佐野side
信じがたかった
———–いや、信じたくなかった
とある3月
「み”んな”卒業お”め”て”と”う〜」
「なんでお前がめっちゃ泣いてんだよ!」
俺らの担任 安倍晴明が何故かすごく泣いていた
「だって〜、見送るなんて初めてだし〜……」
「だからといって、生徒より担任が泣いてるってどういうことだよ……」
まぁ、確かに……と涙を拭いながら言った
「まぁ、晴明らしいけどな」
と、入道は呆れながら言った
それにみんな頷く
「あ、そうだ!」
忘れそうになったよー、と言いながら手に持ってる袋の中を漁り始めた
みんな不思議そうに晴明を見た
「はい、僕からの卒業祝い!」
と言い、みんなに縦に長い箱を配り始めた
「なにか入ってるのか?」
秋雨は箱をまじまじと見ながら言った
「うん、開けてみて」
みんな恐る恐る開けると
そこには、綺麗なブレスレットが入っていた
「これ、すごく綺麗!」
豆はすごく嬉しそうに飛び跳ねた
他の奴らもガヤガヤしていた
ただ、入道だけ少し固まっていた
「どうした連々、 嬉しくないのか?」
秋雨は少し不安そうな顔を見せた
「あ、いや、嬉しいんだけどさ……」
と、少し言葉を詰まらせた
「何か問題でもあんのかよ」
「……言いずらいんだけどさ」
と、大切なことを言うかのように口を開いた
「このブランド、めっちゃ高いところの……」
……え?
「あ……」
「……お前犯罪でもしたのか?」
「してないよ!?」
貯金崩して買ったんだよ!と、弁解していた
でも、なんでそこまでのものを……
「なんでそこまでして買ってくれたんだ?」
「えっと……」
と、おもむろに口を開けた
「この学校で過ごした思い出とかを、思い出して欲しいなって……」
少し奮発して……
と、恥ずかしそうに話した
みんな無言だったが、考えていることは一緒だと思う
こんなものなくても、いつか思い出すよ
奇想天外な日常だったから
「はぁ……」
と、小さなため息をついた
「そんなに疲れたのか?」
「うん」
少しはしゃいじゃって……と、頬をかいていた
いつもはしゃいでんじゃねぇかよ
「まぁ、最後までお前らしかったな 」
「そうかな? 」
「プレゼントまでしといて何言ってんだよ」
「えへ」
と、無邪気な笑顔を返した
多分、こいつは死ぬまで変わらねぇな
そんな気がした
「さ、そろそろ帰りな」
と、教室の扉の前で急かされた
「もう少しいてもいいだろうが」
「じゃあ門の前まで送ってあげるから」
「そういう問題じゃねぇよ」
もう、生徒としては、このクラスに来ることは無い
あの奇想天外な日常も
この学校の景色を見ることも
この担任と、過ごすことも
もう一生無い
寂しいけど、不思議と涙は出なかった
また、どこかで会える
そんな気がしていたからだ
そして、俺と晴明は学校の門の前まで一緒に来た
「佐野くん」
俺は声をかけられた方へ向いた
そこには、笑って、いや
少し悲しそうな顔をした、晴明がいた
そして、最後の挨拶を交わした
「晴明、じゃあな」
「はい、さようなら」
俺は前を向き、百鬼学園を後にした
ただ、知らなかった
これが
晴明と交わす
最後の挨拶になろうとは……
次の日、 俺はLI○Eの通知音で起きた
どうやら、弐年参組のグループで騒いでいるらしい
卒業式の次の日って言うのに、一悶着でもあったのかと
重い体を持ち上げて、メッセージの内容を見た
そこには、信じ難いことが書かれていた
『緊急』
『晴明が、事故で亡くなったって』
コメント
2件
すごく良かったです。次の話楽しみに待ってます(*^^*)
初めて妖はじ書いたけど、変じゃないよね……? 少しシリアス多いです!