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ひより
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ひより
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#三角関係
霞花怜
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#白い結婚
夕凪ゆな
123
もしリリアンナ嬢がライオール卿の子を身ごもっているとすれば、それを無視して話を進めるわけにはいかない。
(我が国は花嫁の純潔を重んじる……)
全く馬鹿げた風習だと思うが、こと王室において、それは重要視される。
それに照らし合わせるならば、ダフネ嬢も妃には向かない。だが、彼女の純潔を奪ったのが自分ということになっている以上、それを理由に断ることは出来なかった。
それに――。
ライオール卿はマーロケリー国の国民ですら知らないはずの自分の髪の色のことを知っていた。
セレノは無意識に、自らの髪へ触れる。
今は赤く染めているけれど、実際の彼の髪色はカラスの濡れ羽色のように深い漆黒。
瞳も、マーロケリー国民に多いマラカイトグリーンではなく、ハトの血のような真紅だ。
瞳だけはそのままにしてあるけれど、髪色だけはいつも偽る形で国民の前に立ってきたセレノである。
彼の髪色が黒いことを知っているのは、両親である王と皇后陛下を除けば、ごく一部の側近のみ。
イスグラン帝国に潜入する際は染めない方が都合が良かったのでそうしたが、それが良くなかったのだろうか。
それとも――もしやアレクト殿下から聞かされて……?
マーロケリー国では少ない黒髪と赤い瞳を持つ者が、ごくまれに自国民の中にも生まれること自体は、マーロケリーでは周知の沙汰だ。
イスグラン帝国側ではあまり知られていない事実だが、王家の者たちは知っていると、以前アレクト殿下から聞かされたことがある。
そしてあちらでも、逆にイスグラン帝国民同士の親から、リリアンナ嬢のような赤毛の子が生まれることがあるらしい。
ただし、マーロケリー国と異なり、イスグラン帝国ではその色を持って生まれた者は迫害の対象になるのだという。
それも、先代王でありアレクト殿下の父でもあるオルディス・ヴァルター・ヴァルドールの悪政によって根付いたものなのだと、アレクト殿下は苦々しげに語っていた。
リリアンナ嬢がマーロケリー国民の色を持つ者として迫害されてきたのも、そのせいなのだ。
一方、マーロケリー国では、黒髪や赤い瞳を持って生まれたからといって、迫害されるようなことはない。
ないのだが――。
それが〝王太子〟となれば、話は別だった。
『殿下が隠しておられる黒髪に赤い瞳――。貴方のその色は、本来恥じるべきものではないと、わたくしは思うのです』
『イスグランとマーロケリー。両国の歴史がかつてはひとつだったことを現す証の色でございます。――むしろ、これからの時代を示すに相応しい色と言ってもいい』
『殿下もいつまでも国民を偽っていてはいけないとお気づきのはずです』
『殿下は、生まれながらに持ったその色を、むしろ誇りに思っていい』
ヴァン・エルダール城で、二人きりで対峙した折、ライオール卿から言われた言葉が次々と脳裏を過ぎる。
セレノは小さく吐息を落とすと、机の引き出しから便箋を取り出した。
この件を自分ひとりで考えていても仕方がない。
イスグラン王太子アレクト。
遠からぬ未来、あの国を背負う彼ならば、どう考えるのか。
聞いてみる価値はあると思った。
コメント
2件
かつては一国だったことを根拠に属国に、で戦争仕掛けられてたんならセレノ殿下のその色は隠さないと…ていのいい口実を与えることになるもんね。 なるほど。 だから隠してたのか。 でもイスグランの前王が崩御した今なら明かしても問題ないかも?ってこと?
うわ、この回めっちゃ重いですね……。セレノ殿下の内心の葛藤がびっしり詰まってて、読み応えありました。自分の黒髪と紅い瞳を隠してきた理由、「王太子としては恥じるべきもの」という強迫観念に縛られてるのが痛いほど伝わってくる。それなのにライオール卿に「誇りに思っていい」と真正面から言われて、その言葉が頭から離れない。この設定の絡め方、本当に好みです。最後にアレクト殿下に相談しようと決意するところで終わるのも、続きが気になりすぎますね。