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湊

1,222
(RAN視点)
相変わらず顔を出さないナオヤの代わりに、今日もセイトさんが店を手伝いにやって来ている。
セイトさんがいる間は俺が接客を担当し、2人は相談をしながらその他の業務をこなしていく。
俺が離れている間も、カウンターから2人の話し声がずっと聞こえてきて、仕事をしながらもつい耳が傾いてしまう。
「カイリュウ、それ重いやろ。俺持つで。」
「え?あ、おん、あんがと」
「どこ運ぶ?」
「えーっと、そこ……セイト、お前汗すごいで?笑」
「いやこの店が暑すぎんねん!なんでそんな涼しい顔できんねん、ほんま…笑」
「ふはっ、おい、荷物に汗垂らすなよ?笑」
「いや無理やって。……なぁ、ちょっと俺の汗拭いてや。」
「は?なんでやねん、」
「見たら分かるやろ、両手塞がってんねん」
「あ〜、…も〜、ちょっと待っとれ。」
会話の流れが気になり2人に目をやると、タオルを持ってきたカイリュウが、セイトさんの額を拭き始めた。
「っ、うわ、!つめたっ!!」
「ははっ、!キンキンに冷えたやつ。笑」
「なんやねんっ、冷たいやつなら先言うてやっ、」
「こっちの方が気持ちええやろ、?笑」
「っ、…う、うん…っ、」
セイトさんの反応に、楽しそうに笑うカイリュウ。
その顔を見ると、なぜか胸がきゅっと苦しくなった。
カイリュウを見つめるセイトさんの目は、嬉しそうで、どこか甘い眼差しで、完全に、恋をしている目だった。
「っ…、」
息が、苦しかった。
なんでやろ。
セイトさんが来ると、どこか嬉しそうで、楽しそうで。
そんなカイリュウを見ていると、なんだか寂しくなる。
ナオヤがいない今、2人が、もしかしたらと。
もし、そうなったら。
ナオヤは、……俺は、どうなるんやろう。
「ラン?」
「えっ、?」
そんな事を思っていると、ふいにカイリュウに名前を呼ばれてハッとする。
「セイトもう戻るから、ランもお礼言うて。」
「っ、あ、…うん。ありがとうございました、」
「今日もほんまにありがとうな、セイト。」
「ええってそんなん。…なぁそれより、ナオまだ落ち着かへんのかな。……俺、何回も電話してんけど、出てくれへんくて。」
セイトさんの言葉に、海で見かけたナオヤの姿を思い出す。
明らかに、避けるような行動を取っている。
やっぱり、ナオヤを見た事は言わない方がいい気がして、黙って2人のやり取りを聞いていた。
「お前の電話も出えへんの、?」
「せやねん、…ナオ、ほんまは何かあったとかちゃうよな、?」
「…まぁ、心配あらへんよ、」
“セイトとなんかあった”と察していたカイリュウが、心配をかけまいとしているのか、そう小さく返した。
少し納得のいかないような顔をして、セイトさんが続ける。
「……なぁ、ナオがこんなに顔出さへんことって、今まであったん?」
「……え、?」
「……俺にも頼ってくれへんって、なんかおかしいな思てん、」
そうセイトさんが聞くと、少し目を泳がせるも、口角を上げるカイリュウ。
「忙しいだけや。…心配なんはわかるけど、そっとしたって。」
「……なんか分かったら教えてや、?」
「おん、分かっとるて。……ほら、はよ行かな会社で怒られんで?」
「あっ、あかんそうやった…っ、じゃあ、また!おつかれさん、頑張ってな?」
バタバタと帰っていくセイトさんに手を振りながらも、少しだけ無理をしているような表情のカイリュウが気になっていた。
***
(SEITO視点)
海の家を離れ、車に乗り込むとナオに電話をかけた。
しばらく掛け続けても、やっぱり出ない。
“忙しいだけや”
