色々ありすぎたものの、何とかひと段落ついた。
メドゥーサもいないし、巨大なメテオも、メテオゴンもいない!
これにて一件落着だ!
ジンペイ達6人は、やりきった感に満ち溢れて夕日を眺めていた。
と、マタロウは少し離れた所にエマを見つけ、駆け寄る。
マタロウ「エマさ~ん、皆はこっちですよ~」
エマ「あ、マタロウさん!」
…しかし、その時!!
メテオゴンに潰されてぺちゃんこになっていたメドゥーサから、
不気味な光が発生し、その中から、鋭いカマの様な形の手を
持つタマゴ型の怨霊…
『怨念のタマゴ』が生まれてしまった!
皆はただただ驚くしかない。
ジンペイ「なんだ、あれは!?」
コマ「まだメドゥーサは完全に死んでいなかったんだ!」
アゲハ「そんなのアリ!?」
コマに続いてアゲハが驚きの声をかけると、
すぐさま怨念のタマゴは口からネバネバのスライム状の何かを放ち、ジンペイ、
コマ、アゲハ、メラ、フブキの5人を捕らえてしまった!
これはかなりの超絶大ピンチだ。
スライムが体に纏わり付き、思うように身動きが取れない。
タマゴ「ゲヘヘヘヘ…動けまい。どうやら、私の勝ちのようだねえ」
最後の最後で、こんなのアリ!?
と、怨念のタマゴはマタロウとエマとウー助に気付く。
タマゴ「おろ?こっちにもいたのかい。なら、食ってやるか…ア…ハハハハ…」
マタロウ「えっ…えぇ~!!」
そんなの聞いてない、とばかりに慌てまくるマタロウ。でもエマとウー助は守らなくては。
怨念のタマゴは、自分達との距離をじりじりと縮めていく。
(ジンペイ君達は戦えない。たまたま・・・・で勝てるかな…。でも、僕がエマさんを守らなきゃ…!)
マタロウは覚悟を決めてエマを庇って前に出た。怨念のタマゴは奇妙な声を上げながらマタロウ達の方に迫る。
マタロウは、とてつもない恐怖を感じながらも、必死に耐える。
足がガクガク震える。自分がいたところで何も変わらないのではないか。
YSP能力も持ってない、たまたま・・・・でここまで来たような自分が、果たしてエマを守れるのか。
ジンペイやアゲハ、コマやメラのようなYSP能力者が動けないと言うのはかなりデカい。
マタロウ「そう…やっぱり僕はたまたまの男なんだ…」
まずい。このままではマタロウが完全に自信をなくし諦め、エマとウー助どころか、
この場の全員の安全は全く保証されなくなってしまう。
気付けば、アゲハの口は動いていた。
アゲハ「…本当に、そうなの?」
マタロウ「えっ…?」
マタロウの動きが止まる。
マタロウは、さっきよりもっと古い記憶を思い出していた。
まだ幼稚園生だったある日のこと。
おじいちゃんの家の縁側で、子供がやるには難易度が高いプラモデルを、作ってみたことがあった。
だけど、なかなか上手く組み立てられない。
だから、途中で諦め、投げ出そうとしたんだ。
マタロウ「もうムリ!できないよ!」
すると、マタロウの隣に、おじいちゃんが腰掛けた。
おじ「マタロウ、投げ出す前に、『つくりあげたい』と強く心に刻んでみなさい。
人は、努力すれば、報われるんだ。努力をし、工夫をし、最後まで諦めずに向かい合う。
マタロウには、そんな人間になって欲しいんだ」
そう言うと、おじいちゃんはマタロウにパーツを手渡した。
(そうだ!思い出したぞ)
『努力して、工夫して、向かい合え』…
いつも、おじいちゃんはそう言っていた。
(あのときだって…)
そう、あのときとは、おじいちゃんが亡くなる間際のことだ。
おじいちゃんのおかげで最後まで組み立てられたあのプラモデルのロボットを握りしめ、
マタロウは布団に寝ているおじいちゃんにすがりつき、泣いた。
マタロウ「じいちゃん…死ぬな…」
おじ「…人はいつか死ぬ。お前たちより先にいくだけだ」
マタロウ「じいちゃん!じいちゃんだけが友達なのに…」
おじ「友達がいなければ、つくればいい。努力して、工夫して、
目の前にあるものと向かい合う、それで、全てうまくいく…」
マタロウは、少しずつ声がか細くなっていくおじいちゃんの手を握り締めた。