テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
部屋の空気が少しだけ張る。
〇〇「…なんで?」
不思議そうに北斗を見る。
北斗は一瞬だけ言葉を止める。
北斗「……別に」
さっきより少しだけトーンを落とす。
風磨が小さく息を吐く。
樹も様子を見る。
〇〇「普通に話してただけじゃん」
〇〇は悪気なく続ける。
きょもに軽く寄りながら。
その距離。
北斗の視線が一瞬だけ動く。
北斗「……」
北斗「長い」
ぽつっと言う。
〇〇「え?」
きょも「たしかにちょっと長いかもね」
フォローっぽく入る。
〇〇「ひどくない?」
少し笑いながら言う。
〇〇「そんな語ってないし」
北斗「語ってる」
短く返す。
ジェシー「まあまあ笑」
慎太郎「熱量はあったな」
高地「でも楽しそうだったよ」
〇〇「でしょ」
〇〇はまた少し笑う。
〇〇「だってさ」
まだ続ける。
〇〇「久しぶりにああいうのだったし」
〇〇「ちょっとテンション上がっただけ」
北斗「……」
また少し黙る。
北斗「…ふーん」
興味なさそうに返す。
でも。
完全に嘘。
風磨がその反応を見てニヤっとする。
風磨「気にしてるな」
小さく呟く。
樹「してるな」
北斗「してねえよ」
即否定。
〇〇「してるじゃん」
軽く笑いながら言う。
〇〇「さっきから反応するし」
北斗「うるさい」
でも強くはない。
〇〇「なにそれ」
笑う。
空気が少し柔らかくなる。
でも。
北斗の中だけは違う。
きょも「とりあえず水飲も」
〇〇にコップを渡す。
〇〇「ありがと」
素直に受け取る。
そのやりとりを見ながら。
北斗は少しだけ目を細める。
北斗「……」
〇〇「ねえ」
きょもに向かって。
〇〇「やっぱ優しいよね」
きょも「普通だよ」
〇〇「そういうとこ」
少し笑う。
北斗の中でまた小さく揺れる。
北斗「……」
北斗「(ああいうのか)」
さっきの言葉が重なる。
樹「〇〇もう寝た方がいいんじゃね?」
風磨「だな」
ジェシー「完全に回ってる」
慎太郎「顔赤いし」
〇〇「まだいける」
でも少しふらつく。
きょもが支える。
北斗は一歩だけ近づく。
でも止まる。
手は出さない。
北斗「……」
北斗「(別にいい)」
そう思う。
でも。
視線はどうしても。
きょもと〇〇に向く。
何も言わない。
でも。
確実に嫉妬してる。
それを隠したまま。
静かにその場にいる。
しばらくして。
樹「もう解散にするか」
風磨「だな」
ジェシー「えーもう?」
慎太郎「まあ〇〇も限界だしな」
高地「明日もあるしね」
〇〇「まだいけるって」
でも立ち上がると少しふらつく。
きょも「ほら」
肩を支える。
〇〇「大丈夫」
北斗は少し離れた位置で見てる。
北斗「……」
樹「部屋割りそのままでいいよな」
風磨「さっき決めた通りな」
ジェシー「じゃあおやすみ!」
慎太郎「また明日!」
高地「ちゃんと水飲んでねー」
それぞれバラける。
きょも「おやすみ」
樹は一瞬だけ北斗を見る。
樹「行くぞ」
北斗「…ああ」
短く返す。
でも。
動かない。
樹「先行ってる」
そう言って部屋を出る。
ドアが閉まる。
部屋に残るのは。
きょも、〇〇、風磨、そして北斗。
少しの沈黙。
〇〇は布団に座ったまま。
〇〇「…帰らないの?」
北斗に向かって言う。
北斗「帰る」
短く答える。
でも。
少しだけその場にいる。
きょもが空気を見て立ち上がる。
きょも「〇〇、水飲んでから寝てね」
〇〇「うん」
風磨も立ち上がる。
風磨「じゃあ俺らも一瞬出るわ」
〇〇「え、どこ行くの」
風磨「ちょっとだけな」
軽く流す。
きょもと風磨が外に出る。
ドアが閉まる。
一瞬だけ。
部屋に〇〇と北斗、2人きり。
〇〇「……」
〇〇「さっきさ」
北斗「なに」
〇〇「なんか機嫌悪くなかった?」
まっすぐ聞く。
北斗「別に」
即答。
〇〇「絶対嘘」
少し笑う。
北斗「…うるさい」
弱く返す。
〇〇「なにそれ」
〇〇も少し笑う。
でも。
少しだけ気にしてる顔。
北斗は一瞬だけ〇〇を見る。
北斗「……」
何か言いかけて。
やめる。
北斗「もう寝ろ」
それだけ言う。
〇〇「は?」
〇〇「なにそれ」
でも強くはない。
北斗はドアの方へ向かう。
手をかける。
〇〇「ねえ」
呼び止める。
北斗「なに」
振り返らずに言う。
〇〇「明日さ」
少し間。
〇〇「普通に話してよ」
北斗「……」
少し止まる。
北斗「普通だろ」
短く返す。
〇〇「今日ちょっと変だった」
素直に言う。
北斗は少しだけ目を閉じる。
北斗「……」
北斗「知らねえよ」
小さく言って。
ドアを開ける。
外に出る。
そのまま隣の自分の部屋へ。
ドアを閉める。
静かな空間。
北斗「……」
その場に立ったまま。
動かない。
さっきの会話。
〇〇の声。
全部残ってる。
北斗「(普通に、か)」
小さく呟く。
一方。
〇〇の部屋。
きょもと風磨が戻ってくる。
きょも「戻ったよ」
〇〇「遅い」
風磨「すぐだろ」
〇〇は少しぼーっとしながら。
さっきの北斗の様子を思い出してる。
〇〇「……なんだったんだろ」
小さく呟く。
きょも「水、もう一杯飲む?」
〇〇「…飲む」
コップを受け取る。
ゆっくり飲む。