そう言いつつも、カイリュウの表情が少し硬かった。
何かを誤魔化した気がしたカイリュウの言葉が引っかかったまま、会社へと車を走らせた。
………………
「……ナオ、?」
「…おん。わかるやろ?顔の綺麗な、海の家の息子さん。」
会社に戻り、俺は同僚にナオの相談をすることにした。
隣のデスクで仕事をしていたところに声を掛けると、俺に向き合い話を聞いてくれる体勢になった。
エイキは、入社後の研修で同じ班になった事がきっかけで意気投合し、それからずっと1番仲が良い同僚だ。
たまに俺が凹んでいると重すぎるくらいの熱量で励ましてくるような、優しくて熱い性格の男。
アホな俺と違って頭も良く、相談すると俺には考えつかないような事を言ってくれることもあって、今までもよく色んな相談を持ちかけていた。
それに、俺があの海の家を担当しているのは去年からの話で、それまではずっとエイキの担当先だった。
だから、ナオの事は知っているはずだ。
そう思って、今までこういうことが無かったか、話を聞いてみようと思った。
「…うん、知っとるよ。」
「いや…、その、ナオがさ。最近、店に来んくなってもうてん。」
「え?…なんで、?」
「分からへん…、本業はカメラマンやろ?そっちが忙しいらしいねんけど、…なんかちょっと、心配で。」
いつもなら、何かあっても俺に甘えてきてくれるのに。
俺にも言ってくれへんなんて、きっとよっぽどの事があったに違いない。
……もしかしたら、本当に忙しいだけかもしらへんけど。
でも、ナオは自分が忙しいからって、カイリュウやランを放っておくような性格やない。
そこにも、違和感があった。
「……セイト、もしかしてさ。休憩、そっちに使ってへん?」
「え…っ、」
「……ナオの代わりに、手伝ったりしてへんよな?」
「……っ、いや…」
いきなり俺の行動を見抜いたエイキの発言に、動揺する。
図星で黙っていると、はぁ、と小さく溜息をつき、俺の肩をぽん、と叩いた。
「……どうりで、お昼誘っても断るわけやんな?」
「それは悪いと思っててん…」
「気持ちは分かるけど、なんでセイトがそこまでするんよ。それはナオの仕事やろ。」
少しだけ怒ったように、正論をぶつけてくるエイキ。
怒るのもまぁ、無理はない。
実際、会社的にも良くない事だろうし。
「……そうなんやけど、…どうしても、放っておけへんねん、」
「……別の理由でもあるん、」
「っ、…」
鋭いエイキ。
あぁ、さすがやな。
こいつ、ほんまに頭の回転が早い。
大きな目でじっと見つめられ、少し迷ったけど打ち明ける事にした。
「……カイリュウのことも、知ってるよな、?」
「え?カイリュウ…?うん、」
「…や、…その、……俺、さ、……カイリュウの事、好きやねん…」
「えっ、?」
目を丸くして驚くエイキに、言ってしもうたー、と少し恥ずかしくなる。
でも話の流れの手前、打ち明けるしかなかった。
「…っ…じゃあ、カイリュウを助けたくてってこと?」
「………まぁ、それもあるし、あと…」
「情報多いな。笑」
「ごめん…笑」
「あと?」
「…あと、……ランと2人なのが、気になってん、」
「ラン、?」
「あ、そうか。エイキは知らへんのか…今年から、ランっていう男の子がバイトで新しく入ってん。」
「へぇ、…あ、その子に妬いてるんや?笑」
「っ、妬いてへんけど、…なんか、最近入ってきたくせに、やたらカイリュウと仲良いねん…」
「妬いとるやん。笑 ……ふーん、…そっちか、」
そう小さく呟くと自分の席に向き直り、仕事を再開しながらだんだんとニヤニヤし始めるエイキ。
「な、なんやねん?」
「別に?…で、どこが好きなん?笑」
「っ、…いやっ…いつの間にかっていうか…」
「へぇ〜?…カイリュウか。攻略難しそうやな。笑」
