テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ほーん。
お前がモトリプカからの使者か」
「は、はい。
モトリプカ及び―――
今回、内戦に際し『そちら側』に敵対した
勢力の者、とでも申しましょうか」
ザハン国商業都市・スタット……
その富裕層地区にあるロックウェル家の
お屋敷で、
切れ長の目をした、シルバーの長髪を持つ
女性が―――
犬耳と巻きシッポを持つ獣人族の少年を
隣りに従わせるようにして、眼前の使者という
青年と対峙していた。
「し、しかし……
どこからどう見ても普通の人間の
女性にしか見えませんが。
その美貌は認めますが―――
本当にフェンリル様なのでしょうか?」
使者が疑問を口にすると、対角線上に
座っていた屋敷の主である、
真っ白な眉毛とヒゲを持つ老人……
ベルマイヤが片手を挙げ、
「まあ、我が目で見なければ信じられぬ
事もあろう。
ルクレセント様―――
出来ればその御身を今ひとつ、この場で
見せて頂けませぬか?」
そう促された彼女は、
「ええでー。
あとウチの事を美貌と言ったのは正直で良い。
ほな、ちょっと失礼して」
と、ティーダを残して立ち上がると、
自分が座っていたソファの後ろに回り、
「な……!?」
そこには巨大な、真っ白な毛並みを持つ
狼のような獣がおり、
「これでご確認頂けたでしょうか?」
涼し気な表情でティーダが問うと、使者は
ブンブンと首を縦に振る。
そして彼女は『人間の姿』に戻ると、再び
獣人族の少年の隣りに座り、
「ほな改めて―――
どんな用件で来たのか、聞こか」
ベルマイヤを仲介として、交渉がスタートした。
「ほーん。
魔法を封じられた、ねえ」
「新魔導塔及び、中にいた人員全員、
魔法が発動出来なくなりました。
そこで似たような症例をあたっていたところ、
かつてザハン国で同様の事があったと……」
ふむふむ、とルクレセントがティーダと一緒に
うなずいていると、
「確か、ゼレクト殿にこちらを紹介されたの
でしたな。
ザハン国の艦隊も、かつてフェンリル様の
ご不興を買うような事をした過去がある。
それについて何か言う事は?」
屋敷の主人が、まずそれを先に言うようにと
促すが、
「し、しかし我々はフェンリル様の存在自体、
知りませんでしたし―――
ましてやこのフラーゴル大陸に滞在して
いらっしゃったという情報も知りません
でした。
特に新魔導塔及び、その周辺にお姿を
現したとも聞いておりますが……
いったい何がフェンリル様のお気に
障ったのか」
事実、使者としてはただフェンリルとの
面会を出来れば取り付けて来い、と言われた
だけであり、
それについての詳細な情報は知らされて
いなかったのだが―――
それは『ザハン国に来るまでは』の状況で、
「……ゼレクト殿の書状にある事と、
少々内容が異なっておるようだが?」
そうベルマイヤが指摘すると、使者は慌てて、
「はっ、はい!!
モ、モトリプカ側では新魔導塔で―――
まだ年若い奴隷を隷属化し、さらに彼らを
前線に送り込んでいたとの事で……!
も、もしかしたらそれがお気に障った
可能性があるものと」
それを聞いたフェンリルは人間の女性の
姿で、ハー、とため息をついて、
「ウチなあ―――
獣人や獣の亜人たちから神と崇められて
おるんやけど、
どの種族にも関わらず……
幼子やその母親が酷い目にあうのを見るのは、
めっちゃ不愉快なのよ。
そういう意味ではあの新魔導塔とやら?
あれは極めて不快だったわー」
モトリプカ側の最新兵器を『不快』と断じる
彼女に、使者の顔色は蒼くなる。
「そ、その件につきましては大変失礼を!!
