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「…俺さー、つぼ浦のこと好きだわ。」


ずっと胸に秘めて隠し続けていた感情は、いとも簡単に、無意識にぽろりと口から零れてしまった。


「どうしたんすか急に。俺もアオセン好き寄りっすよ。」


しまった、やってしまったと後悔と緊張が押し寄せたが、いつもと変わらない返答が来て安堵する。しかし自身から思いもよらぬ言葉が出てしまった青井は、パトカーを走らせながら身体中が熱くなるのを感じていた。


「ははっなんだよ「寄り」って。そこは嘘でも好きって言う所だろー。」


「あーはいはい、嫌いじゃないっすよー。」


動揺を必死に隠して冗談交じりに言うと、窓の外を見ながらぶっきらぼうにつぼ浦が答えた。良かったのか悪かったのか、本当に気付かれていないようだ。


「ねえ聞いて良い?お前って恋愛系とか苦手じゃん。今まで付き合ったりとかもした事無いの?」


「はぁ!?ほんとなんすか急に…それはトップシークレットっす。次聞いてきたら怒るぜ。」


「ごめんごめん、そうだよね。トップシークレットね。」


今日の自分は可笑しい。碌な答えが返って来ない事も、つぼ浦に嫌な思いをさせてしまう事も分かりきっていたのに、また変な事を口走ってしまった。それをきっかけに青井はもう気持ちを抑え込むのが限界なのだと悟った。


「ちょっとさ、寄り道して良い?」


「いっすよ、どこ行くんすか。」


「うーん…海かな。」


「遠っ!急に泳ぎたくなったんすか?」


「ははっちょっとね。」


彼はきっと心底困るだろう、今までの関係は崩れてしまうだろう。しかし、青井の決意はもう止められなかった。無線連絡を入れつつ心の中でつぼ浦に何度も謝りながら、浜辺へと向かった。




「ふぁ〜ぁ。気持ちいなぁ。でも泳ぐにはまだ早いんじゃないすか?」


「…つぼ浦、話しあるんだけど。」


「話ぃ?なんすか改まって。」


「あのさ、つぼ浦。…俺、つぼ浦の事が好きなんだ。後輩としてとかじゃなく、恋愛感情として好きなんだ。」


「はぁ!?アオセン何言ってるんすか、寝ぼけてます?それかドッキリとかか?」


「そうだよな、ごめん。今まで伝える気無かったんだけど、もう俺の気持ちがそうもいかないみたいでさ。俺の身勝手でごめんね。一緒に働けないなら俺が退職するし、縁切ってもらっても構わない。」


「は、え!?アオセン本気で!?……なんて言ったら良いのか分かんねぇ…けど警察辞めるとか、縁切るとかは違ぇだろ…」


「気持ち悪いとか思わないの?嫌いになったりしないの?…こんなに身勝手でお前の事困らせてるのに。」


「いやそりゃ嫌いになんて…アオセンは好き…だけど…恋愛感情…」


つぼ浦が意識した途端、心臓が高鳴り顔もみるみる内に赤くなっていった。青井に対して何か他の人とは違う感情を抱いていたのが、恋心だったのだとその時初めて気が付いた。


「あ、アオセン…その…お、おれ、も…」


「え?つぼ浦どうした?大丈夫?」


「お、お…れも…好き…っす…」


俯きながら掠れた声で絞り出した。青井の顔を見る事ができなかった。


「え!?本当?本当に?」


「ぉ、おぅ…」


「…そっか…そっかぁ……嬉しい、ありがとね。…じゃあ、これからよろしく。」


「ぅす…。」


思ってもみなかった答えが返ってきて、若干の動揺を見せながらも幸せを噛み締めた。素直に気持ちを伝えてくれたつぼ浦に愛おしさを感じ抱きしめたくなったが、今にも卒倒しそうな程真っ赤になっている彼を見てぐっと堪え、代わりに握手を交わした。


「…よしっじゃあ本署戻るかぁまだまだ事件

来るぞー!」


「お、おぅ。おっしゃぁ仕事すっぞー!」


そう言ってお互い気持ちを切り替えようとしたが胸の高鳴りは治まらず、今までは無言でも苦でなかった車内に何となく気まずい空気を感じつつ車を走らせた。

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