「……っ、え、やっぱそうなん、?」
パソコンのキーボードをカタカタと打ちながらそう言うエイキに近づき、小声でそう聞いてみる。
「カイリュウってフレンドリーやけど、結構かわされるやんな、?」
「っ、え、そう!そうやねん!!」
「しーっ!声でかい、笑」
思わず共感して、声がでかくなってしまった。
……なんや、そうやん。
元々担当者やったエイキなら、カイリュウの事も色々知ってるはずやん。
もっと早く打ち明ければよかった、なんて思いながら、気になってぐいぐいと話を聞き出した。
「……っ、な、なぁ。…カイリュウって、付き合っとるやつとかおらへんよな、?」
「さぁ?どうかな。笑」
「え…っ、……おるかもしらへんってこと、、?」
「ふふっ、ウソウソ。俺が担当やったときはいなかったはずだよ」
「そ、そっか…」
「……まぁ、海の家やし、ナンパはされとったけどな?」
「は?な、ナンパっ、?」
「腕引っ張られて泣きそうになってたから、俺助けたことあるし。」
「っ……おいなんやそれ、どこのどいつやねん、ど突き回したるわそんな奴。」
「……めっちゃ好きやん、カイリュウのこと。笑」
「……、…おん、めっちゃ好きやで。」
「あ、ハッキリ言った。かっこい。笑」
ナオの話をしていたはずなのに、あれ?どこで切り替わったんや、と思いながらも、エイキのペースに流されるように、いつの間にかカイリュウへの想いをぶちまけていた。
いやあかん違う違う、と思い直し、ナオの話に戻す。
「…いや、カイリュウのことも相談したいねんけど、今はナオや。…なぁ、エイキの時も、ナオが来うへんようなったとか、あったりした?」
そう聞いてみると、キーボードを打つ手が止まり、少し考えるような顔をした後、また手を動かし始めた。
「……ナオは、そういう子やから。」
「え、?どういうこと?」
「……セイト、ごめん。ちょっとこの仕事急ぎやから、また後で聞くな?」
「…おん、わかった……ごめんな、?」
「ううん。」
パソコンから目を離すことなく、ナオの事を少し突き放すような言い方をしたエイキの様子が気になりつつも、仕事に戻った。
***
(RAN視点)
朝、出勤すると、調理場で仕込みをしているカイリュウの姿があった。
「……あ、ラン、おはようさん。」
「…おはよう、カイリュウ、」
俺に気付いて挨拶をしてくれたカイリュウは、なんだか
いつもより元気が無い気がした。
ずっと、ナオヤがいない分働き詰めで、俺やセイトさんがいるにしろ、自分が今は責任者だと気を張っているはずで。
カイリュウの様子が心配になり、声を掛ける。
「……カイリュウ、大丈夫?もしかして体調悪い?」
「…え、?んや、そんなことあらへん。大丈夫やで、」
「ほんまに、?」
「ほんまやって。…ほら、はよ手伝ってや、?」
「あ、うん…っ、」
調理場に入り、カイリュウの隣で仕込みを手伝うと、カイリュウの目線が俺の手元にきていることに気付く。
「……カイリュウ、?」
「あ、いや、…やっぱお前上手いなって。笑」
「そう?笑」
「おん。……ランも、入ってからしばらく経ったもんな。」
「そうやね、……俺、役に立てとう、?」
「え?当たり前やろ。何言うてんねん?」
なんとなく、最近はセイトさんが来ると安心したような顔になるカイリュウに、寂しさを覚えていた。
俺じゃ、やっぱり頼りないよな、なんて、新人の分際でそんな事を考えたりして。
……でも、俺も、俺だって、カイリュウの力になりたい。
「……じゃあ、もっと頼ってよ。」
「え、?」
「……俺じゃ、頼りないかもしれんけど、…俺も、カイリュウの力になりたいけん。」
「………っ、ふは、っ、笑」
