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なななす
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下校中、急に降り出した雨は次第に勢いを増していき、あっという間に制服を濡らした。
bnは咄嗟に近くの公園の東屋へと駆け込んで、深いため息をついた。
「ぅわ、最悪」
見上げると真っ暗な空が広がっていて、雨が止む気配はない。
鞄からタオルを取り出して濡れた身体を拭いていると、ぱしゃりと水溜まりが跳ねる音がして、振り向くと見慣れた顔と目が合った。
「bnさん」
「qnチャンじゃん」
珍しく慌てたように東屋へ入ってきたqnは、中等部の後輩である。
「bnさんも雨宿りですか」
「だって急に降ってくるんだもん、予報大ハズレじゃん」
bnが頭の後ろで手を組むと、qnはですね、と苦笑しながら頷いた。
ぐっしょりと濡れて重たくなったブレザーを脱ぎ、qnは小さく息をつく。
「なんで雨宿りするの?」
qnは、ブレザーの袖を絞りながら、bnの方を振り向く。
「なんでって……急だったじゃないですか」
「そうじゃなくて。qnチャンの足なら家まですぐでしょ。なんでわざわざ」
「あぁ、走ってまっすぐ帰っちゃうつもりだったんですけど、bnさんを見つけて、やっぱりあそこで雨宿りしていこうと思っただけで」
困ったように笑うqnに、bnの鼓動が僅かに跳ね上がる。
わざわざ聞くんじゃなかったとひっそり後悔して、ふーんと照れ隠しに呟き、咄嗟に顔を逸らした。
ちらりとqnを見れば、未だに自分の身体を拭くのではなくブレザーを絞っている。
「……タオル無いなら貸すよ?ちょっと濡れてるけど」
「えっ、あ、ありがとうございます」
手にしていたタオルをqnに差し出すと、柔らかい笑みを向けられる。
qnが濡れた身体を拭く隣で、頻りに振り続ける雨を見上げた。
「ありがとうございます。タオルは洗ってから…」
「いやべつにいいって、そんな、の……」
隣に視線を向けた瞬間、bnは固まった。qnの白いワイシャツが、雨に濡れたお陰で完全に透けていた。
薄い布地の下に淡い肌の色と、その中心に薄らと浮かび上がった突起が目に入る。
「……っ!?」
一瞬で顔が熱くなり、心臓がばくばくと鳴り響く。耳まで真っ赤に染めたbnに、qnは首を傾げた。
「bnさん?」
さっきまで、qnが胸の前でブレザーを絞っていたから気づかなかった。
身体を拭いたお陰でぴったりと張り付いたシャツが色を戻し、白地の下の血色感が明け透けになっていた。
目が離せず、そこに釘付けになっていると、突然qnの顔が近付く。
「bnさん、どうしたんですか?ぼうっとして……それに顔が真っ赤です。熱でもあるんじゃ……」
心配そうに身を乗り出すqnの、綺麗な顔が間近でbnを覗き込む。雨に濡れたせいでしっとりとした長い睫毛と、濡れた髪が色っぽい。
首筋に張り付いたシャツが淫らに映り、その下の、綺麗な桃色が脳裏に焼き付いた。
「な……なんでもないって!大丈夫だから……!」
視線を逸らしながら、ぐっとqnの身体を押し返した。
qnは些か驚いたように目を瞬かせて、bnを見つめる。
困ったように眉を下げて、もう一度顔を覗き込むqnの手が、bnの額に触れた。
先ほどもそうだったが、必然的にqnがbnを見上げる形になる。
「熱はない、みたいですけど……」
「だから大丈夫だって言ってんだろ……!」
bnは数歩後ろに後退り、額に触れた熱を思い出して、また顔を背ける。
ずっと顔が赤いままのbnを、qnは心配そうに見やる。
限界を感じたbnは、鞄の中にしまっていたジャージの存在を思い出し、勢いよく取り出してqnに向かって投げつけた。
驚いたように目を丸くしたqnが、咄嗟に受け止めたジャージに視線を落とす。
「なんだ、着替え持ってたなら、着ればいいじゃないですか」
はい、着てくださいと当然のように返そうとするqnに、bnはジャージを強引に胸元へ押し付けた。
「qnが着なよ」
「……?おれは寒くないので、bnさんが着……」
「いいからqnが着ろって!」
無理矢理ジャージで口をふさいで黙らせると、qnは不服そうにしながらも大人しくそれを羽織った。
…これもまずかったか。サイズが合っていない。萌え袖になってしまった。
抵抗を諦め、qnをできるだけ見ないよう外を眺める。
雨は一向に弱まる気配もない。このまま待っていても仕方がないかと思い始めた時、公園の外から傘を差した人影が歩いてくるのが見えた。
「qn~~!」
張りのある声が耳に届き、qnの纏う空気が少し柔らかくなったのを感じた。
「mn!どうしてここに?」
「迎えに来たんだよ。スマホの位置情報見て。dzさんが、qnの帰りが遅いって心配してたからさ」
「そっかありがとう、mn。傘がなくて困ってたとこ」
qnの声がぱっと明るくなるのを、bnは唇を尖らせながら見つめる。
嬉しそうに笑うqnを見て、胸の奥が微かに痛んだ。
べつにどうでもいいけど。
急降下していく感情に気付かない振りをしながら、短い時間だったなと息をつく。
仲睦まじく話すふたりを見ていると、不意にqnが振り向いて、bnの名前を呼んだ。
「bnさんも一緒に帰りましょ」
「は……?傘二人分しかないだろ、俺はいいよ、雨弱まったタイミングで帰るし」
「一緒に入ればいいです!それに、なんか体調悪そうだから、早く着替えないと風邪引きますよ」
qnがbnの手を取ると、落ち着いていた顔が再び熱を取り戻した。
それを見てmnが笑いを押し殺しながら、こっち入ります?と助け舟を出したが、qnが勝手に断ってしまった。
「濡れてる同士で入るから。mnは濡れたくないでしょ。いいよ。行こう」
「ちょ……いいって!」
「よくないです!早く帰りましょう。」
ふたりでひとつの傘に収まるようにぎゅっと腕を組んで引っ張っていくqnに、bnは小さく熱いため息をついた。
「あ、ジャージとタオル、明日洗って返しますから。」
無自覚のqnを見て、mnが苦い笑みを浮かべる。
ぴったりとくっついた身体から濡れた雨水が伝って、雨の匂いに混じってqnの柔らかな匂いが、頭を埋めつくした。