テラーノベル
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第38話
『ロルフ。私は何もできなかったから言えるような立場じゃないけど、任せたよ』
『あぁ、お前なら絶対、できる。だから、自分を信じろ』
『気弱にならないでバトンを繋いでくれ。お前の実力は相当だからな』
『ロルフだけが今の希望の光だ。どうか、娘を、ホルムを助けてくれ』
僕が剣を振るっているとそんな四人の声が聞こえた気がした。
……分かった。頑張るから見ててください。
僕はそう心の中で呟くと、さっきまで鉛のように重かった足取りが軽くなった。
よし、これならいける。
僕は今まで使った事の無いくらいの速さと力で黒龍の首を切り落とした。
硬くて、剣が折れるかと思ったけど、火事場の馬鹿力だっけ? 何とか無理矢理だったけど、きり落とせた。
やっと……勝てた……
首が地面に落ちた黒龍は霧となって消滅し、黒い雲も消えた。
ホルムの空が見えた。見えたのは、朝日の光が見え始めた頃の空。まだ、夜明けというくらいで、星も大きいのなら見える。
青空の中には四人が微笑んでいながら幽霊となって舞っている。皆は透けて、手を振って手を振っていた。
『ありがとう』と僕に向かって四人が同時に言ってどこかへ消えてしまった。
……こっちこそ、ありがとう。きっとまた、会えるよね。
次は、僕が忌み子って事は言わないとね。
僕がこの景色を見て安心して振り向くと「その、あの……貴方は……ありがとうございます」とアニカが頭を下げた。
え? どういう事……
「あ、すみません。名前すら覚えていなくて、名乗れず……」
は? アニカ……え? 何が起こったの……
記憶……今までの全てを……
僕は起き上がってから肩膝をついた。
「え、あ、あの……」
もう何もできないと悟った僕は「……アニカ・フォン・ホルム様。僕は、ロルフと申します。以後お見知りおきを」と硬い声で言った。
「未だに理解が追いついていないのですが……」
「姫様。お会いできて光栄です」
僕は混乱しているアニカを馬の後ろに乗せて城へ向かった。ソフィーも探そうと思ったけど、どこにも姿が見えなかった。
探したい気持ちは山々だけど、目の前にある物を守ってからにしないと……また、同じ事が……
……本当の事は黙っておこう。それがアニカにとって一番いいんだし……
「ロルフさん。姫様って……」
「ホルム王国の唯一の姫。それが貴方です」
「そ、そうなのね……私、いつからあんな感じに……?」
「十五年程前です。大災厄が起こり、このホルムの大地を守ったのが姫様です」
……ごめんなさい。仇も討って、アニカを助ける。それは、一度失敗してしまったから。僕には騎士は向いてなかったみたい。
何かあってからは遅いから……こんな騎士で……
「十五年も……ロルフさんは産まれていなかったはずのに、なぜ私を?」
「勇敢で、芯が太くて、優しい姫様を助けたいと子供ながら思ったのです。さん付けは大丈夫ですよ」
……それは、本当。昔、荷馬車の後ろに乗っているアニカを見て、騎士を目指した。
まぁ、酒と魔法とは無縁の生活を送りたかっただけかもだけど……でも、両親を失ってからその気持ちは一層増した。
「そ、そう……」
こんなに混乱するアニカを見るのは始めてだ。
「詳しくは城に戻ってからにしましょう」
僕がそう言うとアニカは後ろで無言で頷いた。
「くしゅ……すみません」
「いえ、大災厄が起きた日は暖かったので無理はありません」
そう言いながら持っていた毛布をポーチから出してアニカの肩にかけた。
「そうなのですね……」
アニカは俯いてから「大災厄前の事を一つだけ覚えているのです。誰かに『ほら、行こう』と優しく言われたのです。断片的ではありますが……」
そんな事覚えて無くていいんだよ。もっと、王妃様とか、王様とか、沢山いるのに……他に覚えててよ……
僕は感情を押し殺してアニカを傷つけないように、当たらないように、と考えながら「……それが、姫様の生きていた証拠です」と呟いた。
僕は城に戻ると団長に泣かれながら抱きつかれて、他の聖騎士からも褒められた。
ボロボロでごめんなさい。傷は思ったより酷くないし、心配し過ぎ……
でも、嬉しいな……心配してくれて。
「で、こうなったのか?」
「はい」
「すみません。長い事心配をおかけしました」
アニカが隣で頭を深々と下げた。
「姫様。頭を上げてください。記憶が無くなるまでして、ホルムを守ってくれたのですから、誰も文句は言いません」
僕も頷いた。
「姫様は、部屋で休んでください。ロルフは……疲れている所悪いが、少し話がある」
そう言って団長は使いを呼んでアニカを部屋に案内させて、僕を部屋に案内した。
りう。
39
#感動
こはる
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上野文
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#探偵
橘靖竜
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コメント
1件
おお、第39話読了だわ!ロルフが黒龍を倒すシーン、四人の声が背中を押すところがめちゃ熱かった。「火事場の馬鹿力」って表現にリアルな戦いの感触が出てたね。でも倒した後のアニカの記憶喪失にはズシンときた…ロルフが姫を気遣って真実を伏せる決断、切なすぎるわ。団長に抱きつかれる場面でちょっと和んだけど、次どうなるんだろう?続きが気になる🔥