風磨は壁にもたれながら様子を見る。
風磨「さっき2人で何話してたの」
〇〇「別に」
コップを見たまま答える。
きょも「ほんとに?」
〇〇「ほんと」
少し間。
風磨「機嫌の話だろ」
当てる。
〇〇「…うん」
あっさり認める。
きょも「なんて?」
〇〇「“別に”って」
そのまま言う。
風磨「まあ言うな」
小さく笑う。
〇〇「でもさ」
少し顔を上げる。
〇〇「絶対なんかあったよね」
きょも「うん」
風磨「ある」
〇〇「なんで?」
風磨「それまだ分かんないの?」
〇〇「分かんない」
即答。
きょもが少し困ったように笑う。
風磨「今日何回名前出した?」
〇〇「え?」
風磨「高橋恭平」
〇〇「…え、でも」
〇〇「別に普通じゃない?」
風磨「普通」
〇〇「でしょ?」
風磨「でも」
少し間を置く。
風磨「相手がどう思うかは別」
〇〇「だからそれ何で?」
まだ繋がらない。
きょも「〇〇さ」
〇〇「なに」
きょも「北斗のことどう思ってる?」
〇〇「どうって?」
きょも「関係」
〇〇「普通に仲間」
迷いなく言う。
風磨が小さく息を吐く。
風磨「それだよ」
〇〇「なにが」
風磨「ズレてる」
〇〇「え?」
きょも「〇〇はそうでも」
きょも「向こうが同じとは限らないでしょ」
〇〇「…え」
少し止まる。
でもすぐに。
〇〇「いやいや」
〇〇「北斗でしょ?」
〇〇「そんなわけないじゃん!笑」
笑う。
風磨「その自信どこから来るんだよ」
〇〇「だってさ笑」
〇〇「北斗ってそういうの隠すタイプじゃん」
きょも「隠すよ」
即答。
〇〇「え?」
風磨「むしろ隠すタイプ」
〇〇「……」
少し考える。
でも。
まだ繋がらない。
〇〇「でもそれで機嫌悪くなる?」
風磨「なるだろ」
〇〇「なんで」
きょもが少しだけ優しく言う。
きょも「〇〇が思ってるより」
きょも「北斗、単純だよ」
〇〇「単純?」
風磨「めちゃくちゃ分かりやすい」
〇〇「……」
少しだけ黙る。
〇〇「じゃあさ」
小さく言う。
〇〇「私が悪いの?」
きょも「悪いわけじゃない」
風磨「悪くはない」
〇〇「じゃあなんであんな感じになるの」
風磨「それは」
少しだけ言葉を止める。
きょもと目を合わせる。
風磨「…まあいいや」
〇〇「よくない」
風磨「今言っても分かんねえだろ」
〇〇「分かるし」
きょも「ほんとに?」
〇〇「…たぶん」
少し弱くなる。
少し沈黙。
風磨「じゃあ一個だけ」
〇〇「なに」
風磨「もしさ」
風磨「北斗が他の女の話ずっとしてたら」
〇〇「……」
さっきと同じ質問。
でも。
今は少しだけ止まる。
〇〇「…別に」
言う。
でもさっきより弱い。
風磨「ほんとか?」
〇〇「……」
少しだけ視線を逸らす。
きょもがそれに気づく。
きょも「今日はもういいよ」
きょも「頭回ってないでしょ」
〇〇「…うん」
風磨「寝ろ」
〇〇は布団に入る。
横になる。
〇〇「……」
目を閉じる。
でも頭の中に残る。
北斗の顔。
あの空気。
さっきの言葉。
〇〇「…わかんない」
小さく呟く。
きょもと風磨はその様子を見る。
風磨「気づくかな」
小さく。
きょも「どうだろうね」
静かに電気を落とす。
夜が深くなる。
それぞれの気持ちを残したまま。
ーーーー
北斗side
ドアを閉めた瞬間。
静けさが一気に広がる。
北斗「……」
その場に立ったまま動かない。
隣の部屋から。
かすかに声が聞こえる。
〇〇と、きょもと、風磨。
笑い声。
会話。
全部ぼんやり届く。
北斗「……」
視線を落とす。
北斗「(近すぎだろ)」
壁一枚。
それだけなのに。
距離は全然違う。
ゆっくり部屋の中に入る。
畳に座る。
スマホを置く。
何もする気にならない。
耳に入る。
〇〇の声。
少し酔った、柔らかい声。
北斗「(楽しそうだな)」
小さく思う。
頭の中に浮かぶのは。
さっきの光景。
きょもに寄ってる〇〇。
笑ってる顔。
高橋恭平の話。
北斗「……」
北斗「(なんであいつなんだよ)」
思ってしまう。
でもすぐに。
北斗「(関係ねえだろ)」
自分で否定する。
仰向けに倒れる。
天井を見る。
〇〇の声がまた聞こえる。
内容までははっきり聞こえない。
でも。
楽しそうなのは分かる。
北斗「(ああいうのがいいんだろ)」
優しくて。
距離感ちゃんとしてて。
余裕があって。
北斗「(全部逆じゃん)」
自分と比べる。
勝手に。
北斗「……はあ」
小さく息を吐く。
手で目を覆う。
北斗「(言えばいいのに)」
一瞬だけ浮かぶ。
でもすぐに。
北斗「(言わねえ)」
はっきり否定。
北斗「(今のままでいい)」
北斗「(崩す意味ない)」
でも。
頭の中で繰り返されるのは。
〇〇の言葉。
「ドキドキしない」
「違うんだよね」
北斗「……」
北斗「(知ってるよ)」
小さく呟く。
体を起こす。
壁の方を見る。
その向こうに〇〇がいる。
北斗「(でもさ)」
少しだけ。
ほんの少しだけ。
北斗「(気づけよ)」
声にならない本音。
すぐに首を振る。
北斗「(無理か)」
自分で終わらせる。
再び横になる。
目を閉じる。
でも眠れない。
隣から聞こえる声。
〇〇の存在。
近くて遠い距離。
北斗「……」
静かな部屋で。
一人だけ。
感情を押し込めたまま。
