テラーノベル
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かつて、千年の都と謳われた街がある。
その名は――京都。
院政の夜、戦国の喧騒、昭和の再建――あらゆる「時」をその身に刻み、なお揺るがぬ古都。
だが今、彼女の眼前には、異質な者が立つ。
時代を持たぬ、夢だけを肥大化させた幻想(ファンタズム)。
その名は――千葉。
風鈴の音。苔むす鳥居。
静かに佇む、十二振りの式神を従えた巫女装束の少女が目を開く。
**京都:**うちの結界に、よう“入ってこれた”どすな……――せやけど、“出られる”保証は、あらしまへんえ?
顔には微笑。
だがその背後では、十二の影が地面を這い、音もなく蠢く。
空が割れるように歪み、虹色の光が落ちる。着地と同時に、空間の温度が変わる。
色彩が飽和し、音がメロディとなり、現実が――歪む。
**千葉県:**ここ、暗いね。静かすぎるよ。でも、大丈夫……みんなを“夢の中”に連れてってあげるよ。
ピエロの仮面を片手に笑う少年。
背には歪んだ魔法の耳、足元には軋むレールと人工の草原。
その瞳は笑っている――が、完全に正気を喪っている。
京都の結界が、触れるだけで溶ける。
式神たちが、ディフォルメされた動物たちに置き換わっていく。
「……なに、これ……」
京都の口調がわずかに揺らぐ。
千葉はただ、笑って手を差し伸べる。
「大丈夫、怖くないよ。ほら、乗って。夢のパレード、始まるから。」
風が止み、空に巨大なキャラクターが浮かぶ。
それは誰もが知るが、誰にも訴えられない“何か”。
それは、“再現”ではない。
それは、“信仰”に近い。
千葉の技――詳細は未明。だが、人々はそれをこう呼ぶ。
――触れた者は、否応なく“子ども”に戻される。
「ほな、そういう遊び方やったら……うちも、仏の顔は三度まで、や」
「――式神、開帳。」
鈴の音が反転し、鳥居が燃え上がる。
歴史が歪められれば、それを正すのが“都”の責務。
十二の式神のうち、最古の影が姿を現す――顔のない武者、背に千年の名札。
千葉に向かって、無言で進む。
どこかの塔の上、モニター越しにそれを見つめる者たち。
東京都千葉は……また自分を“夢”だと誤認している。そして、京都はまた“現実”を護ろうとしている。何を生むか、見ものだね。」
夢と現が交錯する、その瞬間。
笑う少年の影が一瞬、獣のように裂ける。
“ようこそ。”
“この世界の夢は、まだ始まったばかりだよ。”
コメント
1件
ワクワクとすげえとハハッ⤴︎が溢れてくる............なんだこれは(褒め言葉)