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阿部side
放課後
今日のテストの結果が納得いかず、図書室にこもって勉強していた。
周りはすごいすごいと言ってくるけど、
100点以外は、意味ないんだから─────
気づけば時計の短針が5を示そうとしていた。
時間を忘れて集中してしまう。これは俺の悪い癖。
こんなんで誰かを困らせこと、あったな…
藤澤君。
不意に思い出した。
そういえば最近一緒に帰ってないかも。
あの日から、よく話し掛けてくれるようになった。
宿題できたよだの、次の授業好きかどうかだの、他愛もない話だけど、すごく嬉しかった。
けどいきなり、
チャイムと同時にどこかに行くようになった。
ホントは追っかけて行きたい所だけど、なんか事情あるのかもしれないし、むやみに深入りしない方がいいかも…
気分転換に屋上でも行こうかな。
思い立って、図書室を後にした。
本来は立ち入り禁止だけど、ドアノブが緩くなっているのを知っている。開けようとドアに手をかけた時。
声がした。
誰かいる。咄嗟に手を離して、聞き耳を立てる。
どこかで聞いたことある。
複数人いるようだ。
藤澤君?
全部察した。
最近やたらとK組の奴と会話が多いと思ったら。
授業が終わったらフっと姿を消すのも。
頭の中で数回イメトレしてから、ドアを開ける。
藤澤side
どのくらい時間が経っただろう。
今日は機嫌が悪いらしい。よくわからない言葉を吐きながら、叩いてくる。
不幸中の幸いなのか血は出てなくて、痣はメイクで隠れるものだった。
ただ、最近阿部君と会話が減ってきてる事に気付いた。
恐らく一緒に帰る事も少なくなり、話すタイミングが失われたからだろう。
もう、愛想尽かされたかな。
これも全部、こいつの所為。
人の人間関係までぶち壊しやがって。
色々思考を巡らせていると、
ドアが開いた。
そこには、今一番会いたくて、会いたくない人がいた。
阿「何してんの?」
K「ア?」
「…………」
僕が知ってる優しい目じゃなくて、敵を発見したような、氷のような目だった。
K「何、お前にカンケーないじゃんw」
阿「何してんのって聞いたんだけど」
一歩も引かないと言うように語気を強める。睨みを利かせる。
K「あんま下手な事すっとこんななるよ?」
冷たく僕を指さすように目線を投げる。
反射的に下を見てしまう。
阿「あ、そうだぁ」
余裕ありまくりの様子で話を続ける。
阿「俺の父親弁護士なんだわ。今の状況、言ったらどうなるかな?もちろん先生も味方に付けられるだろうね」
K「……………チッ…クソが」
「…う、」
最後に一蹴りして、乱暴にドアを閉めて去って行く。
同時に阿部君が駆け寄ってきて、抱き締める。
阿「………ごめん、気づかなくて。帰らなくなった時点で察するべきだったよね。」
「なんでそんな謝るの。元はと言えば僕が…」
阿「そんなことないでしょ!…俺、あのバンド大好きだったよ。藤澤君のピアノの音色好き。」
僕の言葉を遮るように熱弁してくれる。
こんな風に思ってたなんて。
愛想尽かされたなんて一瞬でも思った自分がバカみたい。
僕、阿部君の事好きだ。
気付いた。僕、阿部君に惚れてる。
勉強するときの横顔も、人と話すときのあの安心感ある笑顔も。
阿「……ね、うち来てよ。手当てするから」
「、……うん」
「お風呂ありがとー。色々借りちゃってごめんねぇ」
阿部君に家に呼ばれて、蹴られて汚れてるだろうとお風呂を借りた。
流石に2人で風呂はマズかったので、一人でなんとか身体の痛みに耐えながら風呂に入った。
薬を塗ってもらいながら言った。
阿「ねぇ、俺の事下の名前で呼んでよ。堅苦しいの好きじゃない」
「…亮平君、ね。じゃあ僕の事も藤澤以外で呼んでよ」
なんて言ってくれるかな、とワクワクしながら待つ。
阿「じゃあ…涼ちゃんで」
「やっぱそうかぁ笑」
一通り過ごさせてもらったあと、ずっと思ってた事を伝えようと思った。
このチャンスを逃すまいと、一生懸命考えた。
「…あのさ、亮平君」
阿「なぁに?」
行け。行くんだ藤澤涼架…
「高校来たときからずっと、好きでした。付き合って下さい」
阿「…………」
小さく息を飲むのが聞こえた。
ああ、ダメだったかな。顔を上げようとした瞬間。
阿「いいよ、お願いします」
「…え、マジ?」
ゆっくり顔を上げる。そこには笑顔の亮平君がいた。
阿「俺も好きだったの。よろしくね!」
そう言うと飛びついてきた。
しばらく笑い合って、結局泊まることにした。
この瞬間が、一番しあわせだったかもしれない。
お わ り
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