テラーノベル
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翔太と美咲は階段を駆け下り、息を切らしながらもなんとか鬼から逃げ続けた。
しかし、その背後に感じる恐怖の気配が消えることはなかった。
鬼は着実に追い詰めてくる。
息を呑み、いつ捕まるかわからないその状況に、二人は言葉を失っていた。
「翔太…もう無理かもしれない…」
美咲が息を切らしながら呟いた。
「諦めるな! 何とかなる…絶対に出口があるはずなんだ!」
翔太は必死に言い聞かせるように叫んだ。
だが、その言葉の裏には、どこか自分を誤魔化している感覚があった。
希望を見出したい一心で、ただ前へと進むしかないのだ。
階段を下りきった二人は、再び校舎の廊下に出た。
暗く、静まり返ったその場所には、今まで見たことのない異様な雰囲気が漂っていた。
まるで校舎全体が、二人を飲み込もうとしているかのようだった。
「こっち…こっちだ…!」
翔太は美咲を引き連れ、以前聞いたことがある「非常出口」へと向かった。
その情報は古い噂で、信憑性に欠けるものだったが、今はその噂にすがるしかない。
廊下を進むうち、再び足音が遠くから近づいてくるのを感じた。
鬼は確実に二人を追い詰めてきている。
何かが後ろから迫ってくるその恐怖が、二人の心をより一層掻き立てた。
「急げ…!」
翔太は声を振り絞り、非常口のある場所へと急いだ。
やがて、二人は学校の北側に位置する古い物置のような部屋にたどり着いた。
ドアには「立入禁止」の札が掛けられている。
翔太はその札を無視し、ドアを強引に開けた。
錆びた蝶番がきしむ音を立てて、ドアが開かれた。
「ここが…出口?」
美咲が戸惑いながら尋ねた。
「わからない。でも、行くしかないんだ…!」
翔太は部屋の中に足を踏み入れた。
薄暗く、埃っぽいその場所には、古い家具や箱が乱雑に積み上げられていた。
まるで長い間誰も手をつけていないような雰囲気だ。
翔太は部屋の奥へと進むと、壁に奇妙な形をした扉を見つけた。
それは普通のドアではなく、まるで隠された秘密の出口のような、薄暗い光を放っている。
「これだ…!」
翔太は確信を持った。
これはきっと、過去に逃げ切った生徒が見つけた「出口」だ。
彼はその扉に手をかけ、力強く押した。
しかし、扉はびくとも動かなかった。
「くそっ…!開かない…!」
翔太は何度も扉を押し開けようとしたが、まるで誰かが外側から鍵をかけているかのように、全く動かない。
「どうするの…もう時間がないよ…」
美咲が不安そうに言った。
その時、再び遠くから鬼の足音が聞こえてきた。
今度はかなり近い。
もう時間はほとんど残されていない。
翔太は焦り、さらに力を込めて扉を押したが、それでも開かない。
「だめだ…こんなところで終わるのか…」
翔太は絶望の表情を浮かべ、立ち尽くした。
しかし、ふと何かが視界に入った。
扉の横に小さな穴が開いており、そこに何かが差し込めるようになっていることに気づいた。
「鍵が…必要なんだ…」
翔太は呟いた。
その瞬間、扉の向こうから不気味な笑い声が聞こえた。
それはまるで、彼らの苦悩を楽しむかのような冷たい響きだった。
「逃げ場はない…」
声が低く、ゆっくりと彼らに語りかけてくる。
翔太はその声に背筋が凍るのを感じた。
鬼はすぐそこに迫っている。
そして、出口の扉は開かない。
「翔太、逃げる場所がない…!」
美咲が涙声で叫んだ。
彼らは袋小路に追い詰められた。
扉を開ける鍵を持っていない以上、ここから出る方法はなかった。
鬼がすぐそこまで来ている。
絶望が二人を押しつぶそうとする中、翔太は最後の望みに賭けた。
「この部屋のどこかに、鍵があるかもしれない…!」
翔太は周囲を見回しながら、急いで手当たり次第に物を動かし始めた。
だが、時間がなかった。
鬼の足音がいよいよ部屋の入り口に近づいてきた。
翔太と美咲が振り返ると、そこには黒いフードをかぶった鬼が立っていた。
鎌を手にし、ゆっくりと二人に近づいてくる。
「もう…だめだ…」
美咲が崩れ落ちそうになった瞬間、翔太は意を決して叫んだ。
「まだ終わりじゃない!俺たちは逃げられる…絶対に!」
しかし、その言葉が届くことなく、鬼は冷酷に近づいてきた。
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