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隣で麻里が両手で顔を覆っていた。衝撃は受けたが、武司たちの言葉に癒されている感じだった。
美咲も、いかにも気になりませんよ、という口調で言った。
「ええ、よくある話ですよ、今でも。その卵子はアメリカから、とかでしたの?」
麻里の母は少し宙を見上げて思い出しながら答えた。
「いえ、国内です。もう無くなってしまった所ですが、エージェント・ストークという不妊治療の団体から」
カチャンという音がした。美咲が手から紅茶のカップを落とした音だった。
「申し訳ありません。急用を思い出したので、今日はこれで失礼します」
美咲は真っ青な顔色で席を立ち、そのまま玄関へ小走りで去って行く。麗子と武司があわてて後を追うが、美咲は外で走り去った後だった。
麗子は麻里と麻里の両親に非礼を詫び、自分も一旦自宅に戻ると告げた。武司にはこう言った。
「武司君は麻里さんの側についていてあげて。何なのよ、美咲は」