テラーノベル
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金沢へ向かう新幹線の中、私は何度もバッグの奥底を確認した。大森さんから手渡された、あの小さなメモ用紙がそこにあることを確かめるたびに、指先が熱くなる。
家の玄関を開け、自分の部屋に飛び込むなり、私は大切に持ち帰ったメモを机に広げた。
「……本当に、いいのかな」
走り書きされた11桁の数字。これを私のスマホに入力してしまえば、憧れの人と「繋がって」しまう。震える指で数字を打ち込み、メッセージ画面を開く。
「帰ったら連絡して」と言われたけれど、相手はあの大森元貴さんだ。失礼があってはいけないし、かといって固すぎても変だし……。
「無事に家に着きました。今日は本当にありがとうございました。」
——いや、これじゃ普通すぎるかな。
「スタジオでの経験、一生の宝物です。いつか必ず恩返しします!」
——ちょっと重いかな。
書いては消して、打っては消して。
結局、三十分以上悩んで送ったのは、今日一日の感謝と、彼らの音楽への想いを精一杯込めた、少し長めのメッセージだった。
送信ボタンを押した瞬間、心臓が口から飛び出しそうになる。
深呼吸を一つして、スマホをベッドに放り投げた。……はずだったのに。
「……えっ!?」
放り投げた直後、スマホが震えた。
画面を見ると、そこにはもう「既読」の文字がついている。
数秒。いや、数秒も経っていない。
(大森さん、ずっとスマホ見てたのかな……?)
まさか、そんなはずはない。でも、あまりの反応の速さに、私の胸の鼓動はさらに速くなった。
返信を待つ間、私は自分の中に、ただのファンとしての「嬉しい」とは少し違う、甘酸っぱくて切ない感情が芽生え始めていることに、うっすらと気付き始めていた。
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🌹はなみせ🍏
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