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テレトトトトン。テレトトトトン。
「っ、はっ!」
スマホのアラームで飛び起きる鳥愛(とあ)。
「っ…あぁ、夢か」
いつもならスマホのアラームより早く起きてスマホのアラームを解除する鳥愛。
しかしその日は珍しくスマホのアラームで目覚めた。
「あぁ…とんでもない悪夢を見た」
いや、悪夢か?
と悪夢とは言ったが、イケメンから告白される夢。一概に「悪夢」とは言えなかった。
しかし、鳥愛の愛する「変わらぬ日常」が壊れ始めた夢。
50パーセントの悪夢、50パーセントの幸せな夢と言えるだろう。
ベッド上部のスマホを置いている部分に置いているメガネを手に取り、かける。
「…ん?」
なにか違和感がある。洗面所に行って鏡を見てみた。
「…。ス…スペアのメガネだ…」
洗面台の端に手をつき、項垂れる鳥愛。
「あれはやっぱり夢じゃなかったー」
…
明日から、ほんの少しだけ変わったけど、基本的に、私の愛する変わらぬ日常が
「先生」
呼ばれて振り返る。そこにはアイビルくんがいた。アイビルくんのことを考えていたら本人が現れた。
運命?
なんて、バカバカしすぎる考えを振り払うように頭を振る。
「アイビルくん、どうしたの?」
「家、この辺なんで」
「あ、そうなんだ?近いんだね」
「先生…」
「ん?」
「オレ、先生のこと好きです」
「…」
あまりに唐突なことすぎて放心する鳥愛(とあ)。
「…へ?」
変な声が出た。
「オレ、先生のこと好きです」
「…うっ…うえっ!?」
2回聞いたところでやっと飲み込めた。いや、正確には飲み込めてはいない。
あまりに大きすぎる事実が喉につっかえている。
「…あっ…いや、ね?…」
あまりに動揺してアメリカの長距離トラックのダッシュボード部分に置いてある
頭の大きな首振り人形、ボブルヘッド人形のように小刻みに顔を振るわせる鳥愛。
その微細な振動でメガネが鼻からずれ落ち、地面に落ち、落ちる瞬間に拾おうとして前に出た鳥愛。
しかし鳥愛はメガネをかけているだけあって、目が悪い。
落ちるなにかを認識できても空中でキャッチするなんて芸当はできない。
バキッパリンッパリジャリ。
「…え」
「あ」
キャッチできないどころの騒ぎではなく、思い切り踏み締めた。
アイビルがしゃがみ込み、レンズが割れ、フレームも変形したメガネを拾う。鳥愛もしゃがむ。
「すいません。オレのせいで」
「あ…。いや、…ううん。全然。アイビルくんのせい…では、ない…から」
動揺しまくっている鳥愛。
「…ねっ?あのぉ〜。そお。手とか切っちゃうと危ないから」
とアイビルの手からメガネを取ろうとする。
「大丈夫です。それに先生見えないですよね?見えない状態でガラス片触る方が危ないです」
ごもっともすぎる指摘。立ち上がるアイビル。
ボヤッっとした視界でもアイビルが立ち上がったのはわかったので鳥愛も立ち上がる。
「先生、視力いくつですか?」
「0.1…あるかないか…」
「じゃあ家まで送ります」
「は?」
「いや。オレのせいで先生の目奪っちゃったんで」
「いや、目は奪われてはいないけど」
「とにかく、手、出してください」
「手?」
鳥愛が右手をふらぁ〜っと出す。アイビルの左手が鳥愛の右手を包み込む。
「…ふぇ?」
また変な声が出た。
あぁ〜…ヒンヤリして気持ちいいなぁ〜
なんて脳が勝手に現実逃避を始めた。
「家どっちですか?」
「あ…いや、ダメだよ!」
と現実に戻った鳥愛はアイビルの手と自分の手を優しく離す。
「私はアイビルくんの担任教師。アイビルくんは私の生徒なんだよ?」
「はい」
キョトンとした顔をするアイビル。
「うん。表情わかんないけど今の声の感じでわかった。「だからなんです?」みたいな顔してるでしょ」
ご名答である。
「え。イギリスでは教師と生徒の…なに。そーゆーのは当たり前なの?」
そんなことない。
「とにかくダメ。1人で帰れるから」
と言って歩くものの、めちゃくちゃ怖い。
視界がボヤけたまま外にいること自体、人生で片手で収まる数ほどしかない。
まるでいいカメラで撮った写真のように景色がボヤけている。
「先生」