夜が過ぎていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🌙🌃
コンコン。
静かな夜。
北斗の部屋に、小さなノック。
北斗「……?」
体を起こす。
もう一度、コンコン。
北斗は立ち上がってドアを開ける。
北斗「……」
目の前に〇〇。
〇〇「起きてた?」
北斗「起きてる」
短く返す。
〇〇「ちょっと話したくて」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「入れよ」
〇〇が部屋に入る。
ドアが閉まる。
静かな空気。
〇〇「さっきさ」
北斗「……」
〇〇「なんか変だったじゃん」
まっすぐ言う。
北斗「別に」
〇〇「別にじゃない」
少しの沈黙。
〇〇「なんで?」
北斗は少し視線を逸らす。
北斗「…うるさかっただけ」
〇〇「え、それだけ?」
少し笑う。
北斗「それだけ」
でも声は少しだけ低い。
〇〇「ふーん」
納得してない顔。
でもそれ以上は追わない。
少し間。
〇〇「でもさ」
北斗「なに」
〇〇「今日楽しかった」
北斗「……」
一瞬だけ止まる。
北斗「…ならいいだろ」
〇〇「うん」
少し笑う。
そのまま。
〇〇は部屋を見回して。
自然にベッドの方へ歩く。
北斗「……おい」
少し驚く。
〇〇「ん?」
そのままベッドの縁に座る。
北斗「何してんだよ」
〇〇「座ってるだけ」
北斗「いや、戻れ」
即答。
〇〇「なんで?」
きょとんとした顔。
北斗「なんでじゃねえだろ」
少しだけ焦る。
〇〇「だって眠い」
そのままごろんと横になる。
北斗「は?」
完全に予想外。
〇〇「ちょっとだけ」
目を閉じかけてる。
北斗「いや無理だろ」
北斗「戻れって」
〇〇「やだ」
即答。
北斗「やだじゃねえよ」
でも〇〇はもう動かない。
布団にくるまってる。
北斗「……」
完全に詰む。
北斗「(どうすんだこれ)」
内心パニック。
〇〇「北斗も寝れば?」
目を閉じたまま言う。
北斗「寝れねえよ」
即答。
〇〇「なんで」
北斗「……」
言えない。
〇〇「隣空いてるよ」
無意識の一言。
北斗「……は?」
一瞬止まる。
北斗「(それ言うか普通)」
完全に心臓が跳ねる。
〇〇「早く」
軽く手で布団をぽんぽん叩く。
北斗「……」
数秒固まる。
北斗「(無理だろ)」
北斗「(いや無理)」
北斗「(でもこいつ動かねえし)」
結局。
北斗はゆっくりベッドに近づく。
北斗「……端な」
小さく言う。
〇〇「うん」
もう半分寝てる。
北斗はできるだけ距離を取って横になる。
でも。
普通に近い。
北斗「……」
目を閉じられない。
〇〇の寝息がすぐ隣。
距離、近すぎる。
北斗「(無理無理無理)」
内心完全にパニック。
〇〇が少し寝返りを打つ。
距離がさらに近くなる。
北斗「っ……」
息を止める。
北斗「(落ち着け)」
北斗「(何もするな)」
北斗「(寝ろ)」
でも。
全然眠れない。
〇〇「……北斗」
寝ぼけた声。
北斗「なに」
小さく返す。
〇〇「なんかあったら言ってね」
完全に無意識。
北斗「……」
一瞬、言葉に詰まる。
北斗「……言わねえよ」
小さく返す。
でもそのあと。
少しだけ視線を向ける。
北斗「(もう言ってるようなもんだろ)」
心の中で呟く。
隣には〇〇。
近すぎる距離。
北斗は何も言わない。
告白もしない。
でも。
この距離と空気が。
全部を少しだけ匂わせている。
北斗「……はあ」
小さく息を吐く。
眠れないまま。
静かな夜が続いていく。
ーーーーーーーーー
北斗side
ドアを開けた瞬間から、もう落ち着いてなかった。
北斗「……」
目の前に〇〇。
この時間に来る意味も、理由も。
なんとなく分かるのに。
分かりたくない。
「話したくて」
その一言で、もう無理だと思った。
北斗「……入れよ」
平然を装う。
部屋に入ってきた〇〇は、いつも通りで。
少し酔ってて。
少し素直で。
だから余計に厄介。
「なんで?」
そう聞かれても。
北斗「…うるさかっただけ」
適当に返す。
本当の理由なんて言えるわけない。
でも。
それ以上追ってこないのが〇〇で。
それもまた、余計に引っかかる。
「今日楽しかった」
その言葉に。
北斗「……」
一瞬止まる。
北斗「…ならいいだろ」
それしか言えない。
そのあと。
〇〇がベッドの方に行った時点で。
完全に思考が止まった。
北斗「……おい」
座るだけかと思ったら。
そのまま横になる。
北斗「は?」
頭が追いつかない。
「ちょっとだけ」
いや無理だろ。
北斗「戻れ」
即答。
これ以上は無理。
でも。
「やだ」
一言で終わる。
北斗「……」
詰んだ。
完全に。
布団にくるまって動かない〇〇。
動かす気もない。
北斗「(どうすんだこれ)」
「隣空いてるよ」
その一言で。
心臓が一気に跳ねる。
北斗「(いやいやいや)」
北斗「(分かって言ってる?)」
絶対分かってない。
だから言える。
それが一番タチ悪い。
「早く」
布団を叩く音。
北斗「……」
数秒、完全停止。
北斗「(無理)」
北斗「(ほんと無理)」
北斗「(でもこのままも無理)」
逃げ場がない。
結局。
ベッドに入る。
北斗「……端な」
それしか言えない。
