テラーノベル
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それから数分後。病室のドアが勢いよく開く。
淀川「四季!」
息を切らして飛び込んできたのは真澄だった。
制服も乱れたまま。
事故の知らせを聞き、学校から走ってきたのだ。
淀川「四季、大丈夫か!」
少しポーカーフェイスを崩しながら手を伸ばす。
しかし四季は、その手を見つめて首をかしげた。
四季「……誰?」
真澄の動きが止まる。
淀川「は……」
四季「ごめん、思い出せなくて」
病室は静まり返る。
その沈黙を破ったのは猫咲だった。
猫咲「ああ、真澄」
猫咲「四季、事故で記憶をなくしたんだ」
真澄はうなずく。
淀川「問題ない、俺が思い出させr」
その言葉を遮るように、猫咲は静かに言った。
猫咲「無理するな」
四季が混乱する。
そして、四季の肩を優しく抱く。
猫咲「俺が恋人だから」
時間が止まった。
真澄は猫咲を見つめる。
淀川「……は?」
猫咲は真澄から目をそらさない。
猫咲「だから、俺が四季の恋人」
四季は二人を交互に見た。
四季「えっと……違うのか?」
真澄は声を失う。
淀川「何言って……」
淀川「猫ォ、お前……」
猫咲は何も答えない。
ただ四季の手を握るだけだった。
その手を振り払えない四季。
否定できない四季。
そして、何も知らない四季は、小さく猫咲の手を握り返した。
その瞬間。
真澄の心は、音もなくひび割れた。
退院してから一週間。
四季は少しずつ学校生活を取り戻していた。
だが、失った記憶だけは戻らない。
猫咲「四季、帰ろ」
放課後になると、猫咲はいつものように四季の席へ向かう。
四季「うん」
二人が並んで教室を出ていく。
その後ろ姿を、真澄は何も言えず見送るしかなかった。
“本当は俺が隣にいるはずだった。”
そんな言葉は、喉まで出かかって飲み込む。
四季を混乱させたくない。
それが真澄の唯一の願いだった。
四季「真澄」
帰ろうとした真澄を、四季が呼び止める。
四季「今日のノート、見せてもらってもいい?」
淀川「……ああ」
真澄は少し驚きながらもノートを差し出した。
四季「ありがと」
#四季愛され
+ * 優 乃 _ .
2,255
58
#2P
辛い壁 〝からいかべ〟
2,987
四季はページをめくり、小さく笑う。
四季「字、すげぇきれい!」
真澄「昔から変わらねぇな」
真澄は思わずそう口にする。
その瞬間、四季は首を傾げた。
四季「……昔から?」
淀川「あ……」
しまった。
淀川「なんでもねぇ」
四季は「そっか」と笑ったが、その言葉は心に引っかかった。
その夜。
机の整理をしていた四季は、引き出しの奥に小さな箱を見つけた。
四季「なんだこれ……」
開けると、中にはシンプルなシルバーリングが一つ。
内側には小さく刻印が入っていた。
『M&S』
四季「……M?」
見覚えはない。
なのに、胸が苦しくなる。
そこへスマホが鳴った。
画面には『猫咲』の文字。
四季「もしもし?」
猫咲『明日、一緒に登校しようと思って。迎えに行く』
四季「うん、ありがとう」
電話を切ったあとも、四季の視線は指輪から離れなかった。
四季「(これ……誰にもらったんだろ)」
翌日。
昼休み。
真澄は屋上で一人、弁当を食べていた。
ガチャ、と扉が開く。
「やっぱりここにいた」
四季だった。
淀川「……四季?」
四季「隣、いい?」
淀川「嗚呼」
二人で並んで座る。
風だけが静かに吹いていた。
四季「なぁ」
四季がぽつりと口を開く。
四季「俺、本当に波久礼と付き合ってたのかな。」
真澄の心臓が跳ねる。
淀川「なんでだ?」
四季「……分かんない」
四季「でも、何か変なんだ」
四季はポケットから昨日の指輪を取り出した。
四季「これ」
真澄は息を呑む。
それは、自分と四季がおそろいで買ったペアリングだった。
四季「見つけたんだけど……」
四季「波久礼に聞いても『昔のアクセサリーじゃない?』って言われて」
四季「でも」
四季は指輪を握りしめる。
四季「これを見てると、すげぇ苦しいんだ…」
真澄は何も言えなかった。
“それは俺たちの指輪だ”
その一言が、どうしても言えなかった。
その時だった。
猫咲「四季」
屋上の扉が開き、猫咲が姿を現す。
猫咲は真澄の手の中にある指輪を見て、一瞬だけ表情を曇らせた。
静かな空気が流れる。
三人の距離は、少しずつ崩れ始めていた。
四季くんが猫咲のことを「猫咲」って呼ぶか「波久礼」って呼ぶか迷ってる…今のところは「波久礼」です!皆さんどっちが良いかコメントしてくれたら嬉しいです!
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コメント
23件
素晴らしすぎて禿げました。 ウィッグください
うわあ、第2話で一気に人間関係が動きましたね…!記憶喪失の四季くんに対して、猫咲が「俺が恋人だから」って言い切るシーン、めちゃくちゃ衝撃的でした。真澄が何も言えずに飲み込む姿が切なくて…。指輪の『M&S』って真澄と四季のイニシャルですよね?四季くん自身が「苦しい」って感じてるのが、読者にもひしひし伝わってきて、この違和感の描き方がすごく巧いなと思いました!続きが気になります!