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集落の広さは普通の学校のグラウンドよりも4倍くらいか。
私たちに気が付いた6人いる門番のように突っ立っている一人が歩いてきた。
そのいでたちは、寒いのに上半身は裸、下は動物の毛皮を継ぎ合わせたズボンを穿いている。女性は上半身にも動物の毛皮を巻いているようだ。
何故か、その体格はムキムキなのだがとても貧相に思える。
「あなたが、夢の旅人ですね」
部族の男が言う。日本語だ。
「ええ。そうよ。あなたは?ここは本当に南米なの?」
呉林が警戒しながら前へ出た。
「私はジュドル。この村の二グレド族の蒼穹の戦士。そして、ここは確かに南米です」
「蒼穹って、空のことよね。でも、こんなに寒いのに南米だなんて」
そのジュドルという青年は近くで見ると陰鬱な顔をしている。
「……この村はもう何年も朝が来ません。そのせいで、猛獣がよく村を襲い、寒さのせいで果実や木の実の食べ物はなかなか採ることが出来なくなりました」
「そんな……酷い……話ね……。私たちにこの原因は何だか知っていたら教えてください。私たちが何とか出来るかも知れません。きっと、ここにいる赤羽さんが何とかしてくれますから」
呉林は私を指差した。私はこっくりと頷いた。
今も生きていたいという気持ちだけで、ここまで来たんだ。
「南の村の巫女。カルダのせいです」
ジュドルは苦悶の表情を見せる。
「止めてほしいとか話に行かないの」
「カルダの村はとても強い戦士に守られて、近づいたものは二度と戻ってきません。カルダの村は毎日、周辺から幾度も生贄を探しているんです。この村からもかなり……生贄が出てます。もう村の人たちは安眠できません」
呉林は血の気の引いた顔をしている。
「何故、生贄が必要なのかしら?」
「カルダの木で夢の反乱を起すため……」
「カルダの木?」
「その木の大きさは? どれくらいなんですか? ここからじゃ見えませんが」
渡部の問いに青年は首を伸ばし、
「大昔はこの南米と同じくらいだったようです。それより前の大昔は世界と同じだったと言われています。でも、今ではカルダの集落と同じくらいの大きさです」
男は、年は20代くらい。何故かはきはきと日本語を話す。ここが夢の世界だからだろうか。私はここに来て、敵ではなくまともに話せる人物に出会い。緊張する心に少々、嬉しい灯火が付いた。でも、これから私たちはどうなるのだろうか。