ついてはその事について正式に謝罪する
用意があり―――
是非ともモトリプカに来て頂きたく!」
テーブルの上に額をこすり付けるようにして、
使者は詫びの姿勢を見せるが、
「ん~……
でもそもそもなぁ。
確かにアレはウチがしたんだけどさぁ。
それより前に何か起きてない?」
「?? と言いますと?」
ルクレセントの問いに使者は聞き返すと、
「それ以前―――
何か魔法が使えなくなったとか、その
魔導塔やらが動かなくなった……
という現象は起きていませんでしたか?」
獣人族の少年の言葉に、
「た、確か……
それより前にも、各地の新魔導塔が
度々故障したとの報告はありましたが。
そ、それもフェンリル様が?」
おずおずと質問する青年に彼女は、
「あー、何ていうかなぁ。
ウチの力、ウチでも何かようわからない
感じで発動するらしいんよ。
以前もあったんや。
別にウチ、その国の事も何も知らんのに、
魔法が使えなくなった者がおってなぁ。
で、後でそいつらが泣きついて来た時に、
ようやくウチやウチに関わるところと敵対
していた事がわかったっていう」
「そそ、それはどういう―――」
使者は困惑の色を浮かべるが、
「聞いての通りです。
神獣であるルクレセント様は……
いちいち人間や他種族の争いに介入は
いたしません。
ただ、先ほども申し上げました通り、
種族問わず幼子に手を出すとか、
またルクレセント様の庇護下にある、
もしくは関係のあるところに敵対姿勢を
見せただけで発動する事があるのです」
「な、なんと―――」
驚いた後、言葉が出て来ない使者に
ベルマイヤが、
「我が国は一度、一官僚の暴走とはいえ
辺境大陸に圧力をかけようと艦隊で向かった
事があります。
さらのその後、沖合いでの訓練のため、
出航しようとした船団が魔法を封じられた
事がありました。
どうもそれ以来、ここザハン国だけでなく、
フラーゴル大陸全土がフェンリル様に
目をつけられた状態になっているのでしょう」
老人が分析を元に解釈を口にすると、
使者は開けたままになっていた口をようやく
閉じ、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
「要は無意識で発動してしまうっちゅー事や。
で、そちらに行って魔法が封じられた連中?
それと魔導具か?
それらを解除しに行ってやってもいいのだが、
果たしてそれだけで、解決するもの
なのかのう?」
暗に、『お前らが今やっている事そのものを
方針転換しなければ、また繰り返されるぞ?』
と、彼女はプレッシャーをかけ、
その意図が通じたのか、使者は深々と頭を
下げると、
「そ、その事も必ずあちらにお伝えいたします!
であれば、モトリプカの新魔導塔まで……
お出で頂く事は可能なのですね!?」
そこでルクレセントはティーダと視線を
交わすと、獣人族の少年が口を開き、
「ルクレセント様が向かわれるまで―――
『不快なもの』への対処をお願いします。
特に先ほど仰られた通り、幼子及び
その母親への扱いは気を使ってください。
これは種族問わず、です」
念を押すように彼が言うと、使者は何度も
頭を下げて、
「か、必ずや!!」
そう答えると、彼は挨拶をして荷物を
まとめ始め……
これでフェンリルとモトリプカ側の会談は
終わった。
「はぁ~、生き返ったぁ」
「やっぱ公都の食事に勝るものは無いねー」
「それにトイレがのう」
一方その頃―――
私と妻2人は公都『ヤマト』にある
児童預かり所で、一息ついていた。
アジアンチックな童顔の妻と、モデルのような
体形のドラゴンの方の妻の手には、それぞれの
息子が抱かれていて、
「いやあ、それわかるッス!」
「あちらでのお屋敷の生活も確かに、
かなり上のものだったのでしょうが、
公都と比べるとどうしても」
褐色肌の長身の青年と、その妻……
タヌキ顔に丸眼鏡の女性がしみじみと語り、
「おとーさん、お疲れ!」
そう言って、黒髪ショートに真っ赤な瞳の
娘が、私の腕にまとわりつき、
「まあ何にせよご苦労さん」
「すぐに戻るんでしょう?
