会場の裏にあるテントで番号が配られた、雛千達は番号がどちらとも遅かった。どうやら三海萌仁香は一番手らしい、司会が番号順に女子から前に出るよう促した。三海が前に出るとそこそこの歓声が起こった、多分クラスメイトだろう。どんどん名前が呼ばれてついに綴の番が来る、綴は特に緊張はしていないようださすが綴、いつもの客観的な視点で自信に満ち溢れているように見える。だが当の本人は商品券で何を買おうか、としか考えていないだろう。実際、綴が舞台上に上がると歓声より先に「おぉ」と声も出ないらしい。綴が綺麗でみんなが釘付けになるのは萌仁香も予想付かないだろう、結果発表はミスターコンが終わってかららしい。男子達が呼ばれるほとんどがネタでエントリーしたであろうメンツなのでそこまで歓声はなかったが、同じ学校の端からみたらイケメンな男子旗本駿河(はたもとするが)が上がったとたん女子の黄色い悲鳴が上がった。正直納得だ、黙っていれば甘いマスクでしゃべるとグズ丸出しなやつだ。類は友を呼ぶとはこのことだろう、萌仁香の彼氏と言う噂がある。なんなら事実だろう、何故噂になっているかというと
旗本の女癖があまりにもひどいことだ。萌仁香と付き合ってからは落ち着いたようだか、恐らく旗本と関係があった女子を萌仁香が根も葉も無い噂で追い詰めたのが真相だろう。結果だけいうと、萌仁香を抜かして綴が一位になった。惜しくもミスターコンは旗本が優勝に終わった、その後旗本は綴の元に来て得意気に口説いてきた。その現場を彼女の萌仁香が見てしまった、案の定萌仁香が何か言う前に旗本が「俺の隣には二位のお前より一位の綴ちゃんがいた方がいい。」
等を彼女の目の前で言いはなった、萌仁香は膝から崩れ落ちた。本当に旗本が好きだったのだろう、その光景が目に入っていないかの様に旗本は綴を口説き始めた。綴は面倒臭いと言わんばかりにあくびをした、それを見て少し旗本が苛つき始めたのがわかった。萌仁香は涙でメイクがぐちゃぐちゃになった顔を手で覆いながら走って行った、その瞬間「秘密発見」
といつものポーズで走って行こうとした。だが旗本が綴の手首を掴んだ相当力が強いのか綴が少し痛がっているのがわかった、その状況を理解する前に綴と旗本を引き剥がしていた。旗本はこれに驚きと共に怒りが湧いたらしく怒声を上げながら殴り掛かってきた、綴を庇うことしかできなかったがなんとか綴を逃がすことが出来た。綴は萌仁香が走って行った方向に向かった、旗本が綴を追いかけようとした所を阻止した時に喰らった一撃が重く意識が朦朧とした瞬間、祭りの会場スタッフ達が駆けつけた。旗本は一部始終を目撃され警察沙汰になってしまった、なんとか綴と萌仁香が走って行ったであろう場所に向かった。萌仁香と思わしい声が聞こえてそこに向かった、雛千に気付いた萌仁香が顔を手で隠した。泣いてメイクが落ちたのだろう、綴が駆け寄って来た、頬が少し赤くなっている。「その顔どうした?旗本…ではないよな?」
と問いかけた、答えたのは綴ではなく萌仁香だった。「私が叩いた、ムカついて…だから私が悪い」
綴は「別に構わない」と言うと萌仁香の顔をウエットティッシュで拭いた、最初は嫌がっていた萌仁香だったが綴の説得で渋々拭かれていた綴がこちらにを向き目で訴えて来た。「メイクを萌仁香にして」とのことだろう、仕方なく萌仁香にメイクをしたウエットティッシュで拭いたからか、泣いたからか赤くなっていた。メイクが終わるとどこか不服そうな萌仁香の顔があった、不服そうだがどこか吹っ切れた顔だ。今度は綴の方を向き、勢い良く頭を下げた。「今まで本当にごめんなさい、これから私嫌なことした子達に謝る!まずは円木さんに、ごめんなさい」
綴は「何かされた?」ととぼけているのか本心なのかわからないが言った。萌仁香は苦笑して、「円木さんには敵わないな。」とボソッと呟いた。その後無事にイカ焼きを食べることに成功した綴は甘い物が欲しいとパインアイスを二つ買い、雛千に渡した。「さっき守ってくれたお礼」
綴が少し足を気遣いながら歩き、それを雛千が支える。
普通のパインアイスより酸っぱく感じた。
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