距離を取る。
取ってるつもり。
でも近い。
普通に近い。
北斗「……」
目閉じられるわけない。
隣に〇〇がいる。
それだけで無理。
北斗「(寝ろ)」
北斗「(何も考えるな)」
無理。
少し動くたびに距離が変わる。
そのたびに意識する。
北斗「(近いって)」
寝返り。
さらに近くなる。
北斗「っ……」
息止まる。
北斗「(ほんと無理)」
「北斗」
名前呼ばれる。
しかもこの距離で。
北斗「なに」
できるだけ普通に返す。
「なんかあったら言ってね」
無意識の声。
北斗「……」
一瞬、本気で言いそうになる。
全部。
今日のことも。
ずっとのことも。
でも。
北斗「……言わねえよ」
止める。
北斗「(今言ったら終わる)」
北斗「(全部変わる)」
それはまだいらない。
横にいる〇〇を見る。
完全に寝てる。
何も知らない顔で。
北斗「(ほんとに気づかねえな)」
小さく思う。
北斗「(少しは気づけよ)」
思って。
すぐにやめる。
北斗「(無理か)」
天井を見る。
眠れるわけない。
でも。
この距離で。
何も言わずにいられる自分もおかしいと思う。
北斗「……はあ」
小さく息を吐く。
気持ちは隠しきれてない。
北斗「(これでいい)」
言い聞かせる。
隣に〇〇。
触れそうで触れない距離。
そのまま。
眠れない夜が、静かに続いていく。
ーーーーーーーーー
☀️朝8:00。
〇〇たちの部屋。
カーテンの隙間から光が入る。
きょもが先に目を覚ます。
きょも「……ん」
ゆっくり起き上がる。
隣を見る。
風磨はまだ寝てる。
きょも「風磨」
軽く揺らす。
風磨「……んー」
風磨もゆっくり起きる。
風磨「何時?」
きょも「8時」
風磨「早」
きょもは周りを見渡す。
一瞬、止まる。
きょも「……あれ」
風磨「何」
きょも「〇〇いない」
風磨「は?」
一気に起きる。
2人で部屋を見渡す。
布団はある。
でも。
〇〇はいない。
風磨「トイレは?」
きょも「いない」
風磨「え、ちょっと待って」
一気に空気が変わる。
きょも「スマホある?」
風磨「……ない」
きょも「は?」
風磨「いや、ないって」
一瞬沈黙。
風磨「え、どこ行った?」
きょも「いや分かんない」
きょもは少し冷静に考える。
きょも「でも外出るにしても一人で行く?」
風磨「行かないだろ普通」
きょも「だよね」
2人とも同時にある考えに行き着く。
風磨「……まさか」
きょも「……」
風磨「隣」
きょも「だよね」
2人で一瞬顔を見る。
風磨「行くか」
きょも「行くしかない」
急いで部屋を出る。
廊下。
隣の部屋。
北斗の部屋の前。
風磨「……いると思う?」
きょも「ほぼ確」
風磨がノックしようとする。
その前に。
ガチャ。
ドアが少し開く。
北斗が出てくる。
寝起き。
でもどこか疲れてる顔。
風磨「……」
きょも「……」
北斗「何」
風磨「いやそれこっちのセリフ」
きょも「〇〇いる?」
北斗「……」
一瞬止まる。
その沈黙で。
2人とも確信する。
風磨「いるな」
北斗「……」
何も言わない。
きょも「なんで?」
北斗「知らねえよ」
風磨「知らねえよじゃないだろ」
北斗「来たんだよ勝手に」
きょも「で、入れたの?」
北斗「追い返せるかよ」
風磨「いやそこは頑張れよ」
北斗「無理だろ」
きょもが少し笑う。
きょも「で、今は?」
北斗「寝てる」
風磨「はあ!?」
声を抑えながら驚く。
風磨「一緒に?」
北斗「……」
答えない。
その反応で確定。
風磨「マジかよ」
きょも「起こす?」
北斗「やめろ」
即答。
風磨「なんで」
北斗「今起こしたら面倒だろ」
きょも「それはそう」
風磨「いやでも状況が面倒なんだよ」
北斗「知らねえよ」
3人で小声でやり合う。
部屋の中。
〇〇はまだぐっすり寝てる。
何も知らずに。
ーーー
廊下。
風磨がため息。
風磨「とりあえず」
風磨「起きたら説明な」
北斗「……」
きょも「8時だからね」
きょも「チェックアウト10時」
風磨「あと2時間」
北斗「……分かってる」
でも内心。
全然余裕ない。
北斗「(なんでこうなるんだよ)」
その事実だけで。
朝からすでに心臓が落ち着かない。
ーー
風磨ときょもが小声で話す。
風磨「これ普通にやばいだろ」
きょも「うん、共有した方がいい」
風磨「呼ぶか」
きょも「うん」
数分後。
北斗の部屋の前。
ジェシー、慎太郎、高地、樹も集合。
ジェシー「え、なに急に」
慎太郎「朝から集合って珍しくない?」
高地「なんかあった?」
風磨「静かに」
小声で制す。
樹はすでに察してる顔。
樹「……いるの?」
きょも「いる」
ジェシー「誰が?」
風磨「〇〇」
一瞬、全員フリーズ。
慎太郎「……は?」
高地「え?」
ジェシー「え???」
樹「ほらな」
風磨「しかも」
少し間。
風磨「中で寝てる」
慎太郎「いやいやいや」
ジェシー「ちょっと待って」
高地「どういうこと!?」
風磨「そのまま」
全員一斉に北斗を見る。
北斗「……」
無言。
ジェシー「説明して!?」
慎太郎「どういう流れ!?」
北斗「来たんだよ」
一言。
高地「どこに!?」
北斗「部屋に」
慎太郎「それは分かる!」
ジェシー「で、なんで寝てるの!?」
北斗「知らねえよ」
