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サイド マオ
ユメへ電話したのは、実のユメの兄だった。名前だけなら、俺も知っている。同い年の、天才だ。
『生徒会長がお前の名前を出していたから、一応連絡した。……すまない。俺は父に逆らえない』
ルネが……?アイツ、なんで……。
いや、分からないふりするな。本当は気づいているくせに。
アイツは、一人で抱え込むタイプだって知っていたのに、何で俺はアイツを放って置いたんだ!
「……クソッ!」
ダンッ、と思い切り殴ると大きな音がして、机上にあったいろいろなものが揺れる。
その音に反応して、怯えたようにトキが少しだけ肩を震わせた。そうだ。トキは虐待されていたから、暴力にも細心の注意を払っているのに。
「……ッ、すまん。ちょっと頭冷やしてくる」
「あ、ぼ、僕のことは気にしないで下さい。今はルネさんのことを考えましょう」
ああ。今俺は、何しても上手く行かない。
グルグルとルネの言った言葉が回って、ずっと頭から離れてくれない。
『こんな意味のないこと、いつまで続けるの?』
『俺らに出来ることなんて、限られてる。このままじゃこれから先、絶対行き詰まる』
『社会が俺らを許さない。だから、俺たちは“モンダイジ”なんだって、マオも分かってるでしょ?』
……ああ、クソッ!自分に腹が立ってしょうがない!
「……っ、みなさん!」
ユメが立ち上がって、勢いよく頭を下げた。
「この度は、あたくしの身内が自己利益のために迷惑ばかりかけて、本当に申し訳ありませんでしたわ!」
「いや、ユメは悪くねぇよ!」
「そうね。でも……ユメには悪いけど、娘を捨てて、都合が悪くなったら連れ戻そうとして、挙げ句の果てに他人から臓器を奪うって、ソイツ本当に人間なの?」
アミ、言い過ぎだ。とは言えなかった。実際、そう思ってしまったんだ。俺も、きっとみんなも。
「……ルネを攫うぞ!」
キノがそう言って帽子を手に持った。その帽子は、ルネが置いていった橙色の帽子だった。
「俺は、ルネに伝えなきゃいけないことがあるんだ!」
……もう、ダイチの代わりなんかじゃない。正真正銘、モンダイジ団の団長なんだな、キノは。
「悪い、みんな!俺のために、ルネのために、力を貸してくれ!!」