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青井は悩んでいた。あれから2週間程経ったが、つぼ浦が以前よりも青井を避けるようになってしまったのだ。
「はぁ…なんでなんだ…無理矢理聞き出そうとしても逆効果なだけだし…でも流石に仕事中まで避けられるとヘコむなぁ…」
ヘリでパトロールをしながらブツブツ言っていると、つぼ浦のジャグラーを見つけた。歓喜のあまり大声が出そうになったが慌てて口をつぐみ、チェイス練習でもするかと改めて声をかける。
「そこのジャグラー止まりなさーい。」
「ゲッアオセンじゃねーか。」
「俺で悪いかー。ねぇチェイス練習付き合ってよ。」
「いや…俺今忙しいんで。」
「嘘つけ。適当にフラフラしてたの見えてたし。」
「なんだバレてんのかよ。じゃあ俺逃げればいいんすね?」
「んー…ちょっと待って、賭けしようよ。制限時間5分で俺を振り切れたらつぼ浦の勝ち。負けた方が奢りでどう?」
「おぉ?賭博罪切りますよ?」
「あーはいはい、じゃあ俺も切りますからねー。…はい、いつでもいいよ。」
「おっしゃ、捕まえてみろ!」
勝負事にはノリノリだが避けられているだけでなく、態度も日に日に冷たくなっていってる気がする。他署員とは変わらず話しかけ、話しかけられで和気藹々としているのに。その様子を見て僅かながら嫉妬心さえ覚えてしまっているというのに。
「やっぱこれはどうにかしなきゃな。」
「あー?なんか言ったかー?集中しないとさっさと逃げちまうぜぇ!」
「はい止まりなさーい」
「……よし5分経ったー俺の勝ちー!」
「クソッこれアオセンが圧倒的に有利だろ!」
「自分から乗ったんだから文句言わなーい。何奢ってもらうかぁ…と、飛行場来た。犯罪少なくなる時間帯に行くか。」
「うす、じゃまた。」
また素っ気ない返事をしてそそくさと逃げるように行ってしまった。正直に言うと物凄く怖いし寂しい。俺何かしたか?もしかして嫌われてしまったのだろうか、いやまさかそんな…様々な思考が頭の中をグルグルと駆け巡り仕事に支障をきたす。
「ダメだ今は集中しろ、後で話すんだから…」
2人きりになるタイミングをのらりくらりとかわされ続けていたが、やっと約束を取り付けられた。今日なんとしてでもこのわだかまりを解かなければ。
街が落ち着いた頃、一足先に退勤したつぼ浦はご自慢のオレンジの愛車に乗り、スマホを弄りながら青井を待っていた。
「おっE5バーガー開いてんじゃーん♪…さっさと食って帰れば大丈夫だろ…大丈夫…」
そう自分に言い聞かせ深呼吸をした。 あの日から青井の姿が目に入る度、心臓がバクバクと跳ね上がって何も手につかなくなってしまう。これが恋というものなのだろうか、こんなんじゃ身が持たない。今は青井や街の住人達に気付かれないよう取り繕うので精一杯だ。思わず賭けに乗ってしまった事を今更後悔した。
「おー待った?ごめんごめん。」
「アオセン遅いっすよ。」
「ごめんちょっと上官会議しててさ、でどこ行く?」
「E5バーガーで良いっしょ。」
「んー…E5か…ハンバーガーって気分じゃないなー…あ、魔女カフェ開いてるって。」
E5バーガーがつぼ浦の大好物である事は周知の事実だ。しかし今行くと仲の良い店員達との雑談やらおふざけやらでまともに話し合いができなくなるのは、安易に想像できた。
「あーじゃあ魔女カフェ行くかぁ。」
「お願いしまーす。運転ありがとね。」
青井は別れ話に発展したらどうしようという不安や恐怖に襲われ、つぼ浦はこの異常な程の胸の高鳴りがバレないようにと必死に平静を装う。2人は正反対の感情を抱え魔法少女カフェへと向かった。
注文を終え2階に上がり、1番奥まった席に座った。食べ進めていると、つぼ浦が目の前の食事にほぼ手をつけていない事に気が付いた。
「どうした、体調悪い?」
「いや、そんな事ない、っす。昼飯食いすぎたかな。」
「本当に?無理してない?」
「大丈夫っす、アオセン気にせず食ってください。」
高揚感や緊張感、羞恥心など様々な感情が入り乱れ食事所では無かった。顔が徐々に赤くなっていってるのを自覚したが、照明のお陰でバレていないと信じる事にした。早く時間過ぎてくれ!そう願っていると、粗方食事を終えた青井が話し始めた。
「つぼ浦さぁ。」
「なんすか。」
「俺達って付き合ってるんだよね?まともに顔合わせてるの久しぶりだけどw」
なるべく明るく振る舞い、重苦しい空気を取っ払おうとした。
「あー、そっすね。」
一方こちらは相手の顔を見る事もできず、勝手に暴走している心臓の音を聞きながら素っ気ない返事をする事しかできない。
「恋人同士ってさぁ、普通は付き合ったら親密になっていくもんだと思うんだよ。…今の俺達ってどうかな。むしろ付き合う前より離れてるよね。俺はつぼ浦ともっと一緒にいたいんだけど。もちろん無理強いするつもりは無いけどさ。」
「…俺、は…む……」
「…無理って言った?やっぱり俺のこと好きじゃなかった?」
「いや…その…逆っていうか…」
「逆?」
「…いや、やっぱなんも無いっす…」
「なにそれw気になるじゃん、教えてよ。それとも俺に言えない話?」
「…だぁーっもうっ!話せば良いんだろ!…その…あの日から、アオセン見てると冗談抜きで口から心臓飛び出そうになるぐらい、爆音で鳴り続けて…なんかよく分かんねぇ感情がブワァッて押し寄せてきて…」
「何それ、俺への愛情爆発しちゃってるって事?」
「///わっ分かんねぇ…けど仕事もまともにできなくなるし、アオセンにも他のヤツらにもバレたくなかったからアオセンを避けるしか方法が無くて…」
「なんで俺にもバレたくないのw意地張ってた?…なんだ、じゃあこんなに悩んでた俺馬鹿みたいじゃん。ごめんねつぼ浦、気付いてやれなくて、信じてやれなくて。」
「いっいや、こっちこそ、すんません。」
「そっかぁ、だから今も俺と目合わせないようにずっと下向いてるんだ。もっとドキドキしちゃうから。」
そう言いながらつぼ浦の顔を覗き込んでみ
た。
「うぉっ!?ちょっアオセン!?///」
「あはは、ごめんごめん。それにしてもこれはこれで困ったなぁ。俺をそんなに好いてくれてるのは嬉しいんだけど、せめて目合わせるぐらいはして欲しいかな。慣れさせていく…しかない?」
「慣れさせる…なんか実験みたいだな。」
「じゃあ明日2人とも仕事休んでつぼ浦の家で1日遊ぶか!一緒にいれば徐々に慣れてくるだろうし、自分家なら安心するだろ。」
「はぁ!?無理無理、アオセンと1日中一緒なんて、マジで心臓止まるって!」
「嬉しい事言ってくれるねぇ、でもまずはやってみないと。つぼ浦だってずっとこのままは嫌でしょ?」
「まぁそりゃそっすけど…」
「よーしじゃあ決定!掃除しとけよ!」
半ば強引に決められた予定に、不安と期待を寄せ合いながら2人は帰路に着いた。