「ダメだって。そんな誰に見られてるかわかんないんだから」
そういう問題ではない気もするが。
「今はそーゆーの大変なんだからね?体罰なんてもっての外。
ちょっと注意しただけでも注意の仕方がキツいだのなんの。
だからこんな、生徒と手を繋いでる教師だなんて知られたらなにを言われるか…。考えただけでも恐ろしい…」
いつの間にか教職への愚痴を漏らす鳥愛。
「じゃあ」
アイビルが鳥愛の右手を掴む。
「だからダメだって」
アイビルは鳥愛の右手を自分のパーカーの背中側の裾に誘う。
「服掴むのはオーケーですか?」
鳥愛は少し悩んだ。悩んだが、どっちにしろ見えなくて、恐らくこのままでは帰れないのは事実だし
そう思い、恐る恐るアイビルのパーカーの裾を掴んだ。
「オーケーということで。じゃ、道案内お願いしますね。オレ、先生ん家(ち)わかんないんで」
「…うん」
そこから、どこそこの道を右とかコンビニの横断歩道を渡ってとか
道を説明しながらアイビルのパーカーの裾に掴まりながら歩いていった。
アイビルはその間もずっとジェントルマンだった。ちょっとした段差でも
「先生、2歩ほど先にちょっとした段差あるので気をつけてくださいね」
とか自転車が来たら右腕を後ろのほうに伸ばし、自転車から守るようにしてくれた。
鳥愛の住むマンションの下に着いた。
「ありがとう。助かったよ」
鳥愛がアイビルの「Even the strongest blizzards start with a single snowflake.」という文字と
雪の結晶が描かれた白いパーカーの裾から手を離す。
「いえ。元はと言えばオレが驚かしたのが原因ですし」
「いや…。うん。うん…」
オレ、先生のこと好きです
頭の中でそのセリフが流れる。
「いや。アイビルくんは悪くない。うん。大丈夫」
「じゃ。先生何階ですか?」
「…ふぉ?」
本日何度目かわからない変な声が出た。
「先生の部屋。何階ですか?」
「…いや…いやいやいやいや!それはダメよ!全然ダメ!うん。全然ダメ!大アウト!」
大アウトだった。
「生徒の服の裾掴んで歩くのもギリよ?それが教師の家に生徒と入っていく?アウトアウト。
言い逃れできないアウト。週刊誌も生唾ものの大アウトよ」
「でも先生、目見えないですよね。危ないですよ」
「大丈夫。さすがにマンション内に入っちゃえば大丈夫だから」
「そ、う、で、す、か」
「うん。じゃ、ありがとね。また明日、学校でね」
と言いながら恐る恐る、慎重に慎重に
「そろぉ〜り。そろぉ〜り」
という声が聞こえてきそうなほどゆっくりとエントランスへ向かう鳥愛。
「心配だなぁ〜」
と呟くアイビル。アイビルは鳥愛がめちゃくちゃゆっくりエントランスに入って
バッグの中から鍵を取り出し、鍵穴を見つけるため
部屋番号を押すパネルに顔を押し付けるんじゃないかというほどに
顔を近づけ、鍵を差し込み、ガラス製のスライドドアが開いて
中に入って、ポストは諦めてエレベーターホールに消えていくまで見守った。
アイビルは帰ろうと思い、踵を返した。
「あ」
手に持ったままのメガネに気づいた。
「このまま…返すのも…なぁ〜」
ポケットに入れようと思ったが
「コンビニでなんか買って、袋に入れるか」
と手に持ったままコンビニへと向かった。鳥愛はエレベーターから出て、壁に手をつき
角だなとわかったら、ドアを何個分というのを頭の中で考え、ボヤッっとした視界の中ドアの数を数えていく。
「ここ…かな?」
めちゃくちゃ近づいて、めちゃくちゃ背伸びをして表札を見る。
奥樽家(オタルゲ)という苗字はボヤッっとした視界では潰れて見える。
それでも3文字。ボヤッっとした視界でも画数が多くて文字が潰れて見えて、なおかつ少し長い。
「ここだ」
それで自分の部屋だと判断した。鍵穴に目一杯顔を近づけ、鍵穴を確認して鍵を差し込み
回して回って、自分の部屋だと安心して扉を開ける。
手探りで明かりをつけ、靴を脱ぎ、そこから手探りでスペアのメガネを探し、かける。
「ふうぅ〜…」
一安心。したものの一安心したらしたで先程の出来事がグワァーっと蘇ってくる。
生徒に告白されて、裾掴んで歩いて、家まで送ってもらって。
あれ?よく考えたらヤバくね?
