テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
渋谷アカリエは、商業、文化施設、オフィス等が入居する高層ビルで、渋谷駅とはスカイウォークで結ばれている。地上61階、地下5階の建造物は弓形型のデザインで、クリスマスや、年末年始のイベント時には建物全体がライトアップされ、近頃では『シブヤのミカツキ』のタイトルで、アカリエ11階展望カフェからのスクランブル交差点風景を撮影した動画は、海外で人気となっていた。
商業フロアの店舗シャッターは全てが下りていた、
中には、閉店の張り紙がされてある店もあった。
その通路を進みながら、ケイは安座間の後を追った。
不思議な感覚だった。
以前はスーツを着こなして通っていた職場への道を、今は自動小銃を抱えた男と進んでいるのだから。
無人の施設はケイを安心させた。
人を殺しかねない状況に追いやられている。
それは自分でも理解していた。
解雇させられた過去が、頭の中を駆け巡っている。
言葉や断片的な映像が、意識にちらつき始めていたからだ。
エレベーターで21階へ向かう。
窓明りをそのまま利用した間接照明と、ブラックトーンで落ち着いたシックなロビーがケイの心をえぐる。
安座間が、厚い扉の前で言った。
「ケイさん。ここでしょ?」
ケイはコクリと頷いた。
「どうやって開けんだろ?」
「社員証がなきゃ無理よ、そこにかざさなきゃ開かないわ」
「ふぅ~ん」
安座間は少し下がって銃を構えた。
タッチパネルと、扉目掛けて銃弾が飛んだ。
ケイが悲鳴をあげてしゃがみ込むと、直ぐに警報機がけたたましくフロアに鳴り響いた。
火薬の匂いと白煙、扉には穴が開いて中の壁が見えていた。
安座間が笑って言った。
「見かけが凄い頑丈そうだったからビックリしたあ~、でも案外ペラペラじゃん」
その顔は、子供の様にあどけなかった。