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お父さん、ごめんなさい。
こんな、悪い娘で…。
朝の日差しがカーテンの隙間から差し込む。鬱陶しいほど明るく照りつける太陽が、私はあまり好きじゃない。私は重たい身体をどうにか起こし、ベッドからぬるっと立ち上がる。そのとき、たまたまある写真が目に入った。私が小学校低学年の時の写真だった。そこには私の父のテミール・ロワンソンと、私、テミール・マリーが笑ってピースサインをしている。背景は家の近くの公園。
「懐かしいな。」
私はそう呟いて部屋を出た。素足が階段を下る音がぺたぺた。ぺたぺた。ふらふらと動く足でぺたぺた。ぺたぺた。素足から出る音が柔らかく私の耳に届いた。私は、この音がなんとなく好きだ。もしかしたら、雨音に似ているからかもしれない。その時、低く柔らかい音でおはようという言葉が聞こえた。
「おはようございます。お父様。」
そこには、優しく微笑む父の姿があった。父は私の髪をみてクスッと笑った。
「かわいい寝癖がついてる。」
父はそういって私の寝癖に触れる。
「すみません、お見苦しい姿で…。」
「いいんだよ。朝食まで時間がある。髪を梳かしてやろう。」
そういって、父は私を近くのドレッサーにぽすんと座らせた。そして、ドレッサーの上にあったくしで丁寧に私の髪を梳かしていく。大きい父の手が私の頭に触れるその時、私は思わず口角を上げてしまう。父はそんな些細なことに気づかずに、私の髪を梳かした。
「よし、できた。」
私はドレッサーの鏡を見つめる。首を動かすと髪もさらさらと動く。
「ありがとうございます。お父様。」
私は振り返って父の表情を見ながらそう伝えた。
「ロワンソン様。朝食の準備ができました。」
一人のメイドがこちらを見ながら言う。スワン・ワトソン。この家のメイドの一人だ。
「マリー、行こう。」
「はい。」
ー続くー
ご視聴いただきありがとうございました。