と思ったものの、よく考えれば考えるほど沼にハマり、これは現実じゃないんじゃないかと思うようになって
部屋を暗くしてベッドに入っても、夢見心地でいた。
…
「あぁ…。スペアのメガネってことはあれは現実だ…」
と呟くのと同時にアイビルの顔が思い浮かぶ。
オレ、先生のこと好きです
「はぁ〜い!!行く準備しまぁ〜す!!」
頭の中のアイビルの顔とセリフを振り払うように大きな声を出して歯を磨き、顔を洗って
朝ご飯を食べて、着替えて、軽くメイクをして、バッグを持って家を出た。
駅までの道中、そして電車に揺られながら、駅から高校までの道中
ずっとワイヤレスイヤホンで好きなアーティスト「Talkative eye」や「UNDER THE MOONLIGHT」
「宝背亀(ホウセキ)」「Always a game players(通称AGP)」「off world laughing(通称OWL)」
「A childish adults」「Lighting Rights」
「Shadow tickets」などの曲を聴いていたが、頭の中のどこかにアイビルの顔と
オレ、先生のこと好きです
というセリフがあった。無意識でいつものように
職員室前のホワイトボードの自分の名前のプレートを「職員室」という部分に置いて
「おはようございまーす」
と言いながら入った。他の先生から
「おはようございまーす」
と返ってくるが右から左。ぽけーっとしながら席へ。
「…ぱい…んぱい…先輩!」
少し驚きつつも我に戻る。
「鳥愛先輩!」
家庭科教師の天美(あみ)が呼んでいた。
「あぁ!はい!」
「どーしたんすか?おはようございます」
「どーもしてないですよ。おはようございます」
「どうもしてないことはないでしょ。メガネ、変えたんすか」
「あぁ」
と言いながらかけ慣れないメガネを触る。
「スペアのメガネ」
「あぁ。壊れちゃったんすか」
どうして壊れたかという嘘の経緯を考える鳥愛(とあ)。
「あ、朝落として踏んじゃってね」
「あらら。足大丈夫でした?怪我とかしてないです?」
「あ、あぁ!大丈夫大丈夫!ギリセーフ」
「おぉ〜。それならよかった」
笑顔の天美(あみ)。笑顔を返しながら
あぁ、そっか。朝起きてメガネ踏んだってなったら、そりゃ室内だからだいたい裸足よな。
ソックス履いてたとしてもガラスは貫通するし、そりゃ心配されるわ。危ない危ない
自分の嘘には詰めが甘いことを痛感した鳥愛。
「おはよーございまーす!」
そんな考えを切り裂くような元気な挨拶。数学科教師の我希(わき)が職員室に入ってきた。
「奥樽家(オタルゲ)先輩、兄邏(けいら)先輩、おはようございます!」
「おはよー」
「おはよ」
自分のデスクのイスに腰を下ろす我希。
「奥樽家先輩、兄邏先輩、寿司沢さん見ました?」
「見てないって」
「右に同じくー」
「じゃあ」
「ENINSHOW(イーニンショウ)さんも見てない」
「同じく」
「なんでぇ〜ですかぁ〜」
ガーンと落胆する我希。
「時間がない」
「右に同じく」
「あ、じゃあ!」
ピーンと元気になる我希。
「NSSPさんは?」
「見てない」
「私も見てない。でも知ってる」
「おぉ!マジっすか!」
