「……え」
いつもの花畑
そこにクロエさんは居なくて、居たのは
『待っていたぞ、娘よ』
父親とその護衛18名
「……何故貴方が?」
『黒髪の魔人とやらに告げ口されてな。嘘かと思っていたが、本当だったとは……』
あいつ、騙しやがった
きっと私を殺すためだけにわざわざこんな事を
しかも、自分で手を下すんじゃなくてこんな回りくどいやり方で
本当クズなやつね
『精神魔法を解除したのだな』
「ええ、手こずりましたが」
『では……』
『貴様の体力を消耗させ、殺すとしよう』
その瞬間大量の火の玉が私に飛んで来た
炎熱魔法に炎熱魔法は効きにくいから、もうこれは避けるしかない
消耗戦ってことか……面倒くさいな
花畑もあるから結界張りつつってのがかなり厄介、魔力も削られるし
「……ふ〜…っ」
『どうした、もう限界か?』
「いいえ、まだまだこれからです」
『そうか、なら……』
『背後も気を付けておくんだな』
そう言われた瞬間
腹部に熱と張り裂けるような痛みが沸いた
「~~~~~ッ!?」
『お嬢様、すみません
命令なので』
「おとうさま……ッ!つくづく思いますがッ容赦ないですね…ッ…!」
『慈悲なんぞ今の貴様にはあるまいよ』
『おい、お前
そのまま刺し殺せ』
『はい、ご主人様』
「……ッ」
もう諦めることにして
目を閉じてみた
だけどいつまでたっても痛みが来なくって
もう死んだのかなと思って目を開けてみたら
今となっては見慣れてしまった感電した生物
恐怖に引き攣る顔
そして、濡れた黒髪の善良な夜叉
「楽しそうなことしてるじゃない
私も混ぜなさいよ、クズ野郎共」
「……クロエッさん…!」
「アリーシャ」
「ごめんッなさい、酷いこと言って……ッ」
「いいのよ、アリーシャが無事なら」
『偽善者め、そこまでして構うとは人間も暇なものだな』
「娘の信頼も得れなかった批判ばかりが募る魔貴族様が何の用?1人で何を言っているのかしら?」
『……貴様、覚悟しておけよ』
「こんな底辺の煽りで反応するなんて案外クズにもプライドがあるじゃない」
『「斬撃の火風」』
「『雷神天鼓』」
稲妻と炎熱のぶつかり合い
数で見れば圧倒的なのはお父様達、そりゃ側近も含めていますから
だけど今圧倒してるのは
『……くッ…』
「あらどうしたの?もう魔力が切れかけているのかしら?」
クロエさん
相変わらずとんでもない魔法を使う
『……やはり貴様は危険な存在だったか…ッ…!』
「そうね、私の国を滅ぼしたのも貴方だもの。殺さなくて後悔したでしょう
ざまあみろよ、魔貴族が」
『そうだな……今の貴様を殺す事は不可能に近い……』
『だが!犠牲を払う事で殺す事が出来る!』
「……!まさかだけど…ッ」
『さぁ!我が同胞達よ!
その魂を捧げッ悪魔を殺せぇ!』
「『結界魔法』!」
クロエさんが突然私に結界魔法を張った
「クロエさん!?なんで……」
「いいから魔力を消して!!!
