S君の第一回の読み切り祭のお話です!
💚💗のお話です
病気の表現あり。死ネタになると思います。
ご注意ください。
桜が散る頃、俺はこの病院で君を見つけた。
ちっていくサクラの花びらに周りを囲まれる、美しい君を。
4月。桜が散り始めるころ、俺は怪我で入院している兄のお見舞いに来ていた。
「お兄ちゃん?入るよ。」
「すちか。どうぞー」
兄であるいるまが返事をする。
「おお!すちくん!やっほ!」
兄のそばには幼馴染のみことちゃん、こさめちゃんなっちゃんがいた。
「3人とも来るの早いね。」
「俺は、弟が今この病院に入院してるから、そのまま来たんだ。」
ひまちゃんがそう言う。
「1度も会ったことないよね。ひまちゃんの弟」
そう。俺らはひまちゃんの弟さんに会ったことがないのだ。
「たしかにな。あ、あいつ散歩とか好きだから、外とかいるかもよ。」
「へぇー、じゃ俺も散歩しようかな。」
「兄ちゃんはダメ。足折れてるんだから。」
「はい。」
変なことを言う兄を叱る。
「あっ、すち。悪いけど、これ欲しいから買ってきてもらえるか?」
「いいよ。行ってくる。」
「わりぃな。」
兄に頼まれたものを買いに俺は病室を出る。
少しフラフラしながら行こうと思い、病院の庭へ出る。
さくらが散っている。
「きれい、だな、」
俺は、そこに1人の男の子を見つけた。
舞い散る桜の花びらに周りを囲まれている。
美しい、1人の男の子を。
「…、きれい。」
そう、口に出してしまった。
ふと、その子が振り返る。
ピンクの前髪、ピンクの目。白い肌。
全てが綺麗だ。
俺は一瞬にして、目を奪われた。
「はじめまして!」
声をかけられる。
「はじめまして。」
「何してるの〜?」
「入院中の兄に頼まれたものを買いに行くついでにすこし、散歩を、」
「へ〜!散歩たのし?」
「まぁ、」
「こっち来なよ!」
そうその子が言うから、おれはその子の隣に座った。
彼は入院服を着ていたから、入院中なのだろう。
「君の名前は?」
「俺はね〜、らん!」
この少年はらんというらしい。
「らん。らんらん?」
「なにそれwあだ名?」
「うん。」
「へへっ。ありがとう!」
そう、お礼を言われる。
「なんで、ありがとうなの?」
「俺ねぇ、友達いないの!体が弱くて、学校にも言ったことがないんだ〜」
「そう、なんだ、」
彼は身体が弱い。
「君の名前は?」
そういえば、自分は名乗っていなかったことを思い出す。
「俺は、すち。」
「すち!よろしくね!」
「うん。よろしく。」
「ねね!すちはさ、これからもこの病院来るの?」
「兄が入院している限りはね。」
「じゃあさ、俺と友達になってよ!」
彼にそう言われる。断る理由は見つからなかった。
だから、俺は。
「いいよ。よろしくね。らんらん」
「うん!よろしくね、すち!」
4月のいつ頃だったか。
その日、俺たちは、この中庭で知り合い、友人になった。
それから数ヶ月。
いまだに退院のできない、兄のお見舞いに行くついでに、らんらんに会いに行っていた。
らんらんとは、毎回中庭で会い、色々なことを話した。
らんらんには1人の兄がいること。
その兄は、俺の兄と同い年ということ。
そんな、他愛もない話を、いつもいつも、話し続けていた。
俺は、そんな日々が大好きで、大切で、無くしたくなかった。
兄が退院してからも、俺はらんらんの元へ通いつめていた。
でも、別れというものは唐突で、酷く残酷なものだった。
ある日、いつものようにらんらんの元へ俺は行っていた。
でも、病院について、いつものように中庭で待っていても、いくら待っても、どれほど待っても、らんらんが来ることは無かった。
不安に感じた俺は、聞いてはいたが、行くことのなかった、らんらんの病室まで、向かうことにした。