「人気よね。界隈で」
「大人気、大人気!大好き大好き。面白い面白い」
大事なことなので2回言いました。
「あとはアプさん」
「アプさん?」
「聞いたことないなぁ〜」
「ゴージェちゃんは?」
「聞いたこともない」
「私ーも知らないなぁ〜」
「友と友のゲーム会」
「知らん」
「聞いたことはある。見たことはない」
「タマタのたまたまうまくいってるチャンネル」
「ごめん。全然知らない」
「私も知らないわ」
「KEMAさん」
「ケマさん?」
「1ミリも知らんわ」
「じゃあ、派手髪ひょっとこの翔大は?」
「知らん」
「見たことないけど、知ってはいる」
「兄邏先輩はまあまあ知ってはいるんすね」
「うん。寿司沢さんも昔からいらっしゃるよね。ENINSHOWさんもNSSPさんも結構前からいらっしゃる。
友と友のゲーム会はいろんな人輩出してるチャンネルよね。
アプとゴージェ?ちゃん?あとタマタのたまたまうまくいってるチャンネル?
あとKEMAさんと派手髪ひょっとこの翔大さんは…若手?」
「詳しいじゃないっすかー。寿司沢さんは獣が踊るシリーズで有名っすね。
獣が踊るシリーズって緻密なストーリー。ま、棒読みが踊るって言われちゃう人もいるけど
でも、声優さんも豪華、キャプチャーモデルが本物の俳優さんで
その俳優さんたちも信じられないくらい豪華で、大人気シリーズだから
再生数伸ばそうって実況してる人が多いんですけど、寿司沢さんは、もう、獣が踊る愛なら圧勝!
キャラのボイスと被るときとかあって静かにしてほしいっていう意見もあるけど、自分は大好きです!
デュルルルルルっていう抑え気味の笑い声が苦手とか滑舌悪いって意見もありますけど
でもそこは個性だと自分は思ってます。あと足短いのも可愛らしいポイントっす。
そしてENINSHOWさんは某スネークの声優さんに似てる弟さんと仲良くて
小説家さんとしても活動している、友達の定義という言葉が大地雷の
ア○タッチャブルの柴○さんに似た人がいたりとか
出汁(ダシ)を出汁(でじる)って読む、独特な語録を持ってる唯一の既婚者の人とか
メガネニット帽とか、個性豊かな3人組で、ま、4人とか5人でやるときもあるから
サブメンバーみたいなポジションの方もいるんですけど。NSSPさんは、ね?皆さんお馴染みの」
鳥愛(とあ)は顔を横に振る。それを見て天美(あみ)も顔を横に振る。
「平成最後のさいたまスーパースタジアム、通称たまスタの平成最後のたまスタアーティストなんですよ」
「マジか」
「あぁ聞いたことあったわ。無観客ライブで投げ銭1億ね」
「あぁ!そのグループなんだ?そのニュースは聞いたことあったわ」
「そうなんすよ!もう、ファンからは大いに愛されていて
なんというか、こう、大人になっても子どもの心を忘れない尊さ?
それを思い知らされるというか、無邪気な感じ?いや、しっかりした大人なんですよ?
皆さん大人としての常識もわきまえてる、非常にしっかりした人なんですけど
でも、こう、小学生の昼休みのような?
小学校、中学生の授業が終わって友達の家に集まってゲームするときのような?
あのかけがえのない貴重な時間を、特別感を感じさせず、あたかも日常のように?