風磨「いや知ってるだろ」
北斗「気づいたら寝てた」
樹「嘘つけ」
北斗「ほんとだって」
全員ざわざわ。
ジェシー「え、一緒に寝たの!?」
北斗「……」
少しだけ間。
慎太郎「間が答えなんよ」
高地「ええええ!?」
風磨「声抑えろ!」
全員一気に小声になる。
ジェシー「やばいってこれ」
慎太郎「事件だろ」
風磨「とにかく静かに」
ジェシー「いや無理だろこの状況」
慎太郎「朝から情報量えぐい」
高地「〇〇まだ寝てるの?」
北斗「寝てる」
樹「起きる気配は?」
北斗「ない」
風磨「一番平和なやつだな」
きょも「本人だけね」
ジェシー「いやでもさ」
ジェシー「これバレたら終わりじゃない?」
慎太郎「終わるな」
高地「どうするの?」
全員の視線が北斗に集まる。
北斗「知らねえよ」
樹「お前が中心だろ」
北斗「勝手に来たんだって」
風磨「それでもだろ」
沈黙。
その時。
部屋の中から小さな物音。
全員「……」
一斉に固まる。
北斗「静かに」
小さく言う。
ジェシーが口を押さえる。
慎太郎も固まる。
少しして。
また静かになる。
風磨「びびらせんなよ…」
小声。
きょも「まだ寝てるね」
ジェシー「心臓に悪いって」
樹「で、どうする」
風磨「とりあえず」
風磨「このまま起きるまで待つしかない」
高地「でも時間」
きょも「8時過ぎ」
慎太郎「チェックアウト10時だよな」
ジェシー「あと2時間」
風磨「その間に」
風磨「誰にもバレずに戻す」
樹「ミッションかよ」
北斗「……」
腕を組んで黙ってる。
ジェシー「てかさ」
ジェシー「〇〇なんで来たの?」
北斗「知らねえって」
慎太郎「絶対なんかあっただろ」
きょもと風磨が一瞬目を合わせる。
風磨「まあ、色々あった」
ぼかす。
高地「え、なにそれ気になる」
樹「後でな」
ジェシー「えーーー」
その時。
部屋の中。
〇〇「……ん」
小さく寝返りの音。
全員「……!」
風磨「起きる!?」
北斗「まだ」
耳を澄ます。
数秒。
また静かになる。
慎太郎「セーフ…」
ジェシー「もう無理心臓もたん」
高地「どうやって戻すの…」
風磨「最悪」
風磨「このまま起きたら」
きょも「全員で誤魔化すしかないね」
樹「無理だろそれ」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「(なんでこうなるんだよ)」
隣の部屋じゃなくて。
今この部屋にいる。
しかも全員集合。
ジェシー「とりあえずさ」
ジェシー「中見ていい?」
北斗「やめろ」
即答。
慎太郎「気になるって!」
北斗「起こすな」
風磨「それは正しい」
また小声のざわざわ。
その時。
部屋の中から。
〇〇「……北斗」
寝ぼけた声。
全員「!?」
完全にフリーズ。
北斗「……」
一瞬で固まる。
風磨「今呼んだよな?」
小声。
きょも「呼んだね」
ジェシー「名前呼び!?」
慎太郎「やばいやばい」
樹「静かにしろって」
部屋の中はまだ静か
でも。
確実に。
起きる時間が近づいている。
全員が固まったまま。
部屋の中から聞こえた。
〇〇「……北斗」
寝ぼけた声。
ジェシー「今のやばくない?」
慎太郎「完全に名前呼びだよな」
高地「距離感どうなってるの…」
風磨「静かにって」
樹が北斗を見る
樹「で?」
北斗「……」
少し間。
全員の視線が集まる。
北斗「昨日」
ぽつっと話し始める。
ジェシー「うん」
慎太郎「うんうん」
北斗「部屋戻って」
北斗「普通に一人でいたら」
北斗「ノック来て」
高地「〇〇?」
北斗「そう」
慎太郎「来たんだ!?」
北斗「で、開けたらいて」
北斗「話したいって言われて」
風磨「まあそこまでは想定内」
北斗「中入れて」
北斗「少し話して」
樹「何の話」
北斗「さっきのこと」
北斗「なんで機嫌悪かったのかって」
きょもと風磨が小さく頷く。
ジェシー「ででで!?」
北斗「適当に流してたら」
北斗「急にベッド行って」
慎太郎「は!?」
高地「急すぎる!」
北斗「座るだけかと思ったら」
北斗「そのまま寝た」
ジェシー「ええええ!?」
慎太郎「いやいやいや」
風磨「で、追い出さなかったの?」
北斗「無理だろ」
即答。
樹「まあ…あの状態ならな」
北斗「起こしても動かねえし」
北斗「そのまま寝た」
ジェシー「で、一緒に?」
北斗「……」
少しだけ間。
慎太郎「その間なに!?」
北斗「……仕方なく」
高地「仕方なく!?」
ジェシー「やばすぎ!」
風磨「何もなかったの?」
北斗「ねえよ」
即答。
一瞬の沈黙。
慎太郎「ほんとに?」
北斗「ほんとに」
ジェシー「いやでもさ」
ジェシー「隣でしょ?」
北斗「……うるせえ」
高地「いや気になるって!」
樹「で、そのまま朝?」
北斗「そう」
風磨「で、俺らが来たってことね」
きょも「全部繋がった」
ジェシー「いやすごいなこれ」
慎太郎「漫画みたい」
北斗「……」
少しだけ顔をしかめる。
北斗「ほんとに何もねえからな」
念押し。
風磨「それは分かってる」
樹「問題はそこじゃない」
高地「そうだね…」
ジェシー「じゃあ何が問題?」
風磨「これからどうするか」
全員、再び静かになる。
部屋の中。
〇〇はまだぐっすり。
何も知らずに。
ーー!
