グビッ
飲み干した僕を見て
ナムジュナは
『ちょ、ホソガっ、大丈夫か?』
と心配そうに言ってきた
でも
僕は気にせずに、空になったグラスを眺めた
もし…
あの人と出会っていなければ…
僕はそんな事を思った
ダメだダメだ
そんな考え
忘れないと…
「すみません、ギムレットお願いします」
僕は次のカクテルを頼んだ
するとナムジュナが
『すみません、ギムレットじゃなくてベルモントで』
と注文を変えられた
〈あ、はい、かしこまりました〉
bartenderも少し驚いていた
「ナムジュナ、どういうつもり?」
僕が睨んでも
ナムジュナはただ黙って僕の目をずーっと見つめてきた
僕にどうこうしろと訴えかける事なく
ただ純粋で真っ直ぐな瞳をしていた
その間に
カクテルが出来たらしく
〈ベルモントになります〉
前にグラスが置かれた
ナムジュナが受け取り
『ん』
と言って僕の前に置いた
僕がナムジュナを見ると
先程と同じ目で僕を見つめていた
僕は怒るのをやめ
目線をカクテルに戻した
「”優しい慰め”、か……ありがとう」
そう言って
少しずつベルモントを口に運んだ
あの人の事
どうやったら忘れられるかな〜?…
ふと、ナムジュナに目を向けた
暗めの紫色の髪
明かりによって光る瞳
整った鼻筋
厚い唇
耳で光るピアス
幼馴染で、昔から一緒にいるけど
ナムジュナって、こんなにかっこよかったっけ?
そういえば…
ナムジュナの恋愛対象も…
ぼーっとしながら
ナムジュナを見つめていると
『ん?ホソガ、どうした?』
ナムジュナが僕の視線に気付き
不思議そうに見てきた
「ううん、何もない…」
そう答えて
少し残っていたベルモントを飲んだ
僕は、考え込んだ末
「シェリーをお願いします…」
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ギムレット…遠い人を思う
ベルモント…優しい慰め