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付き合い始め頃かな?
今、僕達は夜の高台に来ている。
ここの高台は、僕が物思いにふけたいときに来る。
「へぇ、この街にこんな場所があって知らなかったなぁ。おんりーちゃん、よく来るの?」
「はい、ここは考え事するのにちょうどいいんです。それに、ここから見る街の夜景はキレイですからね。」
「確かにきれいだねぇ。」
僕は地面に腰をかけると、ぼんさんも隣に腰をかけてタバコを吸い始めた。
立てた右膝に右肘を置いて吸う姿は、なんだか、とてもかっこよく見える。あれ?ぼんさんってこんなカッコよかったっけ?
「………。」
「…ふぅ…。ん?おんりーちゃん、俺の顔マジマジとみてどうしたの?」
「…いえ、ぼんさんの姿がかっこよく見えるなぁって」
「?!ごほっごほっ!!」
「大丈夫ですか?」
「…ごほっ…だ、大丈夫だけど、不意打ちすぎるんだけど!」
「不意打ちなんてしてませんよ、ふふっ」
少し涙目になっているぼんさんはかわいいなぁ、て思いながら、夜の街の景色に目を戻す。
この時間が、なんだか幸せに感じてくる。
「…おんりーちゃんは、きれいだねぇ」
「…は?」
「夜景を見て微笑む横顔が、きれいで儚くて、抱きしめて捕まえておきたい。」
「…そ、そうですか…」
「おやおやぁ、なんか赤くなってるー?」
「……。」
僕は恥ずかしさのあまりぼんさんを睨みつけると、そこにはにやにやとするぼんさんの顔があった。
「耳まで赤くなって、そんなに照れるなんて珍しいねぇ。」
「ぼんさん、殴っていいですか?」
僕は右手をぐーぱーを繰り返して殴る準備をする。
それを見たぼんさんは慌てて謝ってくる。
「わっわっわっ!うそうそうそ!ごめんて!殴らないで?!」
「こーゆー時のぼんさんはかっこ悪いですね」
「ちょ!今それを言う?!」
「僕をからかうからですよ」
僕が笑うと、ぼんさんは困ったように苦笑する。
「ぼんさん」
「なぁに?」
「今日は付き合ってくれてありがとうございます。」
「こちらこそ、きれいな夜景を見せてくれてありがとうね。」
僕はまた隣に座るぼんさん見る。やっぱりかっこいいなぁ。
「…はぁ。」
「どうしたの?ため息ついて?」
「何度見てもぼんさんがかっこよく見えて…。おかしいな。」
「…おかしくないでしょ。おんりーちゃん、こっち見て」
ぼんさんに言われて顔を向けると、ぼんさんの手が僕の顎に添えられ、唇を重ねる。
「んん?!」
チュッと言うリップ音と共にぼんさんの顔が離れる。優しげな余裕のある表情をするぼんさんに対して、僕の顔は火のように熱く真っ赤になってる事だろう。
「…あ、あ…!ぼ、ぼんさん!」
あまりの衝撃に言葉を失っている僕を見て、またまたニヤニヤ顔になっていくぼんさん。
「余裕のないおんりーちゃんの顔、初めてみるねぇ」
「きゅ、急にあ、あんなこと…!!あー!もう!帰ります!」
「あ!ちょ、まってよ!おんりーちゃん!」
帰ろうとする僕をぼんさんが慌てて追いかけてくる。そして、僕は急に振り返りぼんさんの胸ぐらを掴んで強引に口付けをする。
「?!?!」
それから、唇を離しぼんさんの耳元で囁く。
「次はこうはいきませんからね?覚悟しておいて下さい。」
囁き終えると掴んでいた胸ぐらを離して、ぼんさんに背を向ける。
最後に見たぼんさんは、右耳を手でおさえて顔を真っ赤にしていた。ずり落ちたサングラスから覗く紫色の瞳は呆然としたように見開かれていた。
こうして、僕とぼんさんの初デートは終わりを迎えた。