北斗は小さく息を吐く。
北斗「(マジで何してんだよ)」
でも。
昨夜の距離。
あの空気。
全部、頭に残ってる。
そして今。
全員に囲まれて説明してるこの状況。
北斗「……はあ」
完全に、逃げ場がない朝になっている。
廊下。
全員の視線が、また北斗に集まる。
ジェシー「で、どうすんの?」
慎太郎「そう、それ」
高地「このあとどうするの?」
風磨も腕を組む。
風磨「選択肢は?」
樹「起こすか、そのままか」
きょも「どっちもリスクあるね」
ジェシー「起こしたら?」
慎太郎「パニックになるくない?」
高地「状況理解したらびっくりするよね」
風磨「しかもこの人数」
ジェシー「確かに笑」
樹「じゃあそのまま?」
きょも「それもそれで時間がね」
全員また北斗を見る。
ジェシー「北斗どうする?」
慎太郎「決めて」
高地「リーダー今だけ北斗」
北斗「なんでだよ」
風磨「中心人物だから」
樹「責任者」
北斗「勝手に来ただけだろ」
ジェシー「でも一緒に寝たじゃん」
北斗「……うるせえ」
少し沈黙。
きょも「現実的に考えると」
きょも「〇〇起きたタイミングで自然に戻すのが一番かな」
風磨「俺もそれ」
樹「その時どう説明する?」
ジェシー「確かに」
慎太郎「絶対聞かれる」
高地「どうするの…」
また全員、北斗を見る。
北斗「……」
少し考える。
北斗「普通に言えばいいだろ」
風磨「何を」
北斗「来て寝たって」
ジェシー「シンプルすぎる笑」
慎太郎「でも事実」
樹「それ以上でも以下でもないな」
きょも「〇〇ならそれで納得するかもね」
風磨「確かに」
高地「じゃあそれでいく?」
ジェシー「OK?」
北斗「……」
小さく頷く。
北斗「起きたら戻す」
風磨「で、何事もなかった感じで朝」
慎太郎「平和にいける?」
樹「無理だろ」
ジェシー「絶対ニヤける」
風磨「抑えろ」
きょも「頑張ろう」
全員で小さく深呼吸みたいな空気。
その時。
部屋の中から。
〇〇「……ん」
全員「……!」
慎太郎「来た!?」
ジェシー「起きる!?」
北斗「静かに」
全員一気に口を閉じる。
空気が張り詰める。
ドア一枚向こう。
〇〇がゆっくり動き出してる。
風磨「本番だな」
小声。
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「(まじで頼む)」
逃げ場なし。
全員見守り体制。
そして。
〇〇が目を覚ます瞬間が、すぐそこまで来ている。
部屋の中。
〇〇「……ん」
小さく寝返りを打つ。
ーーー
全員、息を止める。
慎太郎「起きる…?」
ジェシー「静かに!」
北斗「……」
ドアの前で固まる。
ーーー
〇〇がゆっくり目を開ける。
ぼんやりした視界。
見慣れない天井。
〇〇「……?」
少しだけ眉をひそめる。
体を起こす。
布団の感触も、部屋の雰囲気も。
全部違う。
〇〇「……え」
数秒止まる。
〇〇「……どこ?」
小さく呟く。
ーーー
ジェシーが口を押さえて震える。
慎太郎も耐えてる。
風磨「絶対混乱してる」
きょも「そりゃね」
ーーー
〇〇は周りを見渡す。
そして。
〇〇「……北斗の部屋?」
徐々に思い出してくる。
〇〇「……え、なんで」
ーーー
樹「来るぞ」
北斗は一歩前に出る。
ガチャ。
ドアが開く。
〇〇が顔を出す。
寝起きで少しボーッとしてる。
〇〇「……」
目の前。
全員集合。
〇〇「……え?」
完全にフリーズ。
ジェシー「おはよう!」
慎太郎「おはよー!」
無駄に明るい。
〇〇「……なにこれ」
風磨「朝です」
〇〇「いやそうじゃなくて」
きょも「説明する?」
全員、一斉に北斗を見る。
北斗「……」
少し間。
〇〇「北斗」
〇〇「なんで私ここにいんの」
まっすぐ聞く。
北斗「……来たからだろ」
〇〇「は?」
ジェシー「そのまま笑」
慎太郎「ストレート」
〇〇「来たって?」
北斗「夜」
北斗「ノックして」
北斗「入って」
北斗「そのまま寝た」
〇〇「……」
数秒、完全停止。
〇〇「……私?」
風磨「お前」
〇〇「……嘘でしょ」
きょも「ほんと」
〇〇「……」
頭を抱える。
〇〇「え、ちょっと待って」
〇〇「え、え?」
ジェシー「ちなみに」
ジェシー「一緒に寝てた」
〇〇「は!?」
慎太郎「はい追加情報」
〇〇「ちょっと待って!!!」
全員一気に笑いをこらえる。
〇〇「なんで起こしてくれないの!?」
北斗「起きなかった」
〇〇「うそでしょ…」
風磨「完全に寝落ち」
〇〇「最悪…」
顔を覆う。
きょも「でもまあ」
きょも「何もなかったから」
〇〇「それはそうでしょ!」
即答。
ジェシー「即答笑」
慎太郎「信頼度高」
