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第39話
それから色々と団長と話した。こっちは魔獣の被害は少なかったらしい。
「団長。僕って降格ですか?」
僕が恐る恐る聞くと吹き出された。
「行方不明者名簿に入っていただけだ。ロルフを降格にするなんて、何があってもしないさ」
……何だか、プレッシャーがすごいのですが……まぁ、それだけ信頼されてるってことか。
「……有給。今日を含めて一週間でいいので、もらっていいですか? それと、騎士や、侍女に僕の昔の事は話さないよう伝えてくれませんか?」
「あぁ、大丈夫だが……もっと伸ばしても誰も文句は言わないだろうしな。ゆっくり休めよ」
そう厳つい顔の割に優しい声で言いながら僕の肩をポンポン叩いた。
懐かしい。団長がこんなになるなんて。ふふっ。
「これで僕は失礼します」
僕はそう言って、頭を一回下げてから部屋を出た。
✡
ロルフって……何だか初めて会ったのに、あの声が懐かしい……
でも、私はもう、二十八歳なのに……彼はまだ、十二歳くらいだろうし……
何が何でも無理がある。絶対に初対面。
……それに、私は名前くらい知られてもおかしくない立場だったのだし……
でもあの声、誰なのだろう……
私はそんな事を頭の中でグルグル張り巡らしながら、治療の術を受けていた。
「姫様。今日はおやすみ下さい。お部屋の掃除は終わりました」
「ありがとうございます」
私はペコリと頭を下げてから侍女に案内された。
城内は懐かしくても実家だとは思えなかった。
ボロボロで、ひび割れてる所もあるものの、立派で、造りもしっかりしている。絵画も高そうで、騎士達は毎日欠かさず鍛錬に来ている。
シェフも健在で、いい香りで食欲がそそられる。
……本当に、私、姫なの? まぁ、こんな沢山の人が言うなら間違い無いと思うけど……
部屋に着くと、部屋全体が明るく日当たりがとても良かった。ベッドもふかふかで、机も良さそうな木を使っていて高そう。
クローゼットもあって、ドレッサーまで付いている。
……うん。お姫様だったみたい。
でも、私は王位継承するの? それとも、国は滅びて、独立するの?
私は侍女が出ていったのを見て、ベッドの上に座った。ふかふかで睡魔が襲ってくる。このまま横になったら寝れそう。
私はその睡魔に勝てずに寝てしまった。
目覚めると朝日が見えた。決して夕日では無い。
嘘……あれ、昼前だった……え? 一日中……
私は髪を梳かして、服も用意された物に着替えてから部屋を出た。
すると、ロビーがガヤガヤしていた。
「勇者がいなくなって、どうするんだよ」
「ロルフは、有給をもらって一体……まさか、妹の所に……」
「そんな訳無い。見つからなかったと言っていただろう」
そんな争うような声が聞こえた。
ロルフさんが……確かにあの人の腕は凄いはず。
道端の魔物を一突きで倒していたのだから……勇者と呼ばれているのかな? 幼稚な私には分からないけど、妹って……
家族がいたのね……本当、優しい人。私を傷つけないように言葉をよく選んでいて。不器用で口も殆ど開かないし、俯いているような人だけど、絶対に困ってる人を見捨てない。そんな人なのかな。
分からないけど、私の勘はそう言ってるな。礼儀正しくて、忠誠心と正義感がとても強くて、なのに、助けないなんて……あり得ない。絶対。
私が、黙って黙々と封印し続けたから。
でも、私は二十八歳。見た目より若いし、経験も少ない。
それを承知の上で……本当に嬉しい。それと同時に心が痛い。
「姫様。ここでどうかされましたか?」
肩をビクッとさせて後ろを振り向くと侍女の中でも歳が近い、マリーさんがいた。今年で二十歳らしい。
ロルフさんが言っていたのが合っていれば、体は二十歳。産まれたのはは二十八年前。
思い出せそうなのに、思い出せ無くて歯がかゆい……皆、優しくしてくれるのに、名前の一つも出ないなんて……
「いえ。少し城内を歩いたら何か思い出せるかなと思って……」
私が記憶を失ったのはこの城内にいる人に伝わった。私が力に目覚めたのは、十五年前からずっと変わらずに伝えてくれたから。
大切な思い出も、他愛ない会話も、ささやかな親切も、思い出せないような落ちこぼれの姫か……
「休んでいて下さい。もし、倒れたら大変です」
「えぇ、分かりました」
りう。
39
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こはる
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私は頭を下げるとマリーは笑顔で「はい。何かあったら言ってください」と言っている。
「あ、ロルフさんって何者なのですか……?」
「勇者様ですか? この国一番、腕がなる剣士で、第一部隊に配属されている聖騎士です。誰かが困っていたら必ず助けるような人で、女性に人気があるんだと……あ、喋り過ぎてしまいました」
そう言ってマリーさんがフッと微笑んだ。
勇者様……この国で一番、腕がなる剣士。
誰かが困っていたら必ず助けるような心……女性に人気が……
「ありがとうございます」
私はそう言って頭を下げてから部屋に戻った。
コメント
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こはるさん、第40話読みました!記憶を失った姫様がロルフさんの声に「懐かしさ」を感じてるのがすごく気になります…。歯がかゆくなるほど思い出せないもどかしさが伝わってきて、こちらまでそわそわ。ロルフさんの「困ってる人を見捨てない」って人柄も、姫様の視点から語られて好感度上がりっぱなしです。二人の過去がどう繋がってるのか、続きが気になりすぎます!