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お話を肉付けさせていただきました。
自分なんかが、、いいのだろうかと思いましたが、書かせていただきました。
フェーズ1、omrさんです。
(ファンの女の子を喰うomrさんのおはなしです)
乾杯が何度も繰り返される打ち上げの席。ざわざわした空気の中、気づけば彼が隣に座っていた。
いつの間に移動してきたのかも分からない。
「……お姉さん、かわいいね」
不意に耳に落ちる声。振り向いた瞬間、至近距離で目が合う。
「え、あの……」
返事を迷う暇もなく、手の中にグラスを押し込まれる。
「ほら、飲んで。僕と乾杯しよ?」
断りきれず口をつけると、にやりとアヒル口が歪んだ。
「ねえ、もしかして僕のファン?」
重たい前髪の奥から、潤んだ瞳が覗き込んでくる。
頷いてしまったのは、酔いのせいか、それとも――。
「うれしい〜。……ファンなら、僕のこと嫌にならないよね?」
肩に腕が回され、耳元へ熱い吐息。
鼓動が早すぎて、言葉が出てこない。
周囲はまだ盛り上がっているのに、ここだけ空気が違う。
彼の指がグラスを奪っては注ぎ、また唇へ運ばせる。
「僕、世の中で一番ラッキーかも。僕のこと好きな子を、こんな近くで独り占めできるなんて」
テーブルの下で指先を絡められ、逃げ場が完全に塞がれていく。
「もういいでしょ、お酒。顔赤いし」
そう言いながら、テーブルの下で繋いだ手を強く握る。
「ちょっと抜けよっか。お姉さんだけ、特別にさ」
耳元で囁かれ、背筋が震える。
周囲はまだ盛り上がっていて、誰もこちらを気にしていない。
立ち上がった彼に腕を引かれるまま、気づけば店を出ていた。
夜風にあたり、少し酔いが冷めるかと思ったのに、
背中を支える手の温度がそれを許さなかった。
「ほら、タクシー来た」
目の前で止まり、ドアが開く。
躊躇う間もなく、背を押されて乗り込んでしまう。
ドアが閉まると同時に、世界が二人だけになった。
街の灯りが窓を流れていく中、すぐ隣の彼がゆっくりと身を寄せてくる。
すぐ隣で彼が笑う。
「やっぱ可愛い。……ねぇ、逃げないでよ?」
「……お姉さん、隙だらけで心配しちゃうな、僕」
低い声が耳に落ちる。
「だってさ、打ち上げで隣に座らせてくれるし、
こんなとこまで一緒に来て……もう僕に任せてるんでしょ?」
にやりとアヒル口が歪む。
彼の手が膝の上に置かれ、指先が布越しに滑っていく。
「ねぇ、ほんとに僕のファンなんでしょ?」
囁きながら、ゆっくりと手が太腿へ移動していく。
息を呑んだのを確認すると、彼は楽しそうに笑った。
「…僕のこと、嫌いにならないよね?」
絡め取られた手を強く握られ、言葉が詰まる。
拒めない沈黙を、彼は“肯定”だと受け取っている。
「かわいい……もっと見せてよ、その顔」
唇が触れそうな距離まで迫られ、心臓が爆発しそうになる。
運転手の視線を気にする余裕もない。
ただ彼の囁きと、熱い手のひらだけが支配していた。
「……ほら、着いた」
タクシーがホテル前に停まると、自動でドアが開いた。
彼は空いた手で財布を取り出し、紙幣を差し出す。
“おつりいらないです”みたいに軽く告げて、そのまま。
――もう片方の手は、ずっと私の指を絡めたまま離さなかった。
「行こ。お姉さんだけ、特別にさ」
にやりと笑いながら背中を押され、夜の街へ連れ出された。
フロントで、彼が迷いなく部屋を選ぶ。
札を数枚滑らせて渡すと、小さな鍵が手渡された。
受け取る仕草に一切のためらいがなくて――
――慣れてる。
その動作ひとつで、胸がざわついた。
「行こ」
軽く笑って、当たり前みたいに手を繋いでくる。
赤い絨毯の廊下に二人の足音が響いて、心臓の鼓動と重なる。
カチャリ、と鍵が回る音。
ドアが開き、背中をそっと押されて中へ。
甘い香りと、柔らかな照明。
まるで現実から切り離されたみたいに、感覚が遠のいていく。
玄関で立ちすくむ私の後ろに回り込み、耳元に息がかかる距離で囁かれた。
「……お姉さん、こういうの、もしかしてはじめて?」
鼓動が跳ね上がり、声が出せなかった。
「大丈夫、優しくするから」
背後から落ちた声に、足がすくむ。
促されるまま靴を脱ぐと、彼が指先を絡めてきた。
そっと繋がれた手は熱くて、逃げようとした力を簡単に奪っていく。
「世の中には、僕みたいな奴たくさんいるのに……
お姉さん、ほんと、簡単についてきちゃってさ」
からかうように笑いながら、ぐっと腕を引かれる。
気づけばベッドに押し倒されていて、視界に彼の顔が近づいてくる。
「……僕と、いいことしよ?」
吐息とともに囁かれ、そっと唇が触れた。
心臓が爆発しそうで、目を閉じるしかなかった。
唇が触れただけで、全身が震えた。
彼はすぐに顔を離し、じっとこちらを覗き込む。
「……もしかして、キスもはじめてだったりする?」
重たい前髪の奥から覗く瞳に射抜かれて、喉が詰まる。
声が出せず、ただ震えるまま頷いてしまった。
次の瞬間、彼のアヒル口がにやりと歪む。
「やば……めっちゃ興奮してきた」
囁きと同時に、もう一度唇を塞がれる。
今度は逃げられないほど深くて、息ができなくなる。
胸の奥が苦しいのに、どうしようもなく熱くなっていった。
「……大丈夫。すぐに気持ちよくなるから」
囁きと同時に、指先が頬から首筋をなぞって、背筋がぞくりと震えた。