北斗「……」
少しだけ視線を逸らす。
〇〇はまだ状況を処理しきれてない。
〇〇「え、じゃあさ」
〇〇「私ここで寝てたってこと?」
全員「そう」
〇〇「……」
再び固まる。
数秒後。
〇〇「無理」
ジェシー「何が笑」
〇〇「恥ずかしいんだけど普通に」
風磨「今さら?」
慎太郎「遅い遅い」
きょも「とりあえず戻ろうか」
〇〇「うん…」
少し顔赤いまま頷く。
北斗は何も言わない。
ただ少しだけ。
北斗「……ほら」
ドアを軽く開ける。
〇〇が部屋から出る。
すれ違う瞬間。
ほんの一瞬だけ距離が近い。
北斗「……」
小さく息を止める。
〇〇はまだ気づいてない。
風磨「じゃ、解散!」
ジェシー「朝から濃いわ〜」
慎太郎「最高」
樹「とりあえず朝飯」
高地「切り替え大事」
わちゃわちゃしながら解散。
〇〇は自分の部屋に戻りながら。
まだ少し混乱してる。
〇〇「……なんで行ったんだろ私」
一方。
北斗は部屋の前で立ったまま。
北斗「……」
昨夜の距離。
寝息。
全部思い出す。
北斗「……はあ」
告白はしない。
でも。
確実に何かが変わり始めている。
〇〇の部屋に戻る。
ドアを閉めた瞬間。
〇〇「……はあああ」
その場にしゃがみこむ。
きょも「大丈夫?」
〇〇「大丈夫じゃない」
即答。
風磨「顔真っ赤」
〇〇「そりゃそうでしょ!」
〇〇「なんで私あんなことしてんの!?」
きょも「酔ってたから」
風磨「以上」
〇〇「いやいやいや」
〇〇「限度あるでしょ」
風磨「ないタイプだったな昨日」
〇〇「最悪なんだけど…」
顔を両手で覆う。
きょも「でもさ」
〇〇「なに」
きょも「北斗普通だったでしょ?」
〇〇「……うん」
少し考えて頷く。
〇〇「てか普通すぎた」
風磨「それな」
〇〇「もっと何か言われると思った」
きょも「例えば?」
〇〇「いや…なんかこう…」
言葉に詰まる。
風磨「責められるとか?」
〇〇「そうそれ」
きょも「しないでしょ北斗は」
〇〇「……うん」
少し沈黙。
〇〇「でもさ」
小さく呟く。
〇〇「昨日ちょっと変じゃなかった?」
風磨「変だった」
きょも「うん」
〇〇「だよね」
〇〇「なんかさ」
〇〇「いつもより距離近かった気がする」
風磨ときょもが一瞬固まる。
風磨「気づいた?」
〇〇「いや気のせいかもだけど」
きょも「どう近かった?」
〇〇「んー…」
少し考える。
〇〇「なんか」
〇〇「いつもより、ちゃんと見られてる感じ?」
風磨「……」
きょも「……」
〇〇「あと」
少し間。
〇〇「隣空いてるな、とか言ってなかった?」
風磨が吹き出しそうになるのを抑える。
〇〇「なんなのあれ」
〇〇「普通に意味わかんない」
きょも「分かんないの?」
〇〇「分かんない」
即答。
きょもが小さく笑う。
〇〇「え、なに?」
風磨「いや別に」
〇〇「気になるんだけど」
きょも「そのままでいて」
〇〇「は?」
風磨「今気づかない方がいい」
〇〇「なんで」
風磨「面白いから」
〇〇「最低だね!」
少し笑いが戻る。
でも。
〇〇の中に少しだけ残る違和感。
〇〇「……なんかさ」
小さく呟く。
〇〇「北斗ってあんな感じだっけ」
きょも「どうだろうね」
風磨「たまに出る」
〇〇「へえ…」
完全には分かってない。
でも。
昨日と今朝で。
少しだけ意識に残り始めてる。
ーーーー
一方。
北斗の部屋。
北斗「……」
一人。
静かに座ってる。
さっきのやり取り。
〇〇の反応。
全部思い出してる。
北斗「(気づいてねえ)」
少しだけ笑う。
北斗「(まあ、いいけど)」
でも。
昨日より確実に。
距離は変わってる。
北斗「……」
まだ言わない。
でも。
少しずつ。
隠しきれなくなってきてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〇〇の部屋。
少し落ち着いた空気。
風磨「で、どうすんの今日」
〇〇「どうするって?」
きょも「このまま何もなかった感じでいく?」
〇〇「それしかなくない?」
即答。
風磨「まあそうだけど」
〇〇「てかそれ以外無理」
〇〇「普通に恥ずかしいんだけど」
きょも「まあね」
〇〇「絶対みんないじるでしょ」
風磨「いじる」
〇〇「やめてって言っといて」
風磨「無理」
〇〇「なんで!」
きょもが笑う。
〇〇「ほんと最悪…」
でも少しだけ。
さっきのことを思い出す。
〇〇「……」
風磨「何」
〇〇「いや」
〇〇「北斗さ」
きょもと風磨が少し反応する。
〇〇「ほんと普通だったよね」
風磨「まあな」
〇〇「てか優しくなかった?」
きょも「優しいよ元から」
〇〇「いや、なんか」