たっぷりと我が子に構ってあげて
くださいね」
アラフィフの筋肉質のギルド長と、
彼と同じくらいの年齢の、薄い赤色の髪をした
ここの所長が私たちを労う。
「どうもすいません。
お手数をおかけしてしまって―――
シンイチやリュウイチは、何かご迷惑を
おかけしていませんでしょうか」
私が頭を下げながら切り出すと、
「迷惑も何もまだ赤ちゃんだろう」
「そうですよ。
まあ、まだまだ授乳が必要という事くらい
でしょうか、他と異なるのは……」
祖父母のようにジャンさんとリベラさんが
返して来て、
「あー、ミレーヌはもう乳離れしたッス
もんね」
「そこはドラゴンハーフですから―――
あれ? でもシンイチちゃんは」
レイド君とミリアさんの言葉に妻2人が、
「まあ、ドラゴンと長い間関わっていたし?」
「その影響かも知れぬ。
出産までほとんど一緒に過ごしたし」
と、その疑問に答えるように話し、
「ラッチはどうでしたか?
私たちがいない間……」
実は一番気にかかっていたのが娘の動向
なのだが、
「ん?
『ガッコウ』で弟分・妹分の面倒を
よく見てくれているって話だぞ」
「弟が2人も出来たんですからね。
お姉ちゃんとして、ここの子供たちの
お世話もよくしてくれていますわ」
祖父母のような2人の言葉に、ラッチは
ドヤ顔で胸を張る。
思えば、ラッチやアルテリーゼと出会ってから
もう7年目になるのか―――
そう考えるとこの成長も感慨深い。
「んでお前さんの『仕事』は?
こうして休憩にやって来たって事は、
一段落ついたんだろうが」
ギルド長の問いに私と妻2人はうなずいて、
「あと一押しってところだねー」
「今はルクレセントのヤツが交渉しておるが、
まあうまくやっておるだろう。
ティーダもついておるしな」
メルとアルテリーゼがそう返すと、
「ああ、ティーダ君ってあの獣人の子。
懐かしいわね。
あの子も元気?」
所長も覚えていたのか、ノスタルジーに
ひたりながら語る。
そういえば一時、彼も公都にいたっけ。
そしてしばらく雑談に興じ……
小一時間ほどした後、私たちは公都を後にした。
「おう、お帰り。
どうだ、少しは休めたか?」
ザハン国商業都市・スタットに戻ると―――
アラフォーに見える白髪交じりのグレーの短髪を
した、ライさんと、
その秘書である2人……
金髪ロングの童顔の女性と、眼鏡をかけた
黒髪ミドルショートの女性―――
サシャさんとジェレミエルさんが出迎え、
「ええ、まあ」
「久しぶりに我が子の顔を拝めたッス」
まずは父親組が答え、
「やっぱり子供の顔を見ると元気100倍!」
「精神的にも回復するものよ」
「何より安心しますからね。
リベラ所長に預けているし、ギルド長も
いるから心配無いんですけど」
女性陣も母親の顔になって語る。
「こちらは……
ルクレセント様との面会を終えた使者が、
いったんモトリプカへと帰ったとの事」
「すぐに返事は来るだろうと言っていました。
こちらから、モトリプカに出向く事になる
だろうと―――」
秘書風の女性2人の言葉にみんながうなずく。
まあ、新魔導塔も元に戻さなければならないし、
こちらから向かうのは規定路線だけど。
「しかし……
ルクレさんとティーダ君って、同行者として
モトリプカに行ってますよね。
フェンリルとして出向くのは大丈夫なんで
しょうか」
あちらには顔を知られているし、また同じ
人員で行ったら問題になるのでは、と思って
いると、
「大丈夫なんじゃない?」
「女だからねえ」
メルとアルテリーゼの答えに私が首を傾げると、