「418号室、どこだ、?」
なかなか、部屋が見つからない。
そんなとき、俺は、よく知っている人をみつけた。
「ひまちゃん……?」
「す、ち……?」
そこにいてのは、ひまちゃんだった。
そして、ひまちゃんは俺の探していた病室の前で泣いていた。
「ひまちゃん、どうした、の?」
「そっか、らんがずっと話してくれてた子、すちだったんだ……、」
「え……?」
「すち、今まで、らんと一緒にいてくれてありがとう。」
「え。?」
今まで。その言葉に俺は違和感を感じて、その先の言葉を聞きたくなかった。
きっとその言葉は俺を傷つけるから。
ほら、やっぱり。
「う、そ、だ……だって、一昨日まで。あんなに、」
一昨日まで、あんなに元気に過ごしてたのに、
「うん。」
「らんな、」
ひまちゃんが、語り出す。
「らんな、生まれた時からずっと身体が弱くて、入退院を繰り返してたんだ。
でも、ある日、幼稚園で発作を起こして、倒れた。そこからは、なかなか回復しなくて、ずーっと入院中。小学校にも、中学校にも、行けなかった。
だから、友達ができなくて、
病院内でも、なかなか、病室から出れなかった。
友達をつくる機会がらんにはなかったんだ。
でも、ここ最近少し回復してきてたんだよ。
きっとそこですちにであったんだよな。
すちに出会ってからのらんは、今まで見た事ないくらいに毎日が楽しそうだった。
それまではまるで、明日にはいなくなってしまうんじゃないかって思うくらい、ほんとにつまらなそうだった。
だけど、すちに出会ってから、あいつすっごい変わったんだよ。
俺に、いっつも友達が出来た!って。
すっごい楽しそうにさ。
すっごい楽しそうに、
お前のこと話してくれてた。
なのに、なんで…
急にさ、
急に病状が悪化するなんて、考えもしなかった。」
ひまちゃんがらんらんについて、話してくれた。
俺は悲しいはずなのに、何故か涙は出なかった。
「すち。」
「えっ…?」
急にひまちゃんが、俺に向かってお辞儀をしてくる。
「らんの兄として、言わせてくれ。」
「らんと友達になってくれてありがとう。」
「らんを楽しませてくれて、ありがとう。」
「らんのそばにいてくれてありがとう。」
「らんを、大切にしてくれて、」
「本当に、ありがとうございました。」
あぁ、ほんとに、らんらんはいないんだ。
もうやめてよひまちゃん。、
「こちらこそ、らんらんと楽しい時間を過ごさせてくれて、ありがとうございました!」
もう、帰ろう。
らんらんがいないなら俺はここに来る必要は無い。
「すち!!」
ひまちゃんに呼び止められる。
「なに?」
「…、忘れないよ!らんらんは俺の親友なんだから!」
「ありがとうッ…!」
後ろで泣き崩れるひまちゃんを見ながら、俺はもう来ることの無い、この病院から、出る。
最後に、、あそこに行こう。
君と出会った、あの中庭に。
君と出会って、1年。
また、さくらの散る病院の中庭へ来た。
でも、そこに君の姿はなくて、
どれだけ探してもなくて、、
でもね、一つだけあるよ。
君との思い出がここにはあるね。
さよなら。らんらん。
来世でまた会えたら。また友達になろうね!
「ずっと、ずっと大好きだよ。」
今はもう居ない。彼に。そう声をかける。
「俺と友達になってくれてありがとう。」
きっと、空耳だ。
だけど俺にはそう聞こえた。
以上!また駄作やな!
コメント
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参加ありがとう。 もうなんか泣いちゃうわ。疲れた心に染みてくる… なんか妹が入院してた時に隣の病室だった俺の友達の事思い出した ありがとう。ちゃんと受け取りました