でも、それは特別なことなんだよって思わせてくれるグループというか。
とにかく仲良くて、メンバー同士のイチャイチャみてるとつい綻んじゃうっていうか。
ま、コラボ動画も最近多いんすけど、あんま好きになれないコラボ相手もいるんすよねぇ〜個人的には。
だいたい皆さん、自分が知らないチャンネルで「うわぁ〜またコラボかぁ〜。
正味、NSSPさん単体でいいんだよなぁ〜」と思いつつも、NSSPさんの動画だし。ってことで再生すると
コラボ相手に好感持てて、好きになって「次またコラボしてくんないかなぁ〜」
なんて思うくらいNSSPさんのチョイスするコラボ相手もセンスいいんすよ」
「「へぇ〜」」
としか言えない鳥愛(とあ)と天美(あみ)。
「で、アプさんね。ニカニカ動画っていう、まあNSSPさんもそこ出身なんですけど
MyPipeの前身みたいな動画投稿サイトがあるんすけど、あの歌ってみたとかそーゆー系の元祖ですね。
で、NSSPさんとアプさんはそこでの筆頭というか
MyPipeでも大人気で100万人越えなんすけど、チャンネル登録者数。
自称イケメン実況者で、あ、顔出しはしてないんすけどね?で、いろいろ
まあワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)の動画が人気かなぁ〜、やっぱり。
めちゃくちゃワメブロが人気な時代に、あえてなんの知識も入れずに
初見プレイする様子がまあ、おもしろくて。自分も何回見たことか。脱出ゲームも代表作の1つかな。
あんまり否定とかしない方で、声も高くて、でもキンキンしない。聞き心地いい声してるんすよ。
でも、トーク内容とかから感じる、まあまあな歳上感。最近動画投稿されなくて、ファンは生殺し状態ですね。
で、ルーキー組。まずはゴージェちゃん。
ゴージェのゲーム実況チャンネルっていう激シンプルなチャンネル名ですけど
登録者数は70万人越え!ハネたきっかけはまだ無名も無名の頃に
プロFPSプレイヤーのストリーミング。ま、生配信ですね。
そのプロの生配信の裏でゴージェちゃんも生配信してて
たまたま、マジで奇跡だろうなっていうタイミング、ほぼ同時。
なんならゴージェちゃんのほうがコンマ数秒早かったレベル。
プロも驚く神プレイを素人のゴージェちゃんとプロのプレイヤーが同じタイミングでして
ネット界隈でざわついて、そのプロのプレイヤーの生配信見てた人らがそのプレイを見にきて
「おぉ!ガチだ!奇跡!」「え。ガチ同じタイミングじゃん」
「んで、上手いかと思ったらなんならオレよりへたww」とか「へただけど楽しそうさはプロレベルw」とか
賑わって一気に人気出たチャンネルですね。あ、ちなみに女子です」
「あ、女性なんだ」
「あ、それは知らんかった」
「同性って聞くと見たくなりますよね?でも、ま、女子かつ、声も可愛いんで、男性視聴者が多い気がします。
でも、生配信で男の人の声が入ってざわついて
コメ欄で「彼氏か?」「誰?」「男の人の声した」っていうのを見たゴージェちゃんが
「あぁ、シャアハウスの住人ですねー」って答えて、それからちょくちょくその男の人の声が入って
しまいにはシェアハウスメンバーと金太郎電鉄の動画出したり
なんか、ま、男女混合版のNSSPさんみたいな感じですね。
個人チャンネルだけど、グループでわちゃわちゃ!みたいな。
で、お次は友と友のゲーム会は友さんのゲーム実況チャンネルなんですけど
チャンネル名の通り、友さんが友さんの友達とゲームする様子を投稿するのが多いチャンネルなんですよ。
んで、海斗さんっていう人が結構な頻度で出てくるんですけど
海斗さんにもファンがつき始めて、というか友さんのチャンネルに出てくる
友さんの友達全員に少なからず、ファンはついてるんですけど
海斗さんは出演頻度が高いので、ファンが多くついて、で、海斗さんも個人チャンネルを始めるっていう。
「カカチャンネル」っていうチャンネル。ゲーム実況チャンネルですけどね。
だから意外と友と友のゲーム会出身なんですって人、ちらほらいたりするんすよ。
そしてタマタのたまたまうまくいってるチャンネル。チャンネル主はタマタさん。
めちゃくちゃ謙虚な人で、バイトしながら実況撮って編集して、生配信もして
めちゃくちゃ努力してる人なのに「いやぁ〜たまたまうまくいってるだけです」って言うんですよ。
ま、それが嫌味だって言ってるアンチも目立つんですけどね。
この人は完全にソロの人で、まあ、たまにコラボしてますけどね?
