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第5話「眠れぬ夜の果て」
夜の首都高C1。トオルはマフラー装着後の180SXで連日走り込みを続けている。コーナリングの感覚を掴もうとアクセルを踏み込むが、フルノーマルの限界に苛立ちながらも諦めない。ユウジのS13シルビアが並走し、「お前、最近毎晩走ってるな! 寝てんのかよ?」と笑うが、トオルは「カイトや篠原マコトに追いつくには、これしかない」と真剣な目で答える。時計は深夜2時を回り、遠くの街灯が霞む中、二人は走りを終える。
翌朝、高校の教室。トオルは机に突っ伏して眠気に耐えている。連日の深夜走行で目の下にクマができ、うつらうつらしていると、数学の教師が黒板を叩く音で目を覚ます。「桜井! 寝るなら出てけ!」と怒鳴られ、トオルが慌てて起き上がると、教師が定規を持って近づき、トオルの頭を軽く小突く。「授業中に寝るような奴に微分積分は教えられんぞ!」と一喝され、クラスメイトがクスクス笑う中、トオルは恥ずかしそうに頭を下げる。
放課後、トオルは眠気を堪えながらガソリンスタンドのバイトに向かう。制服に着替えて給油作業を始めると、店の前に見覚えのある赤いFD3S RX-7が停まる。「まさか…」と目を凝らすトオル。車から降りてきたのは、確かにカイトこと藤原カイトだ。カイトは気さくな笑顔で店長の佐藤に近づき、「おっさん、元気そうだな! 最近のガソリン高すぎだろ」と冗談を飛ばす。佐藤も「てめえがそんな車乗ってるからだろ」と笑い返す。トオルは呆然とその光景を見つめる。
作業の手を止めて近づくトオルに、カイトが気づく。「おお、お前! あの夜の180SXの奴だろ?」とニヤリと笑う。トオルが「藤原カイト…ですよね?」と確認すると、カイトは「その通り。で、お前ここで働いてんのか? 車好きならいいバイト先選んだな」と軽口を叩く。佐藤が「こいつ、最近C1で走りまくってるらしいぞ」とトオルを紹介すると、カイトは興味深そうに「へえ、頑張ってんな。でもそのフルノーマルじゃ俺には勝てねえよ」と挑発。トオルはムッとしつつも「いつか超えます」と言い返す。
その夜、トオルはバイト終わりに自転車屋へ寄る。後藤に「カイトって奴に会ったんです。速すぎて…もっと車を強くしたい」と相談すると、後藤は黙ってトオルの180SXを見やる。「マフラーだけじゃ限界だな。少し本気で手を入れるか?」と提案。トオルが「本当ですか!?」と喜ぶと、後藤は「ただし、金と時間はかかる。お前がバイトで稼ぐ分じゃ足りねえぞ」と現実的な条件を突きつける。トオルは「なんとかします!」と決意を新たにする。
深夜、再びC1を走るトオル。寝不足で集中力が落ちている中、ユウジが「無理すんなよ」と心配するが、トオルは「これが俺のやり方だ」と譲らない。すると、遠くから黒い影が迫り、篠原マコトのR34 GTRが轟音と共に現れる。一瞬でトオルを抜き去るその走りに圧倒されつつ、トオルは「帝王…まだ遠い」と呟く。だがその直後、赤いFD3Sがマコトを追いかけるように現れ、カイトが帝王に挑む姿を目撃。トオルは二人の背中を見ながら、自分の目標を再確認する。
トオルはガソリンスタンドの休憩室で、通帳を眺めながら「後藤さんに頼む分、もっと稼がないと…」と意気込む。外ではカイトが佐藤と談笑しつつFDに乗り込み、夜の街へ消えていく。トオルの頭にはカイトとマコトの走りが焼き付き、「俺だって…」と静かに闘志を燃やす。首都高の遠くの音が響き、次の戦いへの序章が流れる。
キャラクター補足
- **藤原カイト**:トオルのバイト先に現れ、佐藤との気さくな関係が明らかに。ライバルとしてだけでなく、トオルの身近な存在としても影響を与え始める。
**桜井トオル**:寝不足ながら走りとバイトに励む姿が強調され、努力家の側面が際立つ。カイトとマコトに刺激され、成長への意欲がさらに高まる。
**後藤トモノブ**:トオルの情熱に押され、本格的なチューンへの協力を示唆。過去の技術者としての自分を取り戻しつつある。