「えっ、なんで笑うんよ?あ、馬鹿にしとうやろ、?」
「してへんわっ、…ちゃうねん、……ランがおって、よかったなって思ってん。」
「…っ、、え…っ、」
思わず手を止めてカイリュウを見ると、ん?とニコッと微笑まれて、嬉しそうなその表情にドキドキと心臓が音を立てた。自分の身体に戸惑いながらも、冷静さを取り戻すように仕込みを続ける。
「っ…カイリュウ、…やけん、無理はせんでね、」
「……おん、ありがとうな、?」
「おはよー。」
「お、セイトや、おはよ」
「…セイトさん、おはようございます、」
セイトさんの声がして、調理場に姿を現すと挨拶を交わし合う。
「……カイリュウ、なんか元気あらへんな。」
「え、?」
挨拶するやいなや、カイリュウの顔をじっと見つめ、すぐに元気が無いことを言い当てた。
……やっぱカイリュウの事、よく見てんな、この人。
「や、そんな事ないで、?」
「無理しとらん?」
「してへん、…おー、今日も荷物多いな。」
「話逸らすなや。」
「っ、…おい、せいと…っ、」
心配させまいとしたのか、話を逸らしたカイリュウの腕を掴むセイトさん。
様子を窺いながら1人で荷物に手をつけるも、掴まれている腕に視線がいってしまう。
「カイリュウ、体調悪いん?」
「…違うって言うてるやろ、」
「ほんまの事言うてや、?」
「大丈夫や。なんもあらへん、」
「……心配やねん、カイリュウのこと、」
「っ…、」
セイトさんの手が、カイリュウの頭を撫でて、少し動揺した顔をするカイリュウ。
そのやり取りを見て、荷物を置いて思わず2人に近寄った。
「……大丈夫です、俺がちゃんと見とるんで。」
「…ラン、?おい…っ、」
セイトさんに掴まれていない方の腕を掴んでそう言うと、俺の手を見つめた後、セイトさんが手を離した。
「……また、後で来るから。ラン、それまでは頼むな、」
「っ…、はい、」
セイトさんが店を出ていくと、自分の強引さに後になってびっくりして、カイリュウの腕を離した。
「ごめん、カイリュウ…っ、」
「…なんで謝るねん、心配してくれたんやろ、?」
「そうやけど、いきなり腕掴んだし、」
「ふは、真面目やな、ほんまに…」
やっぱり、声に力が無い。
心配になって、しつこいかと思いながらも声を掛ける。
「カイリュウ、本当に大丈夫…、?」
「大丈夫やって。…ほら、荷物、まだ残ってんで。」
そう言って残りの荷物に手をつけ始めるカイリュウ。
「うん…、……俺、奥に持って行ってくる、」
「おん、頼むわ」
店の奥に荷物を運び、置き終わるとこっそりポケットからスマホを取り出した。
『カイリュウの体調が悪そう。一度お店に顔を出してほしい』
一か八か、そう文字を打つとナオヤに送信し、スマホをしまってカイリュウの元に戻った。
***
お昼過ぎになり、店にいた最後の一組が帰っていく。
一息ついてカウンターに向かうと、そこにいたカイリュウが少しだけふらついたように見えて、慌てて走り寄って身体を支えた。
「っ、カイリュウ、?!大丈夫?!」
「…っ、だいじょうぶやから、」
「大丈夫やないやろ?!ええけん座って!」
カイリュウを無理矢理引っ張って椅子に座らせると、目の前にしゃがんで顔を覗き込んだ。
明らかに辛そうな様子のカイリュウに、思わず手を握って本音を漏らした。
「カイリュウ、…本当は、ナオヤがいない分無理しとったんやろ…っ、?お願い、もう無理せんで。カイリュウが辛そうなの、俺見とられん。」
目を見つめて、手を握る力を強めると、カイリュウが俯いて、唇を震わせた。
***
(KAIRYU視点)
ランに手を握られて、心配そうな顔で見つめられて、その瞬間に、ふっ、と限界がきた。
多分、セイトは自分に気がある。
それを、気づかないふりをしていた。