「化粧と衣装でいくらでも化けられますからね」
「そうそう。
同一人物だと見られないので良ければ、
それでいけますよ」
「見られた人も限定的なんでしょう?」
と、ミリアさんとサシャさん、
ジェレミエルさんが続くと、
「いや女はそれでいいいかも知れねぇけどよ。
ティーダはどうすんだ?」
「あ、そッスよ。
彼も一緒に行くんスよね?」
ライさんとレイド君が男としての疑問を
口にすると、
「まあ?」byメル
「それは~」byアルテリーゼ
「どうにでも?」byミリア
「なるんじゃ」byサシャ
「ないですかね~♪」byジェレミエル
そう女性陣が不気味に笑いながら返して来て、
男性陣は自分も含めて口をつぐんだ。
そして数日後―――
私たちはモトリプカ側からの要請を受け、
首都・エムビーアにやって来ていた。
とある施設の中……
フェンリルのルクレさんが先頭に立って歩き、
そしてその周囲を、着飾った美男美女が従う。
彼らはフェンリルに仕える事を最上の
名誉とする、羽狐たちであり―――
関係者たちは、その美貌に目を奪われていた。
「うう……」
「堪忍してや、ティーダ」
そしてルクレさんに一番近い位置で歩くのは、
当然ティーダ君であるのだが、
「いやすごいねティーダ君」
「どこからどう見ても美少女だのう」
同行しているメルとアルテリーゼも、彼の
外見に目を見張る。
「確かにまあ、少年ではなく少女としてなら、
前回の同行者とは思われないだろうけど」
気の毒ではあるが私にはどうにも出来る事では
なく、心の中で彼に手を合わせる。
しかし美男美女揃いの羽狐たちの中で―――
勝るとも劣らない様子で歩く姿は、
ルクレさんの豪華な衣装も相まって、どこかの
王族か貴族と言われても信じられるだろう。
そして最奥の部屋の扉が開かれると、
「ここより先は関係者のみで」
と、扉の前の担当者らしき男が告げると、
羽狐たちはうやうやしく挨拶してその場に
留まるが、
ルクレさんとティーダ君に続いて、私と妻2人が
入ろうとするのを見て、
「申し訳ありません。
関係者以外は……」
するとフェンリルである女性は担当者に向かい、
「この者たちは、前回この国に立会人として
来たと聞いておる。
そしてゼレクト殿の紹介として来ている
者たちだ。
事の顛末を見届けてもらわねば困る」
彼女の言葉に、担当者は困惑した表情を
浮かべるが、
「何をしているのだ。
早く入って頂きなさい」
赤い短髪の青年が出て来て、入室を促し―――
私たち5人は室内へと足を踏み入れた。
「ドルミンです。
今回の内戦で、モトリプカ側を主導した
者にございます」
「従者のプラクスです」
部屋に入ると、煌びやかな家具や装飾こそ
無いが……
見た事も無い魔導具や洗練されたデザインの
インテリアが配置されていて、
ドルミンと名乗った、青みがかった短髪に
白髪の混じる男の前に、ルクレさんと
ティーダ君が座る。
従者や付き添いにあたる人間のイスは
無いようで、私たち3人とプラクスと名乗った
青年は、それぞれ代表者の背後に立ち、
そして交渉がスタートした。
「では―――
意図的であるか無いかに関わらず、
我々はフェンリル様の逆鱗に触れて
しまったと」
「そのようであるな。
我は女子供……
特に幼子を虐げる行為を非常に不快と
断ずる。
人間同士がどう争おうと知った事では無いが、
子供やその母親を巻き込む事は感心せん」
いつもの調子とは異なり、今回は威厳を
保つような口調で彼女は話す。
「では、あの時我々の前に現れたのは」
「ん?
