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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第20話 〚壊れた空気と、戻る場所〛(澪視点)
昼休みの終わり。
私たちは、
いつの間にか八人になっていた。
澪、えま、しおり、みさと、りあ、
海翔、玲央、湊。
特別なことは話していない。
どうでもいい話ばかり。
でも、
それが楽しい。
「湊、今日ボケないの?」
えまが言うと、
湊は少し考えてから、
「今日は床が静か」
真顔で言って、
全員が笑った。
その時。
「……何それ」
後ろから、声。
振り向くと、
真壁恒一が立っていた。
「白石だっけ?」
湊を見る。
「キャラ作り?
それとも、そういう人?」
一瞬で、
空気が冷える。
誰も、笑わない。
湊の表情が、
固まった。
「……」
言葉が、出ない。
恒一は、
自分で空気がおかしくなったのに気づいて、
一瞬、戸惑った顔をした。
(あ、違った)
そんな顔。
「……ごめん」
でも、
どう続ければいいか分からず、
「じゃ」
それだけ言って、
去っていった。
残ったのは、
重たい沈黙。
湊は、
俯いていた。
肩が、
ほんの少し震えている。
目元が、
赤い。
(……傷ついた)
えまが、
一歩近づく。
「湊」
しおりも、
みさとも。
りあが、
少し強めに言った。
「ああいうの、気にしなくていいから」
「ほんと」
玲央も頷く。
「俺ら、普通に面白いと思ってるし」
海翔は、
何も言わずに、
湊の視界に入る位置に立った。
逃げ道を、
塞がない距離で。
「……」
湊は、
しばらく黙っていたけど、
ふっと、
息を吐いた。
「……ごめん」
「え?」
「ちょっと、昔思い出した」
でも次の瞬間——
「でもさ」
顔を上げて、
涙目のまま言う。
「こうやって集団で慰められるの、
正直、初めて」
「だから——」
「ちょっと、面白い」
その言葉に、
思わず笑いが漏れた。
「なにそれ」
えまが笑う。
「泣きながら言う?」
「新ジャンル」
りあも言う。
湊は、
つい釣られて笑ってしまった。
「……だめだ」
「笑うと、
傷、消える」
本当に、
さっきまでの影が、
消えていく。
私は、
胸に手を当てた。
心臓は、
静か。
でも、
不安はなかった。
壊れた空気は、
戻せる。
ここには、
戻る場所がある。
湊は、
もう一人じゃない。
コメント
1件
誰も知らない、高嶺の花の裏側3の第16話〜20話を公開するのが遅くなってすみませんでした。すっかり忘れてて申し訳御座いません。