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#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
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タクシーに乗って警察署へと来た阿部と目黒は、事情を説明してすぐに防犯カメラの映像を借りると、いつも使わせてもらっている会議室に入り、ノートパソコンで映像を確認する。
目黒も隣に座って覗き込んでいるのだけれど、阿部の操作が早くて何をしているのか理解できていない。
🖤「何かわかりそう?」
💚「ちょっと待ってね。防犯カメラの映像って、一ヵ所だけじゃないの。周辺のもの全部と、それが七ヵ所あるから時間がかかるんだ」
🖤「あ、ごめん……」
💚「ふふっ。謝んなくていいよ。わざわざ付いて来てくれてありがとうね」
🖤「俺が一緒に来たかっただけだから」
💚「そう? なるべく急ぐね。めめ暇かもしれないけど」
🖤「大丈夫。俺、ボーっとしてるのも好きだし」
💚「めめも見てくれていいんだよ?」
見る気も考える気もない目黒に、阿部はまた、ふふっと笑った。いつも通りすぎる目黒に何故だか安心してしまう。
モニターに向き直り、注視し始めた。
ラウールが部屋から出てきたのは、2時間ほど経った頃だった。
🤍「あー、疲れたー。康二くん、甘いの飲みたーい!」
🧡「そう言うと思て、用意しとったで。仕上げ、キャラメルとハチミツ、どっちがええ?」
🤍「キャラメルがいいな!」
🧡「ほい。お待たせ」
🤍「ありがとー! あ、これ自分の色の取ってね」
ソファに座ってテーブルの上にパラパラと置かれたのは、小さくカラフルな石のついたピアスとイヤリング。
飲み始めたラウールの傍で、岩本が真っ先に黄色いピアスを手に取った。
💛「ピアス?」
🤍「そ。これに発信機とGPS付けたよ。ピアスの石を二回叩いたら、発信機が発動して信号がこの腕時計で受信できるようになってる」
💙「へぇ、こんな小さいのに凄いな」
🤍「でしょー? 頑張ったんだから」
🩷「でも阿部ちゃん、なんで位置情報なんか共有しようと思ったんだろ」
💛「危険だけでも知らせられたら違うだろうってさ」
❤️「それだけヤバいかもってことかもしれないね」
🩷「いやでもあれ、マジでヤバかったって。フインキ激ヤバ」
🧡「雨の中でずぶ濡れで笑っとったもんなぁ。ホラーやで」
❤️「いや多分、そういうヤバさじゃないと思うけど」
💜「何か考えがあるんだろうけど、俺らじゃ阿部ちゃんの考えは分かんないからなー」
💛「とにかく今は、その時に備えとこう」
💙「にしても、あっちも時間かかってんな」
💜「今回の被害者は七人いたんだよ。だから、七ヵ所の防犯カメラに、現場の周辺のカメラもあるから相当な数を見なきゃだよ。そりゃ、時間かかるって」
🧡「みんなの分もコーヒー淹れたで」
❤️「俺も昼ごはん、作り始めようかな」
💚「居た」
ずっと動いていた阿部の手が止まって、声が聞こえた事で目黒も画面を覗き込んだ。
🖤「……この人?」
💚「うん。特徴が一緒だし、似顔絵も似てるって言ってたから、多分そう」
それは、五人目の遺体から70メートルほど離れた場所にあるコンビニの防犯カメラの映像。
そこに映っている女は、右手を差し出している。けれどそれだけだった。そこから動く事がない女。
進めていくと、不意に、奥の方から赤いものが女の方に向かってくるのが分かった。それは女の前までくると大きな赤い水の塊になって空中に浮いている。
そして女がその赤い水の塊に触れると、赤い水の塊はギュっと凝縮されて透明なクリスタルのような雫型の石に変わった。
💚「これ……血を結晶化してる」
🖤「血を? 結晶化って……なんか、命冠の環にあった、天井からぶら下がる瓶みたい」
💚「教祖がいた、祭壇の部屋にあったって言ってたね」
🖤「そう。その瓶が赤く光ったら、佐久間くん達が操られてた」
💚「……瓶に入った血と、結晶になった血……確かに、なんとなく似てる気がする。命冠の環で作ってた命の霊薬は液体だった。でも、それじゃ命の霊薬としては不完全だった。だから、凝縮して結晶にした? 翔太の異能も、花びらが結晶になるものだし……翔太は、花を作ったのは憶えてるって言ってたけど、結晶化の方も関係あるのかな」
🖤「じゃあ、この人が命の霊薬を作ってるってこと? 教祖が教えてもらったのも、女って言ってたし」
💚「分からない。もしかしたら、命の霊薬を作りたい人に異能を狙われてるかもしれない。後者なら、保護しないとだけど……」