2人で飲みに行った日、キスをされそうになって、ハグをされて、それを無理矢理酔いのせいだと片付けていた。
でも、セイトがふいに意識させようとしたり、
手伝うと言ってくれて、俺が心配だと言ってくれたり、
考えないようにしてたけど、
頭を撫でられて、やっぱりそうなんやなって動揺した。
ナオヤがいなくなって、多分二人の間で何かがあったんだと悟った。
ナオヤの、涙目で俺を見たあの時の顔。
きっと自分のせい。
ハッキリとは分からへんけど、セイトの気持ちが、自分に向いているせい。
セイトの気持ちを変えることは、俺にはできない。
俺がナオヤに出来ることは、仕事くらいしかないから。
そう思って、穴を埋めようと必死だった。
……それなのに、結局セイトに頼って、挙句の果てに、セイトと話すと、やっぱり楽しいと思ってしまう。
俺にとっては、気の合う友達で。
それも、あかんのかな。
どうしたらいいか、わからへん。
どっちも、俺にとっては大切やから。
そんな事をぐるぐる1人で考えて、一心不乱に仕事をしていたら、いつの間にか限界を迎えていた。
正直、俺には味方がいない気がしてた。
俺がどう転んでも、どちらかを傷付ける。
ランに、”頼ってよ”と言われた時、嬉しかった。
それは、仕事の話やって分かっとるけど。
それでも、ランが、いてくれてよかった。
俺を見つめてくれる切実な目に、少しだけ、甘えたくなって、ランの手を握り返した。
「っ、……らん、おれっ、……」
声を発した途端、泣きそうになって、みっともないなんて恥ずかしくなった瞬間、ランに抱きしめられた。
「うん…、何も言わんでええよ、かいりゅう。……ひとりで、頑張っとったんよね、」
「っ、らん、…っ、」
全てを包み込んでくれるようなランの言葉に、気持ちを分かってもらえたような気がして、背中に手を回した。
「……かいりゅうは、何も悪くないけん。…自分責めんでええけんね。そんなんしたら、俺許さんよ。」
俺の顔を覗き込んで、ランの手が、優しく頭を撫でてくる。
セイトに撫でられたときの、少しの罪悪感が混じった感情とは違う、暖かくて、肯定してくれるような気持ちになった。
「っ、らん……、」
俺に感情移入したのか、ランの目が、少し潤んでいた。
じっと見つめられて、その目に吸い込まれるように、
お互いに、顔を、近づけていく。
「っ、なんしてん、」
その声にハッとして、ランと同時に声がした方を見ると、セイトがそこに立っていた。
「っ、せいと……っ、」
言葉を失い、悲しそうな顔で、固まったままのセイト。
動揺した俺の手を、ランが強く握った。
何も考えられず、何も言葉にできないでいると、セイトがゆっくりと口を開いた。
「……っ、ごめん、……邪魔したな、」
「っ、せい……っ、」
そう言うと、そのまま背を向けて店から出ていった。
***
(NAOYA視点)
セイちゃんに気持ちを打ち明けられてから、ずっと避けるように、海の家から逃げていた。
こんな気持ちは初めてで、
会って、どんな顔をすればいいのか、わからへんかった。
『カメラマンの仕事が忙しくて、しばらく行けそうにないねん、ごめんね』
そうカイリュウに嘘を送信すると、『わかった、頑張ってな』と優しい言葉が返ってきて胸が痛んだ。
カイリュウにも、ランちゃんにも、迷惑をかけてる。
セイちゃんからも、何度も何度も電話がかかっていた。
ナオ、ほんまに、ほんまに最低なことしてる。
分かってるのに、気持ちがついてきてくれへんくて。
無心でカメラマンの仕事をこなして、空いた時間は全て、海をふらついては、声を掛けてきたどうでもいい男達と過ごした。
結局、ナオは誰かと心で結ばれるなんて事は一生ない。
