微笑んでお礼を言った
「あの・・・ありがとう・・・拾ってくれて」
彼が口を開いた
「素敵な靴だね」
彼はしゃがんでジェニと一緒に散らばったショッピングバッグと、箱も拾ってくれた、ジェニは自分が無意識にまつ毛をパチパチしているのに気づいた
なんて紳士なのだろう・・・素敵!それに淡いピンクのビジネスシャツと、クリーム色の高価なシルクのネクタイが、とっても良く似合っている・・・腕時計のタグホイヤーもシルバーでとても素敵だ
すかさずジェニは手もチェックした
―よし、結婚指輪はしていない―
そのスーツの仕立てから彼が身に着けている物は高級品ばかりだとわかった
「その素敵な靴を履いてどこに行くの?」
彼は綿菓子のような笑顔で、ジェニに話しかけてくれた
ペラペラ・・・「し・・・職場の友達の結婚式に履いて行くの、花嫁付添人をするものだから、友達はどんな格好でもいいって言ってくれたんだけど、あんまりカジュアルすぎるのもと思って、こういうのを一足持ってたら結婚式にも合うし―」
「デートにもいいね」
ペラペラしゃべるジェニに素敵な彼がニコニコして言った
「そっ!そんな人がいたらいいんだけど・・・あいにくまだ探している所なの・・・」
ジェニが頬を真っ赤にして、体をクネクネさせた、素敵なフワフワパーマ君がポケットからスマホを出して言った
「そういうことなら僕が立候補してもいいかな?インスタやってる?」
5分後・・・二人はデパートのエスカレーター横の小休止用のソファに座って、お互いのインスタをフォローし合った
彼は「榊原君」と言って、投資系大手銀行の銀行マンだった
彼のインスタは仕事の話や、プライベートなど充実していて、フォロワーも多く、毎日何かしら投稿していた、ジェニも負けじと今日食べたおしゃれなランチなどを投稿すると、必ず彼が一番に「いいね」をしてきた
そして何度かお互いに「いいね」を押し合っていると、彼からDMでデートのお誘いが来た、もっとも最初のデートは実は昨日で、彼の急な仕事が入ってキャンセルになってしまったけど・・・
ジェニは今朝、式場に着くと、花壇のお花と自分の「MIU MIU」のハイヒールが重なる感じで写真を撮り
―今日は特別な日(はぁと)―
とキャプションに一言乗せてインスタにUPした
すかさず彼から「いいね」が来たので、ジェニはフフフフ♪と笑った
次のデートはきっと素敵なものになるに違いない・・・そして披露宴でテーブルの神崎のメンバーに「ジェニの運命の出会いエピソード」を話し終わると、また別のテーブルに移って、この話を最初からしだした
「ねぇ!聞いて!とっても素敵な出会いがあったの!まるでドラマみたいでね―」
.:・.。. .。.:・
コメント
1件
第74話、読み終わりました!ジェニの「運命の出会い」エピソード、すごく可愛くてほっこりしました。特にエスカレーターでの転びそうなシーンから、彼がヒールを拾って渡すまでの流れ——まるでロマンス映画のオープニングみたいで、思わずにやけてしまいました。あと、インスタの「いいね」の応酬からデートに至るスピード感も、リアルな恋愛の始まりって感じで共感しました。真紀の結婚式という場で、ジェニ自身の恋が動き出すのが良い対比ですね。次はちゃんとデートできるといいなあ!