きっと、アロンドラ家全員の魂を使って私を殺す気よ……ッ!」
「え!?」
慌てて魔力を消す
どうやら私は死ななかったようだ
どんどんとお父様の側近が倒れていく
お父様自身もふらついている
『「魂の豪炎痕」!!!』
「……ッ! 『天明雷迎』!」
『無駄……ッだ…お前もすぐ…ッ…死ぬことに……!ふはははは……ッ!あははははッ!』
その言葉を残してお父様に雷が降った
「……死んだわね」
「あッあの……!クロエさ_」
「アリーシャ、急でごめんなさい」
「別れてちょうだい」
突き付けられたくなかった、絶望の言葉
それが今目の前にあった
「……ッえ?」
「私はそう長く生きられないから、お願い」
「待ってッ!どうしてそんな……ッ!」
「あの攻撃は対象の寿命を4分の3奪う攻撃、それを食らった私にもう生きる時間はない」
「そんな…ッ…」
「だから、人間と付き合ったなんて言うレッテルが貼られる前に別れて。お願いだから 」
死ぬ寸前の人間の最期の願いだ
だけど……
「……そんなの関係ないです
私はそんなレッテル貼られてももういいんです」
「分かってるの?この先どんなことがあるかわかったことじゃないのよ?」
「いいんです、私は…… 」
「クロエさんと一緒じゃなきゃ絶対嫌なんです」
「……はぁ…もう勝手になさい」
「んふふ……」
「何笑ってんのよ」
「いや……」
「ほんと……ツンデレは変わらな…」
どさっ
その音といっしょに意識が消えた
起きたらクロエさんはいないかもしれない
だけどもう起きれなかった
寝てる間、額に何かが触れた気がした
「嘘でしょ!?今の言いかけのまま寝たわよこの子!?」
ほんと何考えてんのか……検討もつかない
「てかこいつツンデレって言ったよな?絶対起きたら許さねぇ」
……ま、その頃に私が生きてるかなんて私にはわかんないけど…
「……居るんでしょ、出てきなさいよ」
『バレましたか』
影から出てきたのはスラムのボス
「盗み見してたの?悪趣味ね」
『いやはや、混ざっては悪いかと思いまして』
「瀕死の奴いたわよ!?」
『だからこうして回復魔法をしに来たのではないですか』
「ならぱっぱと傷口塞いでちょうだい」
そう言って膝でねているアリーシャを差し出す
この人……スラムのボス・シュルガさんは信用できるし、戦って勝てる相手では無い
その位私みたいな馬鹿でも分かる
『傷口の縫合と止血を終わらせました。彼女が 目覚める頃には完治しているはずです』
「そ、ありがと」
『貴女も回復しましょうか?』
「え?」
『貴女にかけられた魔法はいわば呪い……解呪法ぐらい知っています』
「……」
『どうです、解呪しますか?』
「いや、いいよ
もう疲れちゃった、復讐も生きるのも」
『そうですか、そしてもうひとつ聞きたいのですが……』
『悪魔と契約しましたか?』
「……」
『貴女の異常なまでの強さはその年齢ではおかしい。そして残りの寿命も
もしかして、寿命を元に力を得たのでは無いですか?』
「……なんでこうバレるかな
ほんと何者なのよシュルガじいさん」
『ほっほっほっ、ただの老いぼれですよ』
「……そうよ、私は魔貴族によって居場所を無くされた。その復讐心につけ込んだ悪魔に幼い頃契約された」
「だから私の寿命は18とかそこら辺だし、無理もしてたからもう今年ぐらいには死ぬ予定だったのよ」
『それなのに、アリーシャとの交流を選んだ』
「ええ、堕ちきった魔貴族は殺す以外ないけど、まだ堕ちてない魔貴族なら矯正できると思ったの」
「そして、その読みは当たってた。私の短い生涯のうち最大の功績ね」
『そうですね、偉大な功績です』
「……ちょっと、用が済んだなら帰ってくれない?死に様を見たい訳?」
『……いいえ、友がそれを望まぬなら』
「なら帰ってちょうだいな」
『はい、分かりました』
「……あ!墓ここに建てといてね!?頼んだよ爺さん!?」
『分かってますよ』
「爺さんも帰ったし、あとはもうここで生涯を終えるだけかな」
ふと膝元の寝顔を見てみた
「人が死にかけてる時にすやすや寝てんじゃないわよ……もう」
魔貴族らしい角はあれど、寝顔は人間の少女と変わらない
平和に浸透したような顔をしていて
とても人間らしいと言える、顔
「ほんっと、可愛いんだから」
そう言って
額に最初で最期の口付けを落として
目を閉じた
(お母さんとお父さんはそっちに居るかな?)
(分かんない、興味もないし)
(だけど会えたら責めないで欲しいな
私は、頑張ったんだから)
さようなら、アリーシャ
さようなら、美しき愛の世界
コメント
11件
今回もめちゃくちゃ良かったよ!!!!! あー…ww最高だ…えへへへ…(笑うな) 凄く最高で語彙力があぁぁぁぁぁぁ(?) あ、悪魔と契約しても大丈夫!!! 悪魔は後で◯しておくからさ!! まぁ、小さい子供を騙すのが 凄く嫌いなだけだけどね☆(じゃあ辞めろ) 次回も楽しみに待ってるね!!!!
グッッッ…ん”ッッ…(尊い 神 ハピエンへの淡い期待などの籠った悶え) 口じゃなくって額にするのがまた…ッ…(尊)
アァァァァァァァァ!!!! ここからハピエンになりませんか⁉︎