こうして、身体を求めてもらうことしか、存在価値がない。
そう、開き直りつつあった。
仕事を終え、そういえば今日全然スマホ見てへんな、なんてぼんやり思いながら通知を確認すると、ランちゃんからラインが来ていた。
『ラン:カイリュウの体調が悪そう。一度お店に顔を出してほしい』
「っ…え、?!」
ごめん、カイリュウ、ほんまにごめん……っ、
あんなにうじうじと塞ぎ込んでいたのに、今はその気持ちしか出てこなくて、通知を確認した瞬間、仕事場から出てすぐに海の家に向かった。
………………
海に着いて、海岸に続く階段を駆け下りると、こっちに向かって歩いてくるセイちゃんを発見して、一瞬身体が固まる。
焦って思わず引き返しそうになった身体が、セイちゃんの顔を見て止まった。
セイちゃんが、今にも泣きそうな顔をしていた。
その顔を見た瞬間、足が勝手に動いて、セイちゃんに近づいていく。
「っ……、セイちゃん…」
「……っ、ナオ、?!」
小さく名前を呼ぶと、ナオの声にびっくりしたセイちゃんがすぐに顔を上げて、すぐにナオの肩を掴むと怒ったような表情を見せた。
「おいっ、ナオ!!どこに行ってたん!!電話も出てくれへんし、ずっと心配しとってんで?!俺、また、前みたいになってへんかって、心配で…っ!」
「っ、ごめん…ごめんなさい…っ、でも、…っ、なお、なおだって…っ、」
「っ……ごめん、いきなり怒って…っ。話も聞かへんと、ごめんな…っ、また、辛いことあったん、?……っ、ごめん、ナオ、今、ちょっと話聞いてあげられへんねん、ごめんな……っ、」
さっきまで怒っていたのに、急にいつもみたいに優しくなって、そうかと思えばどんどん泣きそうになるセイちゃんに、胸が締めつけられる。
「……っ、セイちゃん、どうしてん…っ、セイちゃんこそ、なんかあったんとちゃうん…っ、?」
「っ……、ナオ、……っナオ、…俺、、っ、」
「………話して、せいちゃん。」
ここにいるってことは、きっと海の家からの帰りで。
多分、こんなに感情が動かされるのは、カイリュウとのことで。
まだ、気持ちに余裕は無かったけど、泣きそうなセイちゃんを放っておけない。
手を掴んで、話して、と促すと、セイちゃんがゆっくりと口を開いた。
「っ……、さっき、…カイリュウと、…ランが、…っ、キス、しようとしてるの、見てん……っ、」
「…っ、…え…っ、?」
「っ……おれ、…っ、びっくりして、出てきてもうてん……っ、……ははっ、…ほんま、かっこわる、、」
掴んでいたセイちゃんの手は、震えていて。
初めて見た、セイちゃんの涙が、どんどん頬をつたって流れていくのを見て、
……そしたら、いても立ってもいられなくて。
「……っ、セイちゃん、…っ、ねぇ、…ナオは、セイちゃんしか見てへんよ…っ、?」
「……え…っ、?」
「っ、……ナオにして。…っ、ナオにしてよ、セイちゃん……っ、」
セイちゃんの手を引っ張って、引き寄せるとキスをした。
「っ、、ナオ…っ、?」
「……っ、ごめん……っ、」
ああ、……あかん。
手、出てもうた。
……やっぱりな。
ナオは、身体でしか、人を愛せへんのや。
セイちゃんでさえ。
本気やと、思ってたのに。
……本気、やのに。
「……っ、ごめんね、せいちゃん。」
呆然とするセイちゃんを残して、海の家に向かった。
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胸熱です(語彙力皆無)
やばいですやばいですやばいですありがとうございます(語彙力) ほぼ過呼吸なりながら読んでました小説にこんな感情移入するの初めてレベルで…👉👈 続きめちゃくちゃ楽しみにしてます🥹
今回も良すぎるてぇぇ 続き待ってるどぉぉぉ