それこそさっき出た「友と友のゲーム会」の友さんとか
友さんの友達とかとコラボしてゲーム実況したりしてますけど、基本的にはソロ活動の人です。
今やバイト辞めることができて、ゲーム実況1本で食べれるくらい人気になってるんすよ。
そしてKEMAさん。FPSゲームをプレイされてる方で、トップ オブ レジェンズは聞いたことあります?」
と鳥愛(とあ)と天美(あみ)に聞く我希(わき)。
「あぁ。それは知ってるわ」
「私も。なんならやってたわ」
「おぉ。そのトップ オブ レジェンズの激ウマプレイヤーです。
元スナイパーの世界ランカーで。あ、ゲームでですよ?」
「わかってるよ」
「で、基本的にトップ オブ レジェンズの動画をあげてて。
たまに他のFPSゲームもあげてますけど。あとごく稀に実写動画あげてたりもしますね。
実況部屋の紹介とか。ま、個人的には実写とかはどうでもいいんでハズレ回ですけど。
めちゃくちゃプレイはうまいんですけど、笑い方が好きじゃないんすよねぇ〜…。個人的に。
あとたぶんこの人、人に気遣えない人だなって思ったりします。
基本チーム組まないで、ソロで蹂躙する人なんで、野良さんとプレイするときに
「あ、そのアイテム取ってくんだ?」って思ったりもします。なんで基本的に音量ゼロにしてみてます。
声はいいんですけど…勿体無いっすよねぇ〜。たぶん陰キャっすよ」
嫌なことを言う我希。
「そして派手髪ひょっとこの翔大さん。この方は幼馴染を救うために実況始めて
めちゃくちゃ視聴者さんに優しくて、てか誰にでも優しくあろうとする姿勢が素晴らしくて
で、徐々に人気が出始めて、幼馴染で親友のこうきさんを登録者10万人のときから出演させ始めて
20万人のときに正式にメンバーに加えて、50万人のときにこうきさんが個人チャンネルを作って
こうきさんと幼馴染コラボをずっとしてるみたいな
でも翔大さんもこうきさんも個々でゲームしたりもするんですけどね?
その幼馴染親友のやり取りがいい!みたいな感じで
また、こう、改めて人気に火がついてきてるみたいなチャンネルですね。
声だけのファンも多いですね。滑舌も…まあ、良くはないけど悪くはないし
声がガキっぽいんすけど、あ、年齢近そうなんで言葉乱暴になりましたけど
声が子どもっぽいんすけど、そこもファンにはウケてたり。
ラジオでも楽しんでもらって、画面見ても楽しんでもらえるようにっていう。
んで、声だけファンがいるからなのか
ずっと好きだったアメリカンプロレスが今、Ameba(アメーバ) TVでやってるらしくて
そのゲストコメンテーターに呼ばれたりしてるんすよ。本人それ、めっちゃ喜んでましたね。
ちなみにSNSで写真とか載っけてたり、ゲーム実況チャンネルですけど
極たまに実写も出すんすけど、そのときはチャンネル名に恥じない
ひょっとこの仮面を被っての登場なんです。口とー鼻か。にピアスしてて。あ、ひょっとこの仮面に、ですよ?
