テラーノベル
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食卓につくと、そこには目玉焼きの乗ったパン、カリカリに焼かれたベーコン、照明に照らされるトマトの兄弟があった。
「美味しそう…。」
私はそう呟いてから手を合わせ、いただきますと言った。パンに手を添えて口に運ぶと、口内に卵の黄身がとろぉっと広がる。ザクザクと歌うパンは良い焼き加減だった。私は目をキラキラさせながら口を動かした。父もパンを頬張った。
「ご馳走さまでした。」
私と父が手を合わせて言った。
「マリー、そろそろ高校へ行く準備を。」
「はい。」
私は返事をして少し駆け足で自室に戻る。スワンと父は微笑みながら、私を見守った。自室に入り、クローゼットの中からいつも着ている制服を取り出す。
「マリー、準備はできたか?」
ドアの外から父の声がした。
「あ、少々お待ちくださいっ!」
私はそそくさと制服に着替える。着替えを終えドアをあけると、そこには、スーツ姿のロワンソンの姿があった。
「お待たせしました。お父様。」
「じゃあ、行こうか。」
「はいっ。」
父の車に乗ると、車が静かに発進する。車内には父が好きな洋楽が流れている。
「それでは行って参ります。」
「あぁ、怪我のないようにな。」
私は校門の前で車から降り、そして父に向かって一礼をした。すると、背後から甲高い声が聞こえた。
「ごきげんよう、マリー様!」
そこにはスミス・セローナがいた。セローナは小学生の頃からの仲だ。
「ごきげんよう、セローナ様。今日も元気ね。」
「それはもう元気よ!今日はなんてったって音楽の授業があるのですからっ!」
セローナは昔から音楽が大好き。ピアノのお稽古、ヴァイオリンのお稽古、ハープのお稽古にいくほどの楽器好き。
「あら、セローナ様のクラスでは今日音楽の授業があるのね。でも、数学の授業もあるのではなくって?」
「そ、そのことは今言わないで頂戴っ!」
数分後、自分のクラスの教室に入り、席に座る。空は水色の絵の具で塗られている。雲一つない空を見つめながらホームルームの時間まで経つのを待った。数分後、担任のジョン先生が教卓の前に立つ。
「皆さん、席に着いて下さい。」
みんながそそくさと席に座る。みんなが席に着いたのを確認すると、先生は入り口のドアを見つめてなにかの合図を出した。
「今日から皆さんのクラスに一人の生徒が加わります。」
クラスがざわめき始める。その時、入り口のドアがスーッと開く。そこには、170cmくらいの細身の女がいた。細身の女がジョン先生の横にたどり着くと、こちらを向いて声を出した。
「ベルモンド・パーソンです。これから、宜しくお願いいたします。」
女性平均よりも少し低く、ハスキーな声。心地よく響くその声に私は目を丸くした。パーソンが深くお辞儀をすると、ジョン先生がパーソンに指示を出す。
「パーソンさんは、マリーさんの後ろの席に座っていただこうかしら。マリーさん、手をあげてくれる?」
「あ、っはい。」
私はパーソンにわかるくらいの高さで手を上げた。するとパーソンがこちらに近づいてくる。私は心臓をどくどくと震わせながら言った。
「て、テミール・マリーです。困ったことがあったら聞いてくださいね。」
パーソンは少し目を丸くして、微笑みながら言った。
「あら、ご親切にどうも。」
そういって、パーソンは胸に片手を当て、スカートの裾をもう片手で持ち、礼をした。 そのとき、私の心臓がさらに震えた気がした。
ー続くー
ご視聴いただきありがとうございました。
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