テラーノベル
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大会議室を横目に進み、社員食堂『空色カフェ』も通り過ぎる。ケイは、このカフェでお茶をするのが大好きだった。
天井の配管は剥き出しとなっていて、開放的な空間で飲む仕事終わりのカプチーノ。
その為に仕事をしていたと言っても過言では無く、同じ感覚の女子社員も大勢いた。
各フロアは共に、渋谷の街並みを360度見渡せる造りになっていて、世界を創造するをコンセプトにしたアカリエならではのイマジネーションに、新入社員達の顔は生き生きと自信に満ち溢れていた。
川崎市高津区にあった紡績商が此処までの地位に上り詰めたのは、社長の先見の明によるところが大きかった。
いち早くネットビジネスに乗り出して、海外向けにオリジナルブランドの安価なスーツを販売し、自社オークションサイトの会員数も飛躍的に伸びた。
ケイは高津時代からの社員で、会社に誇りと忠誠心も持っていた。
ところが、渋谷アカリエ開業時に会社は渋谷に移転して、先代の社長の死をキッカケに大幅な人員削減と世代交代が進んだ。
「自分は要らない存在」
ケイは、そんなレッテルを貼られた。
解雇理由のネット副業も、他の若手社員の多くがやっていた。
ケイは上層部に抗議したが、時間の浪費に終わった。
高給取りで50代の社員は、何かしらの理由をつけられて、次々つ依願退職に追い込まれていったのである。
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