本人は口と鼻には開けてないって言ってますね。実際は知らないっすけど。
本人は耳にピアスめっちゃしてます。てかオシャレっす。めっちゃ。
派手髪ってついてるだけあって、ピンクと黄色髪なんすよ。めちゃくちゃ派手。でもめっちゃ綺麗。
あと猫好きっすね。生配信とか、たまに「ニャァ〜ン」って声入ると、ファン歓喜。
あと海外育ちなのか、カートゥーン作品、あの世界一有名と言っても過言ではない
仲良くケンカしてほしいネコとネズミとかネコとカナリアの作品が大好きらしいっす。
どうっすか?俄然見たくなったでしょ?」
と力説する我希。その怒涛の情報が、まるで早送りのように聞こえていた鳥愛(とあ)と天美(あみ)。
「須藤くんは暇なの?」
「っすね」
すると笑顔になった我希。
「高校の数学科教師が暇とでも?」
相変わらず笑顔の我希。しかしその笑顔には正気はなく、正気はないが、どこか異様な圧迫感があり
「「すいませんでした」」
と鳥愛と天美は謝った。
「おぉ!アイビール!おはー!」
アイビルが教室に入ると葉道(はど)が元気良く出迎えてくれた。
「おぉ。おはよ。アイビル」
蘭(らん)もしっとりと大人な様子で出迎えてくれる。
「アイビー!おはよー!」
「たかだか1文字を略すな。しかも人様の名前を」
元気良く迎えてくれたものの、蘭に軽く叱られる円(まどか)。
「アイビルくんーおはよー。プロレス見た?」
朝の挨拶の後すぐにプロレスのことを聞いてきた万尋(まひろ)。
「あ、アイビルくん。おはよう」
めちゃくちゃシンプルに朝の挨拶をしてくれる虹言(にこ)。
「アイビル。おはよ」
クールに出迎えてくれる士(つかさ)。
「うん。葉道、蘭、羽飛過(うひか)、雨上風(はれかぜ)さん、遠空田(とおくだ)さん、士。みんなおはよ」
昨日の今日で、もはやいつメンのように迎えられるアイビル。
「雨上風さん。プロレス見たよ」
「お!マジ?」
「スゴいね。雨上風さんが推してたEntrance、めちゃくちゃ華々しいね」
「でしょ?」
「しかも、オレ、初めて見たからわかんないけど
ストーリー性もあって、古参であればあるほど楽しいんだろうなって思ったよ」
「そうなんよぉ〜。わかってるねぇ〜」
「アイビルー」
まだイスに座る前に葉道(はど)が机にベタァ〜と溶けながらアイビルに話しかける。
「なに?」
アイビルはスクールバッグを机の横のフックにかけて、ギゴゴゴゴという音をさせながらイスを引いて座る。
「アイビルはさー音楽なに聴いてんのー」
「音楽?」
「ほらー。教室入ってきたときイヤホンしてたじゃん?なに聴いてんのかなーって」
「あぁ。なんか満遍なく聴いてるよ。それこそ昨日話した「魔性の果実」とか「魅惑の果実」とか」
「あぁ。言ってたね。他は?他は?」
「「ANGEL or DEVIL」とか「I want to be jellyfish」とか
「I sturdy Arrows」とか「FACTs.」とか「House of owl」とか」
「おぉ。バンド系ね。オレもよく聴く」
「他には「Kawaii scene creater」とか「Pawn beats Everything」とか
「Be 銀河」とか「“Reveal the truth”medicine」とか「カラフルなクラゲたち」とか「ToTes」とか
「withLife」とか「RIZZ」とか「Envied model」とか「WESICK」とか「Super visual」とかかな」
「てかさ、アイビル、めっちゃ詳しいじゃん」
「全然全然」
「てかアイビルくんアイドル曲も聴いたりするんだねー」
円が入ってきた。
「うん。別に気に入って聴いてるわけではないけど、テキトーに流行りの曲のプレイリスト聴いてるだけで」
「あぁ、そうなのか。気に入って聴いてんのかと思った」
「あれは?MyPipeから人気出たアーティストとか」
蘭も入ってきた。
「あぁ。あるな。「来世から仕事します!」の「ガチニート」さんとか「True King」のメンバーたちとかね。
「峯音のNEO MUSIC CHANNEL」の「峯音」さんとか「家守と夜守」の2人とかね」
「あと「replicests」とか!私めっちゃ好きなんだよねぇ〜」
ピクッっと反応するアイビル。
「聴かないの?」
と聞く蘭。
「あぁ〜。あんま聴かないかなぁ〜。…羽飛過(うひか)「replicests」好きなの?」
「うん!なんか、なんだろうな。全員声に透明感がある。
なんか、イメージだけど、ガラスみたいな声。あ、なんかイメージ悪いか」
「ガラスみたいな声はなんかキンキンしてそうよな」
葉道(はど)が笑う。
「でもガラスくらいこう、透明感ある声って意味ね?でも当たり前だけどそれぞれ声に個性がしっかりあって
キャラクターも、顔出ししてないけど伝わる感じ?