🖤「保護って、無理じゃない? 会っただけで康二が攻撃されてたし」
💚「だよね。この人が何の目的で血を抜いて結晶にしてるのか分からないと、こっちも対処できないし……康二がどうやって攻撃されたのかだけでも見れないかな。情報は、なるべく多い方がいいから」
もう一度パソコンを操作して動画を見返す。ズームしたり、速度を落としたり、見落とさないように何度も何度も。
二人に忍び寄っているものにも気づかずに。
🖤「あ」
💚「ん?」
🖤「なんか光った」
💚「え、どこ?」
🖤「ここ。ちょっと前」
パソコンの画面を指差す目黒。
言われたところをズームして、少し前に戻してから再生する。速度を落として、凝視していると確かにキラっと光ったのがわかった。
💚「ホントだ、光ってる。これ何だ……物? いや、ここだけじゃない……何か伸びてる?」
もう少しズームをした時だった。チカチカッと室内の電気が点滅して、フッと電気が消えてしまった。
💚「え?」
🖤「あれ、停電? 雷でも落ちたのかな?」
💚「雷は鳴ってなかったと思うけど」
手を止めて、辺りを見回す。
薄暗い室内で、パソコンの電源も落ちてしまったので立ち上がる。
💚「ちょっと様子見に行こうか。電源の復旧なら、力になれるかもしれないし」
椅子から立ち上がってドアの方に向かおうとして、ふと、阿部が足を止めた事ですぐ後ろにいた目黒も立ち止まった。
💚「ねえ、なんか静かじゃない?」
🖤「えっ?」
💚「だって急に停電になったんだよ? 警察署なら、一般の人も来てる。もっと慌ててもおかしくないし、俺たちのところに誰か来てもいいと思うんだけど」
🖤「確かに。でも声なんて聞こえないよね」
💚「うん……めめ、ちょっと様子見て来てもらえる? 俺、みんなに連絡を」
言いながらスマホを取り出した時だった。
手が、急に動かなくなった。指に力が入らなくなって、ぐぐっと開かれた手からスマホを落としてしまう。
🖤「阿部ちゃん?」
ドアの方に行こうとしていた目黒が阿部を振り返る。
💚「めめ逃げて!」
何かあったのかと阿部の方に手を伸ばした目黒だったけれど、その手が阿部に触れることはなかった。
プルプルと震えている目黒の手。そこから、全く動かない。
目黒の周りに蔓が数本出現したのだが、その瞬間、全ての蔓が切り裂かれてしまった。
💚「え……」
🖤「くっそ!」
意地になってもう一度、蔓を数本出現させたけれど、再び全てが根本から切られてしまった。
💚「めめ、ダメだ。いくらやっても切られる……消耗するだけだ」
🖤「っ、でも……阿部ちゃんだけでも、助けないと……!」
向かい合わせの状態の二人。
目黒の手は、あと数センチで阿部に届くというのに。この届きそうで届かない距離がもどかしい。
無理やり手を動かそうとした目黒の人差し指に、一筋、赤い線が入る。
ぽたり、ぽたりと滴る血。
💚「めめ!」
🖤「くっ」
痛みに眉を顰める目黒。
その血が、下ではなく横に線で流れているのを見て、阿部はハッとした。
💚「糸……糸に絡めとられてるんだ! 無理に動いたら、全身が切れるっ」
「あら、よくわかったわね」
突然、聞こえてきた声は阿部の耳元でしていて、空間を切り裂くように現れた白い手が阿部の頬を撫でた。
「さすがだわ、特務調査局の頭脳さん」
その姿が露わになると、その女は阿部が描いた似顔絵そのもので、本当に阿部の絵が上手かったのだという事を知った。体のラインに沿うような深紅の膝丈のワンピースに白衣を着た女。胸元にはネームプレートが付けられ、《紅歪-べにひずみ-》と書かれている。
目黒は紅歪を睨みつける。
🖤「お前……阿部ちゃんから離れろっ」
「いやよ。この子がいない状態で、あの子たちがどう出るのか楽しみだし、何よりこの子に触れてたら、君の良い表情が見れるもの」
ウフフっと笑う紅歪。
その妖艶な雰囲気の女が阿部にくっついているのが、目黒は気に入らない。
「イケメンの苦悶の表情なんて、たまんなあい。もちろん、可愛い子も好きよ」
紅歪が人差し指で阿部の唇に触れた瞬間、動こうとしたことで目黒の腕が切れて血が噴き出した。
💚「めめっ! 俺、大丈夫だから。これ以上、血を流したら、この人の思う壺だ……」
「あーら、そこまで気付いちゃうの? 頭が回りすぎるのも考えものね」
紅歪が空中を指でピンと弾くと、阿部の手のひらが切れて血が滴った。
💚「っ」
🖤「阿部ちゃん!」
「フフッ、痛いでしょう? でもまだまだ、お楽しみはこれからよ」
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