ああ、あの高い塔の事か。
あれはものすごく嫌な匂いがしたのでな。
極めて不愉快であったよ」
新魔導塔に直接フェンリルである彼女が登り、
その姿をストレートに見ている2人は、
口元を歪ませる。
「この度……
内戦中に、最前線に設置した新魔導塔が
故障した事がありましたが」
「それは正直我にもわからんのだ。
だが、少し前からザハン国とは誤解が
解けたゆえ―――
友好関係になっていたのだが。
そこと敵対した事と無関係ではあるまい」
すると主人の後ろで話を聞いていた従者が、
「ザハン国に向かわせた使者より聞き及んで
おりますが、
フェンリル様のお力は、意識せずとも
発動する事があると」
するとルクレさんの隣りの『少女』がうなずき、
「その通りです。
神獣であるルクレセント様のお力は神の力
そのもの。
どこにいようとどれだけ離れていようと、
逃れられるものではありません」
ティーダ君が高い声を作ってそう答えると、
「まあ、それゆえこうして遠出する事が
あるのだがな。
なかなか良い気晴らしにはなる」
彼女がそう言うと対面の2人は苦笑し、
室内の雰囲気が和む。
「それでは、我々はいったいどうすれば?」
ドルミンが本題に切り込むと、
「我の不快になるような事はしない事じゃな。
特に幼子、次いでその母親。
それら抜きでも争いは出来ようて」
「ルクレセント様は基本、人間や国同士の争いに
介入はしませんし興味もありません。
ただ、いくら争いとはいえ一線は守る
ようにとの事でしょう」
それを聞いたあちらの代表は、後方の従者と
いったん顔を見合わせた後、
「それで、領地返還につきましては」
「我はそこまで知らん。
それこそ勝手に国同士で決めればよい。
で、お主らの主張は……
発動出来なくなった魔法を元に戻してもらう、
という事でいいのか?」
「はい。
出来れば、新魔導塔の機能も復活して
頂きたく」
すると今度はルクレさんが私たちの方へと
振り返り、
「その新魔導塔の用途―――
再び、フェンリル様の怒りに触れない運用を
約束して頂けますか?」
私がそう問い質すと、
「是非もありますまい。
再び魔法や魔導具が使えなくなったら、
今度は元に戻してもらえないでしょうから」
代表の男がそう言うと、彼女はニッと笑って、
「よくわかっておるではないか」
その言葉にこちら側は笑顔を作り……
そしてモトリプカ側は、引きつった笑みを
浮かべ、
新魔導塔へと移動する事となった。
「おー、やっぱ高いねー」
「して、魔法が使えなくなった者たちは、
この中におるのだな?」
メルとアルテリーゼが新魔導塔を見上げながら、
ドルミンさんとプラクスさんにたずねると、
「ええ、あの時のまま人員配置しております」
「我々はここにいてもいいのでしょうか」
そう不安そうに返して来るが、
「多少は構わぬ。
要は我の眼前におれば良いのでな」
そうして―――
ルクレさんは私とアイコンタクトを取ると、
「お、おおっ!」
「ま、まさにあの時の……!」
彼らの前でフェンリルの姿となり、
「オオオォオオオー!!」
空気が振動するくらいの遠吠えを行い、
その間に私が、
「この世界において―――
魔法または魔力を使った魔導具があるのは、
・・・・・
当たり前だ」
そう小さくつぶやくと、
「……!
つ、使える!!
身体強化が発動するぞ!!」
「じ、自分もですドルミン様!!
やっと元に戻れた―――」
しかし2人は喜び半分といった表情で、
「どうかされましたか?
せっかく、ルクレセント様よりお許しを
頂けたというのに」
ティーダ君が彼らに問うと、
「い、いや。
これからの事を思いますと頭が痛くて」
「今後、フェンリル様のご不興を買わずに
行動するとなりますと……
今回の内戦だけでなく、これまで占領して来た
地域まで対応しなければ」
確かにまあ、今後ルクレさんの怒りに
触れないよう、行動するとなると―――
制限はいろいろ付くだろうし、これまでの
ヘイトもどうにかしなければならないだろう。
するとメルとアルテリーゼがすっ、と前に
出て来て、
「じゃあ言ってあげたら?
せっかくフェンリル様と和解出来たんだし。
『今後、争いにおいても女子供を巻き込む事は
許されない』って」
「奴隷については辺境大陸にもおるし、
そこを参考にすればよかろう。
それがフェンリル様の意向であると言えば、
無理難題は言うまいよ」
そしてルクレさんが人間の姿に戻ると、
「その2人の言う通りだ。
余計な争いは我は好まぬ、と言え。
特に幼子やその母を巻き込むは論外、とな」
それを聞いた2人は深々と頭を下げ……
ようやくフラーゴル大陸の『内戦』は、
一段落した。
396
30
#僕のヒーローアカデミア