〇〇「昨日ちょっと違った」
風磨「どこが」
〇〇「……わかんない」
少し考える。
〇〇「でもさ」
〇〇「嫌じゃなかったんだよね」
きょもと風磨が一瞬止まる。
風磨「へえ」
〇〇「なんか落ち着いた」
きょも「それ言うんだ」
小さく笑う。
〇〇「なにその反応」
風磨「いや別に」
〇〇「え、なに?」
きょも「そのままでいいよ」
〇〇「だから何が」
風磨「気づいたら終わるから」
〇〇「何が!?」
2人とも笑う。
〇〇「ほんと意味わかんない」
少しだけ空気が軽くなる。
ーーーーーー
一方その頃。
ロビーに集合時間。
ジェシー「絶対くるぞこれ」
慎太郎「来るな」
高地「普通に来てほしいけどね」
樹「どんな顔して来るかだな」
その時。
エレベーターが開く。
〇〇、きょも、風磨が出てくる。
全員の視線、一斉に〇〇へ。
〇〇「……なに」
ジェシー「おはよーーー!!!」
慎太郎「おはよーーー!!!」
またもや無駄にテンション高い。
〇〇「うるさい!!」
高地「おはよう〇〇」
樹「よく寝れた?」
〇〇「……普通」
少しだけ目を逸らす。
その様子で。
全員ニヤける。
〇〇「やめて!!!」
即言う。
ジェシー「何が?」
慎太郎「何もしてないよ?」
〇〇「顔!」
風磨「バレてる」
きょもが小さく笑う。
その中で。
少し遅れて。
北斗が来る。
〇〇と目が合う。
一瞬だけ。
空気が変わる。
北斗「……」
〇〇「……」
でも。
〇〇はすぐ逸らす。
〇〇「行こ」
普通を装う。
北斗「……ああ」
何も言わない。
でも。
ほんの一瞬だけ。
北斗「昨日、ちゃんと寝れた?」
ぽつっと言う。
〇〇「え」
〇〇「……寝れた」
少しだけ間が空く。
北斗「ならいい」
それだけ。
周りは一斉にニヤける。
ジェシー「え今の何!?」
慎太郎「自然すぎるだろ!」
風磨「やば」
〇〇「うるさいって」
でも。
さっきより少しだけ。
空気が違う。
〇〇も。
北斗も。
昨日の距離を、少しだけ意識したまま。
何もなかったようで。
でも確実に変わったまま。
一日が始まる。
チェックアウトを終えて。
旅館の外。
ジェシー「いや〜楽しかった!」
慎太郎「最高だったな」
高地「いいリフレッシュになったね」
風磨「色々ありすぎたけどな」
チラッと〇〇を見る。
〇〇「見るな」
即ツッコむ。
樹「まあでも」
樹「いい思い出だな」
ジェシー「特に北斗ね」
慎太郎「一番濃い」
北斗「うるせえ」
〇〇「ほんとやめて」
きょもが少し笑いながら間に入る。
きょも「はいはい解散ムードね」
それぞれ荷物を持って。
帰る準備。
マネの車に乗る流れ。
席決め。
ジェシーと慎太郎は後ろで騒ぐ。
高地と樹はその前。
自然と。
残るのは。
北斗と〇〇、風磨、きょも。
風磨「俺こっち行くわ」
さりげなく別の席へ。
きょももそれに気づいて。
きょも「じゃあ俺も」
ーーーー
結果。
北斗と〇〇が隣。
〇〇「……」
少し固まる。
北斗「……」
同じく。
ジェシー(後ろから)「いいねえ〜」
慎太郎「やばいねえ〜」
〇〇「うるさい!」
しぶしぶ座る。
少しの沈黙。
車が動き出す。
〇〇「……」
外を見る。
北斗も何も言わない。
でも。
距離は近い。
しばらくして。
北斗「……まだ眠い?」
小さく聞く。
〇〇「ちょっと」
北斗「寝ていいよ」
〇〇「……」
少し迷う。
〇〇「いや大丈夫」
北斗「そう」
また沈黙。
でも。
気まずさだけじゃない。
〇〇「……あのさ」
北斗「なに」
〇〇「昨日」
少しだけ言いにくそうにする。
〇〇「ありがとね」
北斗「……」
一瞬止まる。
北斗「何が」
〇〇「そのままにしてくれて」
北斗「……別に」
〇〇「でも助かった」
小さく笑う。
北斗は少しだけ視線を逸らす。
北斗「…寝相悪かったぞ」
ぽつっと言う。
〇〇「え!?うそ!」
ジェシー「何の話!?気になる!」
慎太郎「教えて!!」
〇〇「うるさい!」
北斗は少しだけ笑う。
そのまま。
〇〇が少しずつ眠くなってくる。
コクリ、と揺れる。
北斗「……」
一瞬見る。
〇〇の頭が少し傾く。
北斗は何も言わず。
少しだけ肩を寄せる。
〇〇が自然と寄りかかる形になる。
〇〇「……ん」
でも起きない。
後ろ。
ジェシーと慎太郎が無言でガッツポーズ。
風磨ときょもは気づいてる。
でも何も言わない。
北斗は前を向いたまま。
北斗「(これくらいならいいだろ)」
小さく思う。
隣には〇〇。
静かに寝てる。
触れない距離から。
ほんの少しだけ近づいた距離へ。
告白はしない。
でも。
確実に距離は縮まってる。
帰り道。
静かな時間の中で。
2人の関係も、少しだけ変わっていく。