いっちゃえば色付きガラスみたいな感じ?あとみんなしっかり歌上手いしね」
「そこ大事よな。アイドル的人気なだけで、全然生歌うまくないアイドルとかいるしな。
しかも全然可愛くもない。アイドルのくせに」
「わかるわぁ〜女アイドルでしょ?なんか1曲ハネただけで有名人面してさ?
生歌披露とか1ミリもうまくないってか下手。私たちのバンドのほうがよっぽど音楽として成立してるっての」
「それな!」
葉道(はど)と円の言葉使いが荒くなっていることをお詫び申し上げます。
「まあ、歌うまいのは大事よな」
蘭が軌道を元に戻す。
「そうそう。って感じかな」
円が蘭から視線をアイビルに移す。葉道も蘭もアイビルに視線を移す。
「あ、そっか」
「なんで?」
「いや、歌上手いんだって」
「へただと思う人?」
「いや、アイビルは聴いたことないって言ってたろ」
「あ、そっか」
アイビルは少しニヤけ、口角が自然と上がる。
「そっか。しっかりうまいって思われてんのね」
「ん?」
「?」
「いや、聴いてみよって思って」
「うんうん!聴いてみて!私のオススメはねぇ〜」
という話をしていると鳥愛が入ってきて
「じゃ、始めようかな?」
「起立」
学級委員長が号令をかけてギーゴゴ、ギゴゴゴゴという床とイスの滑り止めのゴムが擦れる音が
教室至る所から鳴り響き、生徒全員が立ち上がる。
「礼」
「「おはようございまーす」」
生徒、恐らく全員のバラバラの、でも少し揃った「おはようございます」が鳥愛に襲いかかる。
「はーい。おはようございます」
「着席」
ギーゴゴ、ギゴゴゴゴという床とイスの滑り止めのゴムが擦れる音が教室至る所から鳴り響き
生徒全員が座る。
「お。鳥愛(とあ)ちゃん、メガネ変えたな」
葉道(はど)が呟く。
「お。ほんとだ」
と葉道の前の席の万尋も呟く。教卓にプリントをトントンと整えるとき
ついアイビルに視線をやってしまう鳥愛。目が合う。アイビルが微笑む。
涼しな水色の髪、水色のまつ毛、そのまつ毛に護られている水色の瞳。
耳たぶにしている雪の結晶のようなデザインのピアスが揺れる。
オレ、先生のこと好きです…好きです…好きです…
「さあ!」
アイビルから目を逸らし、頭の中で鳴り響くアイビルの声を振り払うように大きな声で気合を入れ直す。
「ビックリしたぁ〜。鳥愛(とあ)ちゃんどったん?」
「…いや…あ、てか、鳥愛(とあ)ちゃんじゃなくて」
「「奥樽家(オタルゲ)先生ね」」
鳥愛の言葉に葉道が被せる。
「わかってはいるんだけどねぇ〜」
「どの教科も、恐らく、今日から本格的な授業が始まります。
ちなみに今日の私の授業も教科を使って本格的に始めていきます。
と、いうことで、忘れないうちに、先にプリント配っておきます」
と言いながら各列にプリントを渡していく。前の人から後ろへとプリントが回っていく。
「雨上風(はれかぜ)さん、ありがと〜」
「へーい」
「士、ありがと」
「うい」
「じゃ、今日も怪我なく、問題を起こさず、1日頑張ってください。以上」
「起りーつ」
学級委員長が号令をかけて
ギーゴゴ、ギゴゴゴゴという床とイスの滑り止めのゴムが擦れる音が
教室至る所から鳴り響き、生徒全員が立ち上がる。
「れー」
特に誰もなにも言わず